第5話 花見茶会と血の記憶
王妃の離宮から呼び出しがあった、とキリが告げた時点で、マリアはどんよりとした気持ちになった。
――王妃殿下の離宮で花見茶会。
そう聞けば、普通の伯爵令嬢なら胸を弾ませるのだろう。けれどマリアにとっては、チクチクした針の上を歩くような時間にしかならない。
マリアは鏡の前でドレスの裾を整えた。派手にならないよう、やや黒みが強いスレンダーラインのネイビーのドレスを選んだ。レースもなく、ごくシンプルなもの。
ただ、腰には太いベルトを巻き、帯剣している。
「マリア様……本当に剣を?」
キリが少しだけ眉を寄せる。
「王妃陛下の離宮よ。あそこは警備がやや手薄な場所があるの。王妃殿下は無骨な者を嫌うから。私ならもうお小言をもらいすぎてるから平気」
鎧や剣など持つ警備隊を、美しくないと嫌い遠ざける王妃陛下のために、なるべく警備隊とは悟られないよう軽装の隊員が配置されているのだ。
キリは肩をすくめた。諦めに似た顔をしながら、最後に眼帯の紐を直す。
「……では、こちらを」
差し出された黒の眼帯。だが普段と違うのは、布地は上質で、縁に小さな宝石が散りばめられていることだ。光を受けるたび、きらりと瞬いた。
「こんな事もあろうかと、マリア様の眼帯にこっそり飾りつけてました。可愛らしいマリア様にはきっと似合います!」
「……ありがとう、キリ」
マリアは昔から可愛いものが好きだ。ドレスもぬいぐるみもレース編みも。甘いものも好きだ。
そして、そんな好きなものを守るための力も。
ベルクリーズの馬車が王宮の離宮へ着く。花の香と、濃い香の匂いが混じり合う門前で、マリアは降りた。
そこに、見覚えのある背の高い男がいた。
金髪を後ろで束ね、きちんとした衣装を纏った青年。テクノラートの外交官――ミロシュだ。
「マリア殿」
呼ばれ、マリアは軽く会釈した。
「ミロシュ殿。今日は随行ですか?」
「はい。離宮にラフィリア王女もおいでです」
ミロシュは周囲を一度見渡し、硬い表情で声を落として話しかけてきた。
「つい先ほど、警備体制が少し変更になりまして。こちらも対応に追われています」
「……変更?」
「詳細は今は。とにかく、何かおかしいと感じたら、無理に場を保たず退いてください」
ラフィリア王女の気まぐれは珍しいことではないが、警備体制などに関心がおありでないことくらいは分かる。いつもと違う様子のラフィリア王女に、ミロシュは不穏なものを感じ取ったのか、緊張した面持ちだ。
ピリついた空気を感じ、マリアは頷いた。
「ご忠告、感謝します。ミロシュ殿も無理はなさらぬよう」
ミロシュは小さく笑い――すぐに真顔に戻り、門内へ急いでいった。
キリが耳元で囁く。
「マリア様、あの外交官様、ちょっといい人ですね」
「……そうね。良い人だと思うわ。自国のために動ける人物は貴重よ」
「?」
だからこそ、ミロシュはラフィリア王女の元には長く居ないだろう、とも思った。
◇ ◇ ◇
離宮の庭は、季節の花で埋め尽くされていた。
花見茶会、と言うだけあって、白いクロスのテーブルや、銀の茶器も整っている。けれど漂う空気は、春の柔らかさよりも――見えない棘が多い。
王妃エメラルダは宝石の散りばめられた豪奢なドレスで椅子に腰掛けていた。
その隣に座るのは、テクノラート王女ラフィリア。薄い笑みを浮かべ、紅茶の香りを楽しむ仕草だけは完璧だ。
「遅参ご容赦くださいませ。竜騎士団長マリア・ベルクリーズ、参りました」
マリアが一礼すると、王妃は扇子で口元を隠し、目だけで上から下まで見た。
「……まあ!茶会なのに剣などと野蛮なものを持ってくるなんて……あなたは本当に、どこへ行っても“騎士ごっこ”がやめられないのね」
「万一の備えでございます。王妃陛下の御身に何かあってはなりませんので」
「減らず口を……」
王妃の目が細くなる。
隣の席に座るラフィリアが、取りなすように柔らかく笑った。
「さすが竜騎士団長殿。――ですが、あまりに野蛮だと周囲が困惑いたしますわ。ここは離宮、戦場ではありませんもの」
「心得ております」
差し出された茶は、香りが薄く、舌に妙な渋みが残った。茶葉が悪いのか、それとも――。
マリアは表情を変えず、一口だけ飲んでカップを置いた。
王妃は楽しそうに扇子を揺らす。
「あなたの眼帯……飾りまで付けたのね。隠したいのか見せたいのか、よく分からないわ」
「少しでも不快なものを綺麗に隠そうと試行錯誤した結果でございます。お目苦しいものを申し訳ございません」
「自覚しているのなら良いのよ。これからもできるだけ視界に入らないで頂戴」
王妃はマリアへの嫌悪を隠さない。
沈黙が落ちかけた、その時。王妃が唐突に視線を遠くへ向けた。
「……ここでお茶をすると、あの時間を思い出すわね」
あの事件……王太子の暗殺未遂の事だろう。王妃はあの事件の事を時々思い出しては心を痛めているようだった。
「あなたが――あんなことをするから」
「あんなこと……でございますか?」
王妃はゆっくりと言葉を続ける。
「あなたが刺されて倒れたあの日。血だらけになって、王太子の前で……まるで獣のように」
ラフィリアが「まあ……」と小さく息を飲み、手元のハンカチを膝に置いた。準備された反応だ、とマリアは直感した。
マリアは常々疑問に思っていた。本来であれば、王太子アーデルベルトの命を身を挺して救ったマリアに対して、褒賞に値する行為なのではないかと。もちろんそのようなものは必要もなければ求めてもいない。
だが、我が子の盾になった者への言動なのかと疑問に思っていたのだ。
「王妃陛下。……その話は」
「お黙り。あなたが何を壊したのか、知りなさい」
王妃の声音は少し震えていた。怒りだけではなく、恐れも混じっているような。
「右目と腹を刺されて――普通ならそこで終わりよ。子どもなら尚更」
「……」
「でも、あなたは違った」
王妃の瞳が、過去の光景をなぞるように揺れる。マリアを見ているが、今のマリアではない。
「暗殺者が増えたの。ひとりじゃなかった。護衛が遅れて、あの子――アーデルベルトは泣いて……あなたの名を呼んで……」
ラフィリアが胸元を押さえて涙を浮かべた。
「お可哀想なアーデルベルト様……」
やや芝居がかって見えるラフィリアの様子に、マリアは内心で息を吐く。
王妃は虚ろな目で話を続けた。
「お前は、刺さったままのナイフを暗殺者から奪ったのよ。自分の血で濡れた手で、身体中血まみれになりながら無表情で次々と……」
「……」
「ほぼ一撃で倒していったわ。首を裂き、胸を突き刺し、床に転がった人間に、もう一度刃を……未だに夢に見る悲惨な光景よ……」
王妃の唇が歪み、震える。
「何と残酷……あんな惨劇は子どもが見るものじゃないし、子ども……ましてや貴族の娘がやる事ではない」
「その時のことを正確には覚えておりませんが、その当時は王太子殿下を守るためだったと愚考いたします」
「言い訳など聞きたくないっ!」
王妃は扇子を強く閉じた。
「あの子は、あなたを見て怯えていたわ。あんなに明るかったあの子が……あの日からすっかり変わったの」
ラフィリアが涙を拭いながら、優しく頷いた。
「お可哀想なアーデルベルト様……きっとその時の事は心に影を落としていらっしゃるわ」
そうなのだろうか。
マリアが傷だらけになって救ったアーデルベルトが、あの時の事を未だに……。
マリアは無意識に眼帯に触れていた手を下ろし、丁寧に頭を下げた。
「……申し訳ございません。ですが、王太子殿下をお守りできた事を、私は誇りに思っております」
王妃は満足したように鼻で笑う。
「あなたは盾なのよ。私たち王族のため命をも盾にする者。決して王太子の隣に立つ者ではないわ」
「もちろんでございます王妃陛下。国のためならば私の命など惜しくはありません」
その瞬間だった。
庭の端――茂みが揺れた。
次いで、警備の叫びが上がるより早く、花壇の影から男たちが現れた。離宮の護衛騎士の服装を着てはいるが、手には刃物を持ち、目つきはまるでならず者だ。
侵入者たちは一斉に短剣を王妃やラフィリア王女へ向ける。
こいつらは、騎士ではない。
マリアは瞬時に帯剣していた剣を抜いた。
「貴様らっ、ここを王妃殿下の離宮と知っての狼藉か!」
メイドたちは硬直してその場に立ちすくんでいる。
王妃は蒼白になり、ラフィリアが椅子から立ち上がる――が、足が震え、その場に固まった。
マリアは王妃と王女を守るため、即座に叫んだ。
「聞け!メイドたちは王妃陛下とラフィリア王女殿下を避難させろ!皆でお守りしつつ扉を閉めろ!護衛がいたら助けを叫べ!」
硬直していた侍女たちが、はっとして動き出す。けれど、ならず者たちはそれを許さない。
「逃がすかよ!」
男が踏み込む。刃が振り下ろされる――その軌道に刃が滑り込み、弾き返した。
「貴様らの相手はこの私だ!王妃殿下やラフィリア王女には指一本触れさせん!」
マリアの剣は躊躇なく男の腕を裂いた。
噴き出す血。悲鳴。花の香で満たされた美しい庭が、一瞬で血の匂いに変わった。
ならず者が三人、四人と押し寄せる。
マリアは下がらない。避難する背を守るため、庭の中央に立ち続けた。
右は見えないが、かすかな音と気配で動きなど手に取るように分かる。左目が捉える刃の光だけで十分だ。
「――そこか」
マリアの剣が走る。
背後から襲いかかってきた男の腹を突き刺し薙ぎ倒す。そして足の靭帯を切断し、肩と手首を切った。致命傷は与えず、動きを奪う。
倒れる男たちは呻きながら地面を転がり、マリアが剣を振るうたびに血飛沫が舞い、花たちは真っ赤に染まった。
転がる侵入者たちは全部で五人。
この様子なら尋問するに問題はない。
マリアはふと周囲を見た。
なるほど確かに惨劇だ。
己も周囲も至る所に血飛沫が飛散しており、足元には傷だらけの男たちが微かに唸りをあげている。
この光景を幼少期に見ると、確かに心の傷は深いものだろう。
マリアはどこか他人事のように思った。あの時のアーデルベルト王太子はどうだっただろうか。
未だにあの時の事はよく覚えていないのだ。暗殺者に刺された瞬間、何か体の奥のスイッチのようなものが押されたような気がして、それで……。
マリアの背後から微かに動く気配がする。
動きを封じたと思っていた侵入者の一人が、力を振り絞って刃を振り上げていた。
マリアはため息一つつくと、剣の背で顎を叩き、気を失わせた。
庭が重い静寂に包まれる中、遠くから足音が聞こえ、やがて雪崩れ込んできた。
「マリア殿!」
テクノラート外交官ミロシュが警備隊を引き連れて駆け寄ってきた。
彼の目が血の海に止まり――次いで、マリアの剣の先、倒れた男たちへ移る。
「……生きてますか?」
「ええ。尋問には耐えられるほどには。捕縛して侵入経路や目的、協力者など分かり次第共有をお願いします。諜報も兼ねている第二師団長のスピタルへお願いします」
「わかりました」
ミロシュは頷き、即座に命令を飛ばした。
警備隊が呻き声を上げる男たちを縛り上げ、口を塞ぎ、運び始める。
マリアは剣を鞘に納め、息を整えた。
そして、離宮の廊下へ向けて声を掛ける。
「王妃陛下、ラフィリア殿下。――お騒がせして申し訳ございません。お怪我はありませんか」
扉が僅かに開き、王妃が顔を覗かせた。震えている。恐れと、嫌悪で。
「……こんな惨劇を見せるなんて。やはり、野蛮な女!私の前から消えなさい!忌々しい」
王妃は声を張り上げた。
ラフィリアは王妃の背後で、ガタガタと震え、唇を噛んでいた。恐怖からか、あるいは――別の何かか。
マリアは深く一礼した。
「……承知いたしました。失礼いたします」
扉が閉まる音が、妙に大きく響いた。
◇ ◇ ◇
その日のうちに、スピタルから短い報告が来た。
『今回の一件は、王太子の婚約者であるラフィリア王女を狙った、テクノラートからの刺客である。
すでに両国間で話しが付き、解決済みとする。』
以上がスピタルからの報告だった。
政治的にそう収めたのだろうが、マリアの考えは違った。捕らえたならず者たちは、おそらくテクノラートの者だ。所属や持ち物は巧妙に偽装されていたし、動きや短い言葉の中にもテクノラートの訛りがあった。
それがわからないスピタルではあるまいが、マリアの知らなくて良い事情もあるのだろう。
二国の同盟が揺るがなければそれで良い。
しかし、本当に狙われたのは誰なのか。
◇ ◇ ◇
離宮の奥にある、日当たりの良い広い部屋。
大きな窓から見える庭には色とりどりの花が植えられており、季節ごとに様々な香りが部屋に運ばれてくる。
王太子アーデルベルトの婚約者、ラフィリアに与えられた部屋の一つだ。
先ほどの騒動で体調を心配されたラフィリアは、ミロシュを伴い部屋へ戻ることにした。
そのミロシュは、扉を閉めるなり、人目も気にせず怒り始めた。
「……ラフィリア王女。警備の変更を言いつけられたと思えば、自国の者を暗殺者に仕立て上げるとは。何を考えていらっしゃる」
「仕立て上げるって。大げさね」
ラフィリアは既にソファに腰掛けており、メイドが素早く用意した紅茶のカップを指先で軽く回した。香りを確かめる仕草だけは優雅だ。
「あーあ、失敗しちゃったな。次はうまくやるわ」
「次など……私はなぜあのような事をしたのかとお聞きしております!」
ミロシュの喉が鳴った。怒りを飲み込む音だった。
「テクノラートの人間が捕縛されたのです。諜報のスピタル師団長も既にお気付きです。これは国際問題ですよ!」
「国際問題だなんて、大袈裟ではなくて?ただちょっと身の程知らずにお灸を据えてやろうかと思っただけよ」
ラフィリアは微笑んだまま首を傾げる。
「それよりも、あの女があそこまで強いとは計算外だったわね。ミロシュも見た?まるで蛮族のよう」
ミロシュの眉間に、深い皺が刻まれる。
「……大陸中で一、二を争う強さの竜騎士団ですよ?その団長がにわか仕立ての暗殺者もどきなど、赤子の手をひねるようなものです」
「まぁ怖い」
ラフィリアは怯えたふりをして、体を抱きしめた。
「あの女が悪いのよ。私の王太子殿下の視界に入るから。アーデルベルト様の治世にはあんな傷だらけの野蛮な女は邪魔だわ」
「その方が王太子殿下の命をお守りしたからこそ今があるのをお分かりか」
ミロシュは一歩近づいた。
「今回は、ルーウェン殿下に交渉してテクノラート国内問題として処理して頂きます。ですが次はありませんよ」
「私が同盟の礎よ?」
ラフィリアは、きっぱりと言い切った。
「私はアーデルベルト様の妻になるのは最初から決まっているの。王太子殿下にはご兄弟がいらっしゃらない。ヴォルグが台頭している今は我が国との同盟は必須。絶対に破棄されないわ」
ラフィリアは正確に同盟の意味を理解しているが、絶対的に噛み合わない。破棄できないからこそ、己の感情の赴くまま動いているのだ。
確かに王太子殿下は竜騎士団を重宝しているが、あくまでも戦力としてであり、そこに恋慕の感情は見えない。
だがラフィリアには見えるものがあるのだろう。ミロシュはその事実を、ようやく理解した。
「……ラフィリア王女のご意志は理解しましたが、それと同盟とは話は別ですよ。言っても無駄だとは思いますが」
ミロシュは背を向けた。
「ルーウェン殿下に急ぎ報告せねばなりませんので失礼します」
「あらそう?お兄様によろしくね」
ラフィリアは何事もなかったように優雅に笑い、チョコレートを摘んだ。
「どうせ殿下は、私を切る事はできないもの」
◇ ◇ ◇
離宮を後にしたマリアは、血まみれのドレス姿のまま竜舎へ向かった。
遠い空から竜の咆哮が聞こえる。団員が訓練しているのだろう。
ふと、空を見上げる。空は青く、どこまでも広い。
空の青さとは反対の、鮮血で染まった朧げな茶会の記憶。
未だに思い出せない、あの時の記憶。
いつか鮮明に思い出せる時が来るのだろうか。
そんな事をぼんやりと考えながら歩いていると、いつの間にか竜舎の前に辿り着いていた。
竜舎の門の前でフリオが待っていた。銀縁眼鏡の、いつもの無表情。
「マリア様。おかえりなさいませ」
「ええ。フリオ、どこまで報告が上がっているの?」
「ラフィリア王女を狙った暴漢の仕業としか。ですが……」
「その通りよ。それでいいの」
「まあマリア様!せっかく珍しいドレス姿なのになんて事!」
キリも控えていたらしく、駆け寄ってきて、黙ってマリアの袖口を掴んだ。
「久しぶりのドレスなのに汚してしまったわね」
「マリア様の珍しいドレス姿なのに」
キリはぶう、と頬を膨らませたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
フリオが一枚の紙を差し出す。
「それと。――第三師団からです」
「第三師団?」
「レオニード師団長名義で、“お詫びの品”が届いております」
マリアは手紙を受け取った。
レオニードにしては妙に丁寧な文面。丁寧すぎていっそ別人が書いたものにも見えるが、字は本人のものだった。
内容は、決闘に至るまでの失言や、軍議での父への発言などの謝罪のようだった。
「……普段の言動と一致しないから、なんだか妙な気分になるわね」
マリアは微笑を作ったまま、紙を畳んだ。
「その手紙は菓子箱に添えてありました。何でもお詫びの品だとか」
「レオニード殿が届けにきたの?」
「いえ、おそらくブランデル侯爵家の者です。さすがに団員に言いづらかったのでは?」
「それもそうね」
己の部下の前で、あれだけ叩きのめされたのだ。さすがに恥ずかしさもあるだろう。
「侯爵家からの品なら期待できそうね」
「あの菓子箱、なかなか手に入らない幻の店『マダム・ショコラ』のトリュフチョコレートでしたよ!」
受け取ったのはフリオとキリらしい。
キリは素早く箱の装丁をチェックしていたようで、チョコレートへの期待で目がキラキラしている。
「よく我慢できたわねキリ。それじゃお礼状を書いたら一緒にいただきましょう。団員のみんなにも声をかけてね」
「はい!」
キリは竜舎へパタパタと走っていった。
「お礼状必要ですか?」
「せっかくお詫びの品も送ったのに礼もなしかって言われそうだから一応ね」
「礼状を書いたら、みんなで休憩よ。……キリ!先に食べてないでしょうね?」
すでに竜舎の中へ入っているキリに、大きな声で呼びかけた。
キリは廊下で立ち止まる。
「してません!毒味の準備は完璧です!」
「毒味じゃなくてお前のはつまみ食いって言うんだよ!」
「フリオ!被ってる猫が外れてるよ〜!」
二人のいつものやり取りに、マリアは小さく笑った。
「さあ、早くお礼状を書いちゃいましょう」
フリオは頷くと、マリアと共に書斎へと向かった。




