第71話:懐かしい人たちとの再会です
「皆様、お出迎えありがとうございます。あの…もしかして、サリア様とアンナ様?」
「まあ、アントアーネったら。すっかり令嬢らしくなって。そうよ、サリアよ」
「アンナよ。アントアーネ、久しぶり。あなたに会えて嬉しいわ。イリーネ様から聞いたわ。あなた、随分と自国で苦労をしたのですってね。でも、もう大丈夫よ。この国に来たのですもの。私とサリアが、しっかりあなたのサポートをするから」
私の元にやってきてくれた2人。なんだか10年前の事を思い出し、胸が熱くなった。
「ありがとう、サリア、アンナ。またあなた達に会えるだなんて、夢にも思わなかったわ。私、リューズ王国の事、何も知らないの。色々と教えて」
「「もちろんよ」」
そう言って笑った2人。こんな風に令嬢たちと気軽に話したのは、何年ぶりだろう。心の中が、温かくなる。
「あら、アントアーネ様の味方は、サリア様とアンナ様だけではなくてよ。アントアーネ様、お久しぶりです。私の事を、覚えて下さっておりますか?侯爵家のお茶会で、1人隅にいた私を、アントアーネ様が皆の輪の中に入れて下さったのですよね」
フワフワのピンク色の髪に、エメラルドグリーンの瞳。彼女は確か
「覚えておりますわ、マリアン様ですよね」
「そうですわ、マリアンです。あなたのお陰で、私も沢山のお友達が出来たのです。ずっとアントアーネ様がいらっしゃるのを、首を長くして待っておりましたの。ブラッド様、アントアーネ様を連れて帰って来てくださり、本当にありがとうございます」
目に涙を浮かべ、マリアン様がブラッド様にお礼を言っている。相変わらず可愛い子ね。ただ、ブラッド様は明らかに不機嫌そうだ。
「マリアン殿下、別に俺はあたなたの為に、アントアーネをこの国に連れて来た訳ではありません。それから、あなたたちにははっきりと言わせていただきます。アントアーネは、しばらくは次期侯爵夫人としての勉強やレッスンがありますので、あなたたちと遊んでいる暇はありませんから」
待って、今ブラッド様、マリアン様の事を殿下と呼んだ?
「まあまあ、あまりマリアンを敵視しないでやってくれ。マリアンはあの日以降、生活がいい意味で一変したのだよ。それもこれも、アントアーネ嬢のお陰だ。アントアーネ嬢、僕の事は覚えているかい?」
目の前に現れた令息。確か…
「マリアン様のお兄様の、ノエル様」
「僕の事も覚えてくれていたのだね。嬉しいな、そうだよ、僕がこの国の王太子、ノエルだ。これからもよろしく頼むよ」
そう言って笑顔を向けたノエル様…えっ?王太子殿下ですって!!
「ノエル様は王太子殿下だったのですか?それではマリアン様は、王女殿下!も…申し訳ございません。知らなかったとはいえ、数々のご無礼をお許しください」
ひゃぁぁぁ!私ったら、何を馴れ馴れしく話していたのかしら!恐ろしすぎて腰を抜かしそうだわ。
「そんなに恐縮しなくてもいいよ。僕もマリアンも、君の事は大切な友人だと思っているから」
「そうですわ、アントアーネ様。私は身分を気にせず、誰にでも気さくに話し掛けてくれるアントアーネ様の事が、大好きなのですよ」
「お2人の言う通りよ。アントアーネは、誰にでも平等に接するところがいいところなのよ。今更恐縮されてもねえ」
「そうよ。それにノエル様は私の婚約者だから、そんなに気を遣う事はないわ」
そう言うと、アンナが王太子殿下の腕に、自分の腕を絡めたのだ。ちょっと待って、王太子殿下の婚約者という事は、アンナも…
チラリとブラッド様の方を見た。
「アンナ嬢は公爵令嬢だからね。ノエルと婚約しても不思議ではないよ。ちなみにサリア嬢も公爵令嬢だよ」
笑顔で恐ろしい事を呟くブラッド様。私、公爵令嬢と親友だったの?名前を呼び捨てにし、敬語も使わず話していただなんて…
よく考えてみれば、ブラッド様自身も、侯爵令息だったわ。身分の高い人たちが集まっていても、不思議ではない。
「アントアーネ、どうしたの?顔色が悪いわよ」
心配そうに私の顔を覗き込んできたのは、サリアだ。彼女たちが高貴な身分と分かったからと言って、急に態度を変えるのもおかしい。どうせ今まで散々無礼な事を働いて来たのだ。このまま、無礼者を貫こう。
「何でもないわ。色々な情報が一気に頭に入って来て、混乱しただけよ。それにしても、こんなにたくさんの人がお出迎えに来てくれるだなんて。ブラッド様は人気があるのね」
かなりの数の人たちが来ている。さすがブラッド様だ。ただ、なぜか皆が一斉に笑い出したのだ。一体何がおかしいのかしら?




