第72話:リューズ王国でもやっていけそうです
「アントアーネったら、本気で言っているの?ここに集まった人のほとんどが、あなたに会う為に集まったのよ。ほら、見た事のある人ばかりでしょう?あなた、10年前にこの国で、たくさんのお友達を作っていったじゃない」
そう教えてくれたのは、アンナだ。確かに10年前、私はリューズ王国でたくさんの友人を作った。でも、もう10年も前の話なのだ。それなのに、皆私の為に集まってくれたというの?
言われてみれば、見覚えのある顔ばかりが並んでいる。あら?あの子はブラッド様に意地悪を言っていた令息ね。あの後すっかり仲良くなったのよね。あんなに大きくなって。
それにあの令嬢も、お茶会で仲良くなったのだわ。懐かしい。
1人1人の顔を見れば見るほど、彼らとの思い出がよみがえる。そうか、私はリューズ王国で、沢山の人と関り沢山の友人を作ったのね。
「皆様、私の為にお出迎え頂き、ありがとうございます。皆様の顔を拝見させていただき、10年前の懐かしい記憶が一気に蘇りましたわ。10年ぶりだというのに、わざわざ足を運んでくださった事、感謝いたします。
これからリューズ王国で生活する事になりましたので、あの時の様に仲良くしてくださいね」
皆に向かって、頭を下げたのだ。
「ええ、もちろんですわ。私たち、アントアーネ様がいらっしゃるのを、首を長くして待っておりましたのよ」
「俺たちもだよ。アントアーネ嬢、随分と綺麗になったね。それにしても、君を虐める不届き者がいたのだろう?もっと早く話しを聞いていたら、皆でサルビア王国に乗り込んだのに」
「美味しいところを、全てブラッドに持っていかれたよ…本当にお前、運がよかったよな」
令息たちが、ブラッド様の肩を叩いている。
「何が美味しいところを持って行っただ!もともとアントアーネと知り合いだったのは俺なのだから、俺が行くのが当たり前だろう!いいかい、君たち。はっきり言っておくよ。
アントアーネは俺と結婚するために、この国に来たのだ。すぐにでも婚約を結ぶ予定だから、絶対にアントアーネに近づこうなんて野暮な事を考えないでくれよ!
アントアーネ、この国の人間は君が思っている以上に、君に懐いている。いいかい、特に令息には近づいてはいけないよ。彼らはろくでもない人間なのだから」
「ブラッド、誰がろくでもない人間だ!アントアーネ嬢、昔の様に仲良くしようね。俺たち、アントアーネ嬢がこの国に来るのを楽しみにしていたのだから」
「そうだよ、アントアーネ嬢、この国に来てくれてありがとう。俺たちは君を全力で歓迎するよ」
「「「「私(俺)たちもです(わ)」」」」
「皆様、ありがとうございます。実を言うと、リューズ王国に来るまでは、不安でたまらなかったのです。私は自国で、嫌われものでしたので…」
「イリーネ様から、すべて聞いていますわ。信じていた元婚約者に、ありもしない噂を流されたのですよね。そんな噂にまんまと騙された愚かな貴族たちが、アントアーネ様を傷付けたのだと!お可哀そうに、随分辛い思いをされたのですよね」
「ブラッド、徹底的に潰してきたのだろうな?そうでなければ、俺がアントアーネ嬢をもらうからな」
「言われなくても、徹底的に潰してきたよ。どさくさに紛れて、アントアーネを奪おうとするのはやめてくれ!さあ、アントアーネ、長旅で疲れているだろう。屋敷に戻ろう」
ブラッド様が私の手を引き、足早に馬車へと向かう。
「お待ちください、ブラッド様。せっかく皆様が私たちの為に、お出迎えに来てくださったのに、その様な態度は良くありませんわ。皆様、今日はお出迎え頂き、本当にありがとうございました。
皆様が温かい言葉で迎えてくれたお陰で、私もこの国でやっていけると確信しました。どうかこれらかも、ブラッド様と共に末永くよろしくお願いいたします」
「「「「もちろん(ですわ)」」」
笑顔で答えてくれる貴族たちの姿を見たら、胸が熱くなった。
きっと大丈夫、私はこの国でやっていける。そう思った瞬間だった。
次回、最終話です。
よろしくお願いします。




