出会い
まず状況を整理しよう。
俺こと、いや、ゴブリンこと只野真人35歳は死んだ。たぶん社内で仕事中に。
「あんときすごい頭痛に襲われて。膝に力が入らなくて、意識がもうろうとしたところまで覚えてはいる」
そこから記憶がなくて。目が覚めたら、
「ゴブリンになっていた。………、なんでだよ!!」
サービス残業100時間以上のブラック企業に10年勤め、耐え忍だけのろくな人生じゃなかった。給料もほとんど上がらなかったし!
「もう会社辞める! もう会社辞める! って気持ちを固めていた矢先に、ぽっくり逝くなんて………。俺の人生可哀想すぎるだろ………!」
そして第二の人生は異世界で、
「ゴブリンって可哀想すぎるだろ………!」
拳で地面をバンバン叩きつけるも虚しい。
俺は不貞腐れて仰向けになった。
木漏れ日が差し込む薄暗い森の中、俺は盛大にため息を吐く。
緑色の肌をした手で少しこぶができているところをさすった。
「いてて」
こぶに触れると流石にまだ痛い。
「………、この殴られたゴブリンは死んだんだな」
なんとも不思議な気分だった。
「だってこのゴブリンの記憶が自分のことのように感じるからさ」
なぜこのゴブリンは棍棒で殴られて死んだのか。
こいつの記憶によると、決闘をしていたらしい。
ゴブリンは集団で暮らしていて、その中で階級というか、ランクがあるらしい。んで、この死んでしまった方はランクを上げたいがために、上位の仲間に闘いを申し込んだ。ゴブリンの階級上げはシンプル。強い者が上へ立つ。弱肉強食。
「残念ながら、俺が転生したゴブリンは決闘に負けてしまった」
………、つまりそれは弱いということ。
「はぁ………」
転生特典みたいなのはどうもないらしい。
「あるのは、前世の経験と知識のみ、か」
これから、どうしろってんだ。
ガサガサ。
「いいっ!?」
上半身を起こした。音のした方に顔を向けると、茂みがかすかに揺れている。
ガサガサ。
ごくり。
や、やばいやばい! ま、まさか魔物!?
すると茂みから、
バサァッ!
「いひやぁ!?!?」
1匹のゴブリンが顔を出した。ま、魔物ー!! いや、同類!? いやでも魔物ー!?
「あっ! よ、良かった! 生きてたんだねっ!」
ニコッと喜ぶ、なんとも愛嬌のある、ゴブリン。
「えっ? ええっ??」
最初にあった3匹とは大違いの態度。
茂みから出てきたそのゴブリンは、穏やかな様子で、俺に近付いてきた。




