第69話:たくさんの人が見送りに来てくれました
港には、たくさんの人が待っていてくれたのだ。元クラスメートや昨日来てくれた貴族たち、さらに王太子殿下と王太子妃殿下の姿も。
前を走っていた両親やお兄様たちも、慌てて降りて皆様に挨拶をしていた。私とブラッド様も、急いで馬車から降りた。
「皆様、わざわざ私共の為に、お見送りに来てくださったのですか?王太子殿下や王太子妃殿下まで」
「ブラッド殿、アントアーネ嬢。昨日ぶりだね。もちろん、見送りに来たよ。ブラッド殿、リューズ王国に戻っても、どうかその多彩なる才能を発揮し、我が国とリューズ王国の架け橋になって下さることを、期待しております。
アントアーネ嬢、君には随分と辛い思いをさせてしまってすまなかった。どうかリューズ王国では、幸せに暮らしてほしい。もし何か困った事や辛い事があったら、いつでもこの国に帰って来てくれ」
「王太子殿下、お心遣いありがとうございます。ですが、アントアーネが辛い思いをする事はありませんので。私が必ず、アントアーネを守ります」
「ブラッド殿は頼もしいね。君にはこれから期待しているよ」
「ありがとうございます。必ずリューズ王国とサルビア王国が、今以上に良好な関係を築けるよう、尽力を尽くします」
ブラッド様と王太子殿下が、ガッチリと握手を交わしていた。ブラッド様がこんなにも王太子殿下と仲がいいとは、知らなかったわ。
「アントアーネ様…あの、今まで本当にごめんなさい。自分がどれほど愚かで浅はかだったか、昨日ようやく気付く事が出来ました。アントアーネ様が許さないと思う気持ちも当然ですわ。
それでも今日、もう一度きちんとあなた様に謝りたくてここに来ました。迷惑かもしれませんが、もう一度謝らせて下さい。本当に申し訳ございませんでした」
「「「申し訳ございませんでした」」」
元クラスメートたちが、一斉に頭を下げたのだ。彼らの性格が急に変わるとは思わない。中には今回の件を忘れて、同じことを繰り返す者もいるだろう。
ただ…
「皆様、頭をあげて下さい。あなた達が私にした仕打ちは、私の心に大きな傷としてしっかり刻まれております。決して許すことなど出来ない。ですが、あなた達の謝罪は受け入れますわ。これからはどうか、根拠のない噂に踊らされることなく、真実に目を向けられるような方になって下さること願っております」
彼らにそう伝えた。もちろん、彼らのしたことは絶対に許せない。正直もう、顔も見たくないくらいだ。それでも今日、勇気をもって私に会いに来てくれた事だけは、認めてあげたいのだ。
「ありがとうございます、次にアントアーネ様にお会いするときは、一回りも二回りも成長した姿を見せられる様に、精進いたしますわ」
「「「私(俺)たちもです」」」」
和解とまではいかないが、最後に彼らと話が出来てよかった。
さて、次は…
両親とお兄様、イリーネお姉様の前に立った。
「お父様、お母様、お兄様、イリーネお姉様、行って参ります」
「アントアーネ、今まで君を守ってやれずにすまなかったね。どうかブラッド殿と、幸せになってくれ」
「アントアーネ、私の大切な娘…離れていても、私はずっとあなたの味方よ。もし悩みがあったら、いつでも連絡をして。近いうちに私たちも、あなたに会いに行くから」
ギュッとお母様が抱きしめてくれた。いつの間にか、お母様と同じ身長になった私。なんだかお母様の背中が、小さく感じる。
「アントアーネ、リューズ王国はとても情熱的な国だよ。君が来るのを、皆楽しみにしている。だから安心して、リューズ王国に行っておいで」
「そうよ、アントアーネちゃん。皆あなたが来るのを、首を長くして待っているのよ。私ももう少しアントアーネちゃんと一緒にいたかったけれど、仕方がないわね。近いうちに私とアントニオ様も、リューズ王国行くから、ゆっくりお話しをしたり、ショッピングを楽しみましょうね」
「ええ、もちろんですわ。それでもまた、皆様がいらっしゃるのをリューズ王国でお待ちしております。それでは行行って参ります」
ブラッド様の手をとり、船に乗り込んだのだった。




