第63話:まだまだ断罪は続きます~ブラッド視点~
「それにまだまだ、ラドル殿の罪はありますよ。これをご覧ください」
“いいかい、君たち。次はこの噂を流してくれ。アントアーネは非常に意地悪で、癇癪もち。さらに令嬢たちの悪口ばかり言っているうえ、令息たちには媚を売りまくり、陰でこっそりと密会している。そう噂を流すんだ”
“ラドル様、もうこの様な事は止めましょう。アントアーネ様の評判は、随分と下がりました。それにこれ以上続けて、もしディーストン伯爵が動き出して、俺たちの悪事がバレたら…”
“最悪裁判にかけられたら、ひとたまりもありません。それにアントアーネ様は、非常にお優しいお方です。俺の妹の病気の事も、気にかけて下さっておりましたし…”
“貴様、もしかしてアントアーネに興味があるのかい?貴様の様な男を遠ざけるためには、まだまだアントアーネの悪い噂を流す必要があるんだ!もし逆らうのなら、君たちの援助を打ち切るぞ。
それに君たちが今までアントアーネの悪い噂を流していたこと、皆に知らせるからな“
“そんな…その様な事をされたら、我が家はたちまち潰れてしまいます。それにまだ、妹の治療費も必要ですし”
“家も母上が病気で。膨大な治療費がかかるのです”
“それなら、やる事は分かっているね。大丈夫だよ、君たちを悪いようにはしないから”
「この映像は、アントアーネが半年かけて、集めたものです。アントアーネは根も葉もない噂に傷つき、苦しんでいたのです。その上、まさか自分の婚約者がこのような事を行っていただなんて。
アントアーネはこの事実を知った時、ショックから数日間高熱でうなされました。それでもアントアーネは、必死にこれらの証拠を集め、婚約解消にこぎつけたのです。
ラドル殿、ブラッディ伯爵、夫人。あなた達もご存じですよね。婚約を解消するとき、これらの証拠の品は、全て見せられていますから。これほどまでに酷い扱いを受けておきながら、アントアーネはラドル殿を訴える事はしなかった。
それくらい彼女は優しいのです。でも、俺は違う!アントアーネがどんな気持ちでこの映像や証拠を集めたか、考えただけで胸が張り裂けそうになる。どれほど悲しく悔しかったか。どんな気持ちで、アントアーネが訴える事をしないと言ったのか。
彼女はただ、平穏な生活を送りたかっただけなのに…それなのに貴様らは…」
アントアーネの事を考えると、涙が込み上げてきた。ダメだ、今泣いては!でも…
「ブラッド様、私の為にありがとうございます。まさかブラッド様が、この様な事をして下さるだなんて。ラドル様、私は何度も申し上げましたわよね。もしこれ以上私に近づいたら、全てを公にすると。
今ブラッド様の手で、全てが公にされましたわ。私がなぜあなたと婚約を解消し、あなたとの関りを絶ったか分かりますか?私の事を愛していると言いながら、己の事しか考えないあなたに、絶望したからです。
私の事などどうなってもいい、自分の思い通りになればそれでいい。だからこそ、今回の誘拐も企てたのでしょう?私はモノではない、感情を持った一人の人間なのです。人間として尊重してくれないあなたを、誰が愛すると言うのですか?
そもそも、あなたは私の事を愛していない。ただ執着しているだけ。もう二度と、私に関わらないで下さい」
アントアーネの瞳からも、涙が溢れていた。そんな彼女の肩を、そっと抱く。
「そんな事を言わないでくれ…確かに僕は…」
「もう君の言い訳は聞きたくないよ。君がしたことは、最低な事だ。この件に関しても、今後裁判をする予定だ。既に貴族裁判所には、必要書類を提出してあるから、そのつもりで」
「そんな…」
ラドル殿の両親も、その場に倒れ込む。
でも、まだ終わらない。彼の悪事を、全て暴かないと。




