第12話 〜乱入者〜
気力不足でかなり短いです。
「あらあら、《悲劇と幽閉の書》が動くんですの?」
「みたいですわ」
「わたくし達にはさして関係はないですの……。
けれど、手助けぐらいは……」
「そうですわね。
そのくらいはわたくし達も手を出しましょう。
二つの世界が重ならない様に……」
2人は言う。
賽は振られた。
もう、逃げられない……。
「誰ですか!?
わたくし達の決闘を邪魔する無粋な方は!!」
リンは助けられたにもかかわらず、結界の中からルイと呼ばれた青年に激怒する。
「あれ? 助けない方がよろしかったのでしょうか?
『所持者』の意向に従いましたが……。
どちらにせよ、俺にはどうでもいいことですが」
ルイは飄々として、そのことを本当にどうでも良さそうに言う。
「大体、どうして部外者が居るのですか!」
「それはあなた方に関係ない事です」
リンはまだ、ルイに激怒している。
ルイは辛辣な言葉をリンへ浴びせた。
「ルイさん、ここは引いて下さいませんか?
わたくし達は神聖な決闘の途中なのです」
エイラはルイに対し、優しい口調で言う。
『神聖な決闘』という言葉にルイは反応した。
「神聖な決闘……?
それは必ずやらなければならない物なのですか?
光の総神様……あ、こちらでは『始祖神様』へのお祈りはすまされましたか?
禊は行いましたか?
結界は……まぁいいでしょう。
仲介人は? できれば『洗礼者』の方で『所持者』がいいですね」
ルイは捲したてる様に言う。
「決闘とは、本人同士が同意すれば良い物では?」
エイラの問いに、ルイは呆れた表情で言葉を返す。
「神聖な決闘とは本来、先ほど言った条件が整わないと行われません。
この時代の方はそんなこともしらないのですか?」
それを見るに見かねたエリスは意を決して言う。
「ルイ、初対面の方にそんな態度は無礼ですよ。
謝罪しなさい。
そもそも、この時代と貴男の時代では決闘の定義が違うのです」
ルイはエリスの声で、『エリス』にやっと気付いた。
「あ、ご機嫌麗しゅう。
昨日ぶりですね、マスター様」
ルイはとても晴れやかな笑顔をエリスへと向ける。
「ええ、ご機嫌麗しゅう、ルイ」
エリスは刺々(とげとげ)しい口調でルイへ言葉を返した。
「……私、何かしましたでしょうか」
「心当たりが無いとでも?」
「はい」
エリスの怒気に全く気付かないルイは即答する。
「……、だから逢いたくないと言ったでしょう。
あなたはわたくしの機嫌を損ねるのが上手いようですから」
エリスは普段から考えもつかないような皮肉を言う。
「そのようですね。
しかし、私に心当たりは無いのですが……」
ルイは本気で考える仕草を見せた。
「ルイ、少し元に戻りなさい。
まだここにはあなたとハイラ以外は集まっていないのだから」
「……御意に」
ルイは執事の様に礼をすると、いったん微笑んだ。
その瞬間、ルイは光と魔法陣に包まれ、次には誰もいなかった。
「……さ、エイラ様、リン様お続けして下さい」
エリスは振り向き、先ほどの会話が無かったかの様に言った。
その瞬間、何も無かったかの様な空気になった。
エリスに決闘の再開を促されたエイラとリンだったが、二人には戦う魔力や体力はもう、残っていない。
エイラとリンはとうとう自分を支えていた気力がなくなったのか、同時に倒れてしまった。
エリスはそれを意図していった辺り、黒いのでは無いかと思われる。
「リン様!? エイラ様!?」
エリスは焦った表情をするも、そうなることは予測がついていたのであった。
あれだけ魔力を使えば体力を消耗するのは必須であり、気力で立てていた事がおかしいぐらいであった。
「あらあら、忙しいわ……。
お二方が起きたらお話しませんと」
優しそうな侍女はにっこりと笑って(嗤って)言う。
「あ、あの、『お話』の部分に何か含みがあったような」
「いえ、ありませんわ」
「え、でも、」
「ありませんの」
「……はい」
エリスは無理矢理押し切られる形で納得してしまった。
「そういえば、貴女……何かなさりました?」
侍女の的を射た言葉に、エリスはドキッとするも、知らぬ存ぜぬという態度を取った。
「いえ、わたくしは何もしていません。
ラシェ様の間違いだと思います」
侍女こと、ラシェはいぶかしげにエリスを見つめたが、すぐにその視線も消える。
「いいでしょう。 しかし、空間掌握系統はわたくしの範囲内。
……今は二人の事の方を優先致します」
ラシェはエリスへ鋭い視線を送った後、事後処理を手伝いにいった。
去ってゆく姿を見届けたエリスは、胸を撫で下ろした。
「ふ〜、勘のいい人は苦手。
でも、空間掌握系統の子がまだ居たなんて。
セト以来、かしら……。」
エリスは過去を懐かしむかの様に言葉を発する。
——彼の事、まだ気にしていらっしゃるのですか?——
エリスがいつの間にか持っていた本は心話でエリスへ話しかけた。
「そうかも、しれないね。
彼が死んでからまだ16年しか経っていないんだもの」
エリスは悲哀に満ちた表情で言った。
16年前は、エリスの産まれていない年である。
その翌年にエリスは産まれた。
ハッとなったエリスは辺りを見回し、誰もいない事を確認した。
「あ、危なかったぁ……。
これ聞かれていたらへんと感じられるわ。
余計な事言わないうちに帰りましょ」
そう言いつつ、エリスは自分の部屋へと帰っていった。
「ふぁ〜、疲れた……。」
エリスはベットにボフン、という音を立ててダイブすると、そのまま眠ってしまった。
その後帰ってきたハイラルディスにより、ちゃんとした体制で寝かされたが、ハイラルディスは緊張しまくっていたとかなんとか。