住処へ
草木が茂った獣道を、感覚的には20分くらい歩いてきた。ゴブリンに転生しているおかげなのか、疲れはさほどなかった。人間のおじさんだったときなら、息切れしてるんだろうなぁ。
「あと少しで着くよ」
俺の前を歩く心優しいゴブリンこと、雑用1くん。俺らの住処まで心よく先導してくれた。
森の草むらで少し休んだ後、住処に戻ろうとなり、ちょっと焦った。俺は住処なんて知らないからさ。ちょっと考え、頭を棍棒で打たれたことを理由にして、優しい彼、雑用1くんに道案内をお願いしたのだ。
帰り道を歩きながら、住処と仲間(仮)ついて、優しいゴブリンの彼に色々と聞いてみた。
その話をまとめるとこうだ。
イメージ通りというか、洞窟に住んでいる。
内部は3つの部屋というか、スペースからなっている。
広さは、大、中、小。
大きい部屋に身分の高いゴブリン、4匹
中くらいの部屋に次身分が高いゴブリン4匹。
そして、小さい部屋は、俺と彼。
数は計10匹住んでいる。
とのことだ。意外と数が少ないと思ったが、ゴブリンというのはいくつもの集団があるらしい。100匹以上の大集団もあれば、俺が属する10匹前後の小集団と、なんというか、大企業や中小企業みたいに、ゴブリンのグループがたくさんあるイメージかな。
俺はゴブリンのグループでも、下位ランクに属しているという。ほんと、転生したら弱くてニューゲーム。いやいや、強くてニューゲームにしてくれよ。
「あっ! 見えたよ!」
「えっ!? お、おおっ〜………」
目先に、茂みが途切れ開けた場所があった。そこから少し進むと岩壁があり、そこにぽっかりと、大人1人入れるくらいの暗い穴が空いていた。
雑用1くんのゴブリンと一緒に、洞窟の前に立つ。穴の奥からはなんともいえない、ひんやりとした不気味さのある微風が俺の頬を撫でた。背筋がゾッとする。
「大丈夫??」
「えっ!?」
優しい彼が心配そうに声をかけてきた。
「顔色が悪いみたいだから、また頭が痛む?」
「あっ、い、いや、だ、大丈夫」
自分が魔物である実感がない、というわけではないが、まだ受け入れられていない部分が大きい。だから、怖さがどうしてもある。
住処である洞窟に入って、命の危機にあうことはたぶんないとは思う。決闘をまた申し込んだら話は別だけど、今はそんなことはしない。
「よ、よしっ! な、中に入るか!」
迷いや戸惑いが大きくならないうちに、早く洞窟内に行くにかぎる。
雑用1くんのゴブリンがニコッと笑いうなずく。ほんと良い奴だな、ゴブリンにはもったいない。
俺は彼の後ろに続き、暗い先の見えない洞窟内に入っていった。




