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第11話 〜吐血寮長?〜

題名に深い意味は無いです。

 ミリファが双子に連れられてきたのは王宮程ではないが立派なドアの前。

 ユティリアはドアをノックした。

「寮長、ミリファ=フェルマリーザさんを連れて参りましたのですわ」

 しーん、と静寂が三人を包んだ。

 ユティリアはもう一度ドアをノックした。

「寮長?」

まさか……とユティリアとルティリアは呟いた。

「ルティリア!」

「はいですの!」

 ルティリアもドアの前に立ち、ドアにその小さな手を合わせた。

「「<扉に宿る精霊、わたくし達の声を聞き、通しなさい!>」」

 その瞬間、すごい勢いでドアが開いた。

「寮長!!」

「やっぱり、ですわ」

 ルティリアは少々驚いていたが、ユティリアは額に手を置き、ため息をついた。

「どうしたの? ……!」

 そこには吐血した人がうつぶせに倒れていた。

「ここって医務室ある!?」

 ミリファが焦っているのに対し、双子は落ち着いていた。

「焦らなくても大丈夫ですわ」

「そうですの。

わたくし達は仮にも水の魔法師。

光の魔法師さんには劣りますけれど、治癒は得意ですの」

 ミリファはその言葉にハッとなる。

 とりあえず慣れていそうな双子にミリファは任せる事にした。

 双子は手と手を合わせる。

「<光宿るこの天を。

魅せましょ、古き、名に賭けて。

水精さん、わたくし達の呼びかけに気付いて。

水精さん、あの人を癒して下さいな。

水精さん、その治癒力を用いて。

『水精の遊び(カルメレッザ・プレッサー)』>」

「(え?最初の二言は無いと思うんだけど……)」

 ミリファは疑問と不安を感じながらも成り行きを見守る。

 寮長を淡い水色の光が包んだ。

「これで大丈夫☆ですの」

「全く、人に心配をかけさせないで頂きたいですわ」

 何とも軽いノリのルティリアと、疲れた表情のユティリアだった。

 しかし残念な事に、ミリファはルティリアと同じ属性であった……かもしれない。

「ゔ……。

あ……」

「「寮長!」」

 寮長は以外と美形であった。

「いや〜、助かったよ。

ありがとう、ルティリアちゃん、ユティリアちゃん」

 寮長はあはは〜と能天気に笑っている。

「もう、笑い事では有りませんのよ!?

あれほど、倒れたら誰かに固有技能アビリティーの『念』飛ばして下さいと言っているのです!!

今回はわたくし達が気付いたから良かったものですわ……」

「分かってるよ〜。

でも、今回は君たちが来るのを分かっていたから。

その証拠にほら、君たちが来てくれたじゃないか〜」

 ユティリアは寮長の能天気ぶりに呆れた。

「そういうところに固有技能『予知』を使わないで頂けませんこと?

上層部はその力を重要視されているのですから。

ある意味貴男は上層部の弱みなのですわ。」

「そうですの〜、あんなクズ共の集まり……ではなくて、上層部でも居る意味はあるのですから〜。

……一応」

 ユティリアは寮長を諭す様に、ルティリアはユティリアの意見に同意するように言う。

 ミリファはルティリアの黒い部分が垣間見えた気がしたが、それはあえてスルーした。

「あ……。

そういえば、転入生の方を連れてきたんですの〜」

 ルティリアがそう言うと、寮長はミリファへ視線を向けた。

「ああ……、気付かず失礼しました。

はじめまして、僕は水S寮の寮長、ルーシェ=イストラールです。

宜しくお願いしますね」

「あっ、初めまして、転入兼今日からお世話になるミリファ=フェルマリーザです。

宜しくお願いしますっっ!」

 ミリファはペコリとお辞儀をした。

「ミリファさん、君の部屋は3階のA-S-58ですよ。

3階に行けば分かると思いますが……。

ルティ、ユティ、ミリファさんの案内をお願いできるかな?」

「……別にやる事も無いですし、いいですわ」

「ですの〜」

「ありがとう、2人とも。

本来なら僕が案内する事なんだけど生憎……ごほ、ごほ。

ね? 暫くの間寝てないとまたやっちゃいそうだから……」

 寮長こと、ルーシェはとてもすまなさそうに2人に言う。

 その間にもルーシェの咳が出た。

「寮長、ご無理なさられないで下さいですの」

「そうですわ、又倒れられては困るのですわ。」

 ルティリアは素直に心配している事を伝えるが、ユティリアは素直で無いせいか、皮肉まじりにも心配する。

「うう、僕が不甲斐無いばかりに…………。

本当にありがとう、二人とも。

この恩は又返すよ〜」

 ユティリアの皮肉が全く通じてないのか、ルーシェはのらりくらりとかわす。

「では、行きましょうですの、ミリファお姉様!」

「参りましょうですわ」

 ルティリアはミリファの腕を引っ張ったため、ミリファは部屋を退出した。



 ミリファと双子が居なくなり、一人になった部屋でルーシェは言う。

「全く、『予知』は厄介な未来を見せて下さいましたね。

ミリファさん、貴女を彼らに渡しはしませんから。

けれど、貴女にとってはこれが本当の始まり。

彼女も無事であると良いのですが……」

 ルーシェは目を瞑り、彼女の無事を願った…………。




 精霊達はざわめく。

[聞いた聞いた?

あの方々がそろったって]

[あら、まだ揃ってないわ]

[どうせもうすぐ揃うわよ]

[それもそうね]

[そう言えば、夢の精霊達が忙しそうにしていたの]

[あの人を隠す為ではないの?]

[守り手も隠れたみたい、クスクス]

[隠れたの?

まぁ、隠れたのは得策かしら]

[光も干渉していそうよ?]

[そうね、光は曲げたいのだものね]

[光はあの子と結託したみたい]

[そう……。

もうすぐかしら、もうすぐね]

[ええ、きっと……、もうすぐなの]

[それはそうと、雪の第一位様と風の第一位様が手助けしているようだわ]

[雪の第一位様は楽しい事が大好きな方だものね!

風の第一位様はとばっちりかな?]

[ええそうね。

……あなたも楽しい事は大好きでしょう?]

[うん!

楽しい事はだぁいすき!!]

[そうね、楽しい事は楽しいわ。

もうすぐ、『楽しい事』私たちにもあるわね]

[楽しみだね!!]

[ええ、そうね]

 2人の精霊はクスクスと笑う。

[その時、敵さん達と彼女は……]

[ね?]

 二人の精霊は、クスクスと今度は忍び笑いをする。

 今度は誰かを嘲笑うかの様に……。


 太陽が地を赤く照らし付ける時間帯、ミリファ達は冷却魔法(弱)の良く効いた部屋に居た。

「涼しいですの〜」

「ごめんね、手伝わせちゃって」

 ミリファと双子は唯今ミリファの荷物の整理中である。

「お気になさらないで下さいですの〜。

ユティリアもいいですの〜?」

「ええ、このくらいの事ならばお祝いとして手伝って差し上げますわ。

ありがたく思ってくださいですわ!」

 やはりいまいち素直ではないユティリアはルティリアの言葉に反発する。

「うん、ほんとにごめんね」

 ミリファはユティリアの言葉をそのまま受け止めるのはどうかと思い、自分で翻訳してから礼を言った。

 それから作業は黙々と進み、外は薄暗く、夜になった頃。

「……さて、と。

これぐらいでいいかしら?」

 確かに、部屋はもう片付いていた。

 後はミリファの持っていた小物だけである。

「ありがとう、二人とも。

後は大丈夫だから帰って良いよ〜」

「そうですの?

では、お言葉に甘えて、帰らせてもらいますですの」

「……帰りましょうですわ、ルティリア」

 ユティリアは少し考えつつルティリアに言う。

「ユティリアもこういっている事ですし……。

さようなら! 又明日合いましょうですの!!」

 ユティリアはさっさと帰り、ルティリアは頭を下げると慌ててユティリアを追って行った。

「……はぁ〜。

さっさと片付けなくちゃ」

 ミリファはとある写真を見た。

 そこにはミリファとエリスと2人の兄妹が映っていた。

「また、会えると良いね…………。」

 ミリファのつぶやきは、シーンとした部屋の中で木霊した。

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