赤いボタン
ーーーー本間寺事案報告書ーーーーー
件名:本間寺における「龍召喚」事案に関わる特定未成年者の保護措置について
日付:皇歴2685年 (西暦2025年) 5月7日 宛先: 内閣府 特務召喚獣対策局長 殿 発信: 関東管区警察局 公共安全保障部
標記の件について、以下の通り措置を執行いたしましたので報告します。
記
1. 事案概要 本間寺において執行された「龍召喚」儀式において、召喚獣取締法および多岐にわたる関連法規への抵触が確認された。また、儀式の過程において、対象未成年者(以下、対象者という)の生命・身体を利用した恣意的な利益追求など著しい危険性が認められたため、緊急保護を実行した。
2. 対象者
氏名:少女A(仮称・本間家長女)
年齢:10歳
3. 法的根拠および処分内容 本件における本家(親権者)の行為は、未成年者人権保護法第1条に基づく「著しい人権侵害」および「監護権の濫用」に該当すると認定。 よって、本家が有する親権を即時停止し、日本国政府が親権および監護権を代執行する。
4. 処遇および収容先 対象者の身柄については、以下の国立特別養護教育機関へ移送し、厳重な保護下に置くものとする。
施設名: 西東京第二学校
住環境: 全寮制個室管理(生活必需品および全食事完備)
教育課程: 小中高一貫教育課程への編入
特記事項: 旧親族との接触遮断、および心身ケアプログラムの適用。
なお、現在逃走中の本間寺当主への捜索は現在も継続中。
以上
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(....今回は穏便に済んだ方か。)
通勤中、ゴツメの携帯から報告書を流し見していた彼は心内で今回事案の整理をしていた。
ーーーー....カランっ
「...っ....と」
ジャケットの内ポケットに携帯をしまおうとした彼は、ポケット内に入っていたボタンが地面に落ちてしまい、コロコロと路地裏の方へと転がっていた。
「.....ん....ん?」
片膝をついて地面に鎮座しているボタンを取ると、妙に引っかかるところを感じていた。
そして、彼の右肩を中心にボタンの形に沿って、彼の右上半身は空間ごと削り取られた。
「....っ?!」
行き場を失った削られた動脈から血潮が溢れ、声を出す間もなく才亮はその場に倒れた。
「.....」
朝日が差し込まない路地裏にて、真っ黒なフードの男が暗闇から現れ、金髪の管理官は頬から側頭へと金髪の髪は血溜まりに染まる。
「....」
フードの男は静かにゆっくりと才亮の方へと歩き、彼が再び落としたボタンを異様な形をした指で拾い上げて自らのポッケの中へと入れる。
「....っ....ッ..クゥ..」
「....」
そして、フードの男は金髪の男の頭を軽く蹴り、生体反応がないのを確認し小さく息を吐いた。
「....介入しすぎじゃよ...管理官ごときが...」
袖から伝書鳩のような召喚獣を出して朝香る空へと飛ばし、フードの男は動かぬ彼へ捨て台詞を吐き、路地裏のさらに奥へと向かう。
30年弱の才亮 勝馬の人生は終わりを告げ、兼ねてから育成してきた後輩達へとバトンは既に託され....
「......いってぇな」
...る筈であった。
「っ?!!...っ..ムゥ...ふ...」
確実に心臓を貫き、内臓を霧散したはずの金髪の管理官によって、黒いフードの男は真っ黒な糸でがんじがらめにされた。
「...ほぅほぅ、これはこれは....探してたぜ、当主殿。」
以前逃走中であったフードの男こと本間寺当主をがんじがらめにしながら、才亮は自ら体を糸で修復していた。
(なぜ...なぜ生きておるんじゃ....)
糸で口を塞がれた男はかすかに見える、吹き飛ばした筈の内臓や右肩を悠然と糸で代替させている金髪の男に困惑した。
「寄生型か....多くなっ.....!...お前....」
ほぼ全快している才亮は当主の長い袖丈から異様な体の一部を目で捉え、自分の同じタイプだと推測したが、その正体に彼は言葉を失い空を見上げた。
「......最後の太陽に挨拶しろ。やはり...お前らはやり過ぎた。」
(...こんな...筈では...)
本間寺当主が見た地上での最後の景色は、金髪の男が諦観満ちた顔でコチラを見下ろしている顔だった。




