第61話:そろそろショーを始めましょう~ブラッド視点~
「ラドル殿、どこに行くのだい?そっちは屋敷の方だよ」
大きな声で叫んだ。彼はあろう事か、屋敷へと通じる通路を開けさせて、そこを通ろうとしていたのだ。
俺の声が会場中に響き渡り、周りが皆ラドル殿に注目した。
「ブラッド殿、急に大きな声を出してどうしたのだい?お手洗いに行こうと思って、間違えただけだよ」
「お手洗いは、逆側の通路だよ。使用人たちも案内しているはずだけれど…それに屋敷に行くための通路は、使用人たちによって封鎖されているはずだよ。俺たち関係者以外は、通れないはずだ。そこの君、どうしてラドル殿を通そうとしたのだい?」
「申し訳ございません。私は本日配属されたばかりで。状況が理解できておらず、開けてしまいました」
「状況が理解できないだって?メイド長から、指示が出ていたはずだけれど。まあいい、それでラドル殿は、何をしに屋敷に行こうとしていたのだい?もしかして、皆が出払っているうちに、何かを盗もうとしたのかい?」
俺の言葉に、一斉に会場が騒めく。
「ブラッド殿、さすがに失礼ですよ。僕はただ、アントアーネが体調を崩して休んでいると聞いたから、様子を見に行こうとしただけだよ。それよりもブラッド殿、このパーティには、王太子殿下や王太子妃殿下もいらしているのですよ。
それなのに、この様な騒ぎを起こすのは、いかがなものかと」
必死にラドル殿が訴えている。
「私は構わないよ。続けてくれ」
「ブラッド様、ラドル様、どうぞ私たちの事は気にしないで下さい」
笑顔の王太子殿下と王太子妃殿下。王太子妃殿下に至っては、扇子で口元を隠しているが、明らかに楽しそうだ。本当にあの人たちは…
「両殿下、寛大なお心遣い、感謝いたします。それでラドル殿は、どこにアントアーネを探しに行くつもりだったのですか?もしかして、地下牢とか…」
「地下牢だって?どうしてそんな場所が、出てくるのだい。恐ろしい男だ。まさかアントアーネを、地下牢にでも閉じ込めているのかい?なんて事だ、すぐに助けてあげないと」
ラドル殿があきらかに動揺し始めた。そして再びラドル殿が通路に向かって歩みを進めようとした時だった。
「私はここにいますわ」
アントアーネが、大きな声で叫んだのだ。そして俺の隣にやって来た。
「えっ…アントアーネ…どうして君がここに?だって君は、地下牢に…いいや、なんでもない」
「アントアーネ、もう大丈夫なのかい?」
「ええ、少し休んだので、もう大丈夫ですわ」
笑顔でアントアーネが答えてくれる。そんな彼女の肩を抱いた。
「ラドル殿、アントアーネはお手洗いで使用人に扮したこいつらに、襲われたのですよ。君たち、彼がアントアーネを襲う様に指示した男か?」
「ええ、そうです。この人です。この人の指示で、私たちはアントアーネ様を襲いました。この男が全て悪いのです。ですから、どうか…どうかお許しください。命だけはお助け下さい」
メイド服を着た女性たちが、床に頭をこすりつけて必死に謝っている。
「ラドル殿、彼女たちはそう言っているが。君がアントアーネの誘拐を企てた犯人で、間違いないね」
「誘拐だって?変な言いがかりはよしてくれ。僕はアントアーネを誘拐なんて、しようとしていないよ。それにそんな奴らの証言なんて、当てにならないだろう。ブラッド殿は、僕の事を嫌っていたよね。
だからその使用人たちを使って、僕を陥れようとしているのではないのかい?」
「君を陥れるか…俺は君の様に、卑怯ではないからね。そんな事はしないよ。それじゃあ、この人は知っているかい?」
1人の男性が入って来たのだ。
「ど…どうして君がここに?さっきだって…いいや、何でもない。こんな男は知らないよ」




