立ち位置
茂みから出てきた新たなゴブリンは優しそうな奴だった。ゴブリンに優しそうとか思うのは場違いかもしれないが。
「全然戻ってこないから心配だったよ」
そう彼は言うと、ホッとため息をついた。
有効的な雰囲気に、俺の緊張がほぐれた。そのまま地面に寝そべる。
「だ、大丈夫!?」
駆け寄ってきた彼に、俺はゆっくりと言う。
「大丈夫、気が抜けただけだから………。君も横になる?」
「えっ?」
戸惑いを少し見せた後、彼の大きな口は楽しげに笑った。
「そうする」
俺の隣に寝そべった彼は、風が気持ち良いねっ、とつぶやいた。あぁ………、確かに。
穏やかでどこか暖かい風が通り抜ける。このまま、寝れそうな気分だ。でも、そうゆっくりとしている場合でもない。
この異世界でどう生きていくか。少し考えたが、何も出てこない。まあ、初めての異世界なんだ、仕方ない。しかも俺ゴブリンだし。ハードモードすぎん?
でも、悲観しててもしょうがない。さて、今できることは?
「………、えっと、君」
「ん? なに?」
「その、名前、聞いてもいい?」
頭を強く打って、記憶曖昧でさ。と俺は小声で付け足しておく。
すると、優しいゴブリンの彼は、何か少し考えた素ぶりを見せた後、ゆっくり上半身を起こした。こっちを見つめ
「僕には名前、無いよ」
そう答えた。
えっ? そうなの?
俺の戸惑いに、彼は苦笑しながら、小さく言った。
「あえて言うなら、雑用1ってとこ」
ま、まじで………?
それ、名前じゃなくてカーストじゃねえか。日本の会社だったら、パワハラ、モラハラ案件。いやでも、俺も転生前はそんな業務内容だったか………。
ため息を吐きそうになったとき、ハッとした。もしかして………、
「えっと、俺の名前は?」
雑用1である優しいゴブリンに聞くと、
「無いよ、でもあえて言うならーーー」
彼は苦笑する。
「雑用2ってとこ」
ま、まじかぁ………。雑用2って。いや、2って………。
異世界でもそう変わらないカーストに、俺は大きくため息をついた。




