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差し込む朝陽。

ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 5月23日 午前 7 : 15 関東庁 召喚獣総合病院。


背中や大臀筋、下腹部にかけて大火傷を負った青年は、白い天井の下目を覚ます。


「....っ...ぅ....っ!!チャバ!!」


メリメリとかさぶたが軋むのに歯を食いにしばりながら、起き上がりチャバホースを呼ぶ。


「...生きてる。ただ、今も集中治療中だ。足腰はなんとかなるにして、心臓の一部と臓器の半分が炭になりかけてた。」


そろそろ目覚めるだろうと、今回事案の資料を眺めながら待っていた金髪の管理官は起き上がった青年を糸で制御してゆっくりと重度火傷病者専用のスライムベッドへと戻す。


「っ!...あんたは....っ...」


チャバホースの安否に安堵しつつも、死にきれなかった思いと命を賭しても勝てなかった事への諦観が胸の奥をついばみ、力が抜ける。


「....」


「....」


事情聴取などは後から警察が行い、処分も法執行者が決める事であるため、金髪の管理官は特に何を言うでもなくただじっと今回の事案に関する調査資料を眺めていた。


その沈黙の中でも、体とは対照的に思考は巡りこれまでのチャバホースと過ごしてきた日々と、今日にかけた想いが溢れ出る。


「..っ...くぅ...チャバを....勝たせたかった....」


チャバホースへの過剰バフによるオーバヒートで排煙となって、焼かれた青年の喉は掠れ声になりながら嗚咽し、修復途中の粘膜が患部へ響く。


排泄、清掃も担っているスライムベッドは彼の涙に優しく吸着する。


「...ん。」


「?...っ、これ...馬券?」


そんな青年の前に、金髪の管理官は湿気ってくしゃくしゃになった紙切れを見せる。


「高い湿気がある際、他の競走馬が慢性的に持っている腰や、関節、腱への痛みが強くなる。その時、頑丈で体力のあるお前の競走馬はその真価を発揮する。」


「....え」


「チャバホースは雨の日には走らせてないだろ?少しでも勝つ確率を上げるために...天気のコンディションが良い時にしか走らせてない。違うか?」


「っ....」


これまでのレース情報からも才亮の指摘は的確であり、勝てる可能性を見抜いていた者が観客の中には確かに存在しており、本来の道筋で勝てる可能性があったのだと今更ながら気付いた青年は顔を皺寄せる。


「.....またな。ケイスケ。」


そろそろ警察に引き継ぐかと、彼は帰り際に持っていた馬券をベッドテーブルに置き、彼は軽快にそう言って病室から出ていった。


「....っ...くぅ...」


彼を見送った後、置かれた馬券へと目を移し軋む腕を伸ばし掴むと、チャバホース単勝という文面に曇ったままの雲を割るように陽の光が差し込んだ。






ーーーー( ^ω^ )<それからどしたの





ーーーー皇歴2685年 (西暦2025年) 5月24日 午前 8 : 50 関東庁 召喚獣総合事案即応科棟 内務室


滞りなく夜の駐勤を終えた汐留はコーヒーを飲みながら、内務室内で垂れ流しになっているニュース映像を見ていた。


『……繰り返します。21日未明、立川競馬場第7レースにおいて発生した『馬型召喚獣』への不正改造、およびドーピング疑惑に関し、運営委員会と指定暴力団を含む反社会的勢力との長年にわたる癒着が発覚いたしました』


「....ぶぅーーっ?!うぇ?!」


「おい、きたねぇな...」


朝から汐留とのティータイムを嗜み終え、歯磨きをしていた時雨は知らぬ間にそんなことになっていたのかと、口に含んでいた物を窓の外へと噴き出していた。


『これを受け、農林水産省は事態を重大に捉え、国内全ての競馬場の一時閉鎖を命令。ならびに警視庁および召喚獣管理省による、合同特別監査チームが結成されました。今後は管理省の指揮下、徹底的な実態解明が行われる見通しです。次のニュースです。水道橋ファルコンズは名古屋シリウスとの電撃トレードを....』


「わぁー....税収とかごっそり空きますね」


「まぁ、いいんじゃないですか...あれはあまり健全じゃありませんし」


競馬場の耳を貫通してくるあの狂気じみた慟哭は、ガス抜きにしても節操がなく、汐留は賛成派であった。


「他の公営ギャンブルに流れるだけだから、税収は変わらん。」


「...うーん...そういう物ですかね。」


「その分、地下へ流れそうですけど」


「まぁ、そういうリスクも含めて楽しめるやつならそうかもな」


アジア連盟が運営管理しているオンラインカジノもそうだが、他の合法のギャンブルはいくらでもあるため、反社会勢力へと流れる金は限られていた。


「あー...そういう人は止めようがないですよね...」


いくところまで行っているギャンブラーは負けた際のペナルティーの重さすらも、スリルとして堪能しているため、法や制度設計ではそれは防ぎようがなく、時雨はお手上げといった様子で空を見上げていた。


「ボス!なんか届いたぞ。」


「ん?....牧場...」


朝の掃除を終えた玄道が宅配便を持ってくると、そこにはウッシーの牧場から送られた物であった。


「おー、ウッシーさんの時のですね。何が入って....」


「「「....」」」


才亮がイッタンモンメンでスパッと荷物を開けると、そこには記憶に新しいものが入っていた。


「.....馬刺し、堪能セット..」


反射的に競馬場の土と芝臭い匂い、そして厩舎の馬糞や草の匂いが脳内で香る。


「....うぅ....大好物だったのに...」


「...また、無理させたんですか?才亮さん?」


嫌にリンクしてしまったせいか、口を手で覆った時雨に汐留は無茶させがちな才亮をギロりと視線を刺す。


「っ...いや、今回は俺が...」


今回はそこまで無茶させていないというのは明らかであったが、これまでの所業が邪魔をしてきっぱり否定できなかった。


「おっ!馬刺しけ!朝から運がいいのぉ!」


そして、そんな中、朝の稽古を終えてきた武田は変わらず気持ちいの良い朝を迎えていた。




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