表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

[超短編]コーラ

作者: 吉屋 沿道
掲載日:2026/02/06

『drink money』


「なんだこれ」


 教室の後ろに、突如として設置されていた机。

 『drink money』の紙を三角に折って立てて、横に紙コップが積まれている。

 紙コップの前には、『30yen』と書かれた紙と、おそらくお金を入れられるべくして置かれたであろう豚の貯金箱。

 後ろには、1.5リットルのペットボトルにコーラが詰まっている。


「30円って、普通に買うより安い?」


「さあ…」


 ぞろぞろと、クラスメイト達が集まる。

 誰かが、写真を撮った。


「あ、写真」


 みんなスマホを取り出して、写真を撮り始める。

 シャッター音だけが周囲に響く。


「これ、飲んでいいのかな?」


「勝手に飲むのは?」


「流石に……」


 誰も、コーラにも、紙コップにも、触れなかった。

 チャイムが鳴る。

 チラチラと、コーラ販売所を振り返りながら席につく。


「先生、何かありません?」


「ん?後ろのやつか?」


「そうです、販売してるっぽくて」


「そうだな、学校のやつじゃないぞ」


「へぇ」


 授業中、一番うしろの席の誰かが不意に、席をたった。

 椅子の動く音。

 足音。

 硬貨のぶつかり合う音。


プシュッ


 何人か振り返って、彼の行動を見ていた。

 先生も、彼の方を見ていたが何一つ、注意をしようという素振りはなかった。

 彼は紙コップギリギリまでコーラを注ぎ、口をつけてすする。

 誰かの、唾を飲む音がした気がした。

 彼は、その場でコーラを飲み干した。


「ハァ、」


 飲み物を一気に飲んだあとの気の抜けた、息を解放した音。

 彼は紙コップを畳んでゴミ箱に捨てた。

 足音。

 椅子の動く音。

 彼は着席した。


 5分経った。


 10分経った。


 一人立った。

 すぐ右下の席のも立った。

 ゴソゴソと、鞄を探る音が教室内の所々で起こっている。

 チャイムが鳴った。


「じゃ、挨拶はなしで、大問3まで解けたら解散で」


 先生はそれだけ言い残して、教室を去った。

 5本おいてあったコーラのペットボトルの中身は、なくなっていた。

 最初に席を立った彼の、話し声が聞こえる。


「なあなあ、計算してみたけど、殆ど変わらんのだと、コーラの値段。いいよな、遠くまで買いに行かなくていいから」


 しばらくして、放課後。

 誰もいない教室。

 最初に席をたった彼は、貯金箱から、10円硬貨の音を鳴らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ