若輩の処遇
数時間後、夜はすっかり明けて、あんなに満ちていた月は太陽に成り代わった頃、八王子市召喚獣病院にて、最後まで友を見捨てなかった男は目を覚ました。
「ーーー・・んっ....ぅ...ここは...」
「...起きたか?!つぅ.....すまない。すまない...向井...」
ベッドの脇で目が覚めるのを待っていた郷田は彼に縋りながら謝る。
「っ....ぅ....いてぇよ」
「あっ...悪い....本当、俺のせいで...」
致命傷はなく順調に回復している向井であったが、筋肉痛に近い回復薬の治り痛に響いた。
「....」
「はぁ....別に泰示が無理に連れてきたわけじゃないだろ....」
向井は真面目なんだか、不真面目なんだかわからない郷田泰示を一瞥しベッドに寝直し、天井を見つめながら、ただ事実を話した。
「....ん?...ぁ、てか、前田は?」
その中で、なんで自分が助かっているのかというのと、客観的に見て早々に賢い判断をした前田について聞いた。
すると、病室の扉が開いた。
「....起きたか」
「?」
「才亮さん!」
現れたのは郷田は面識があるようだが、向井とは面識のない金髪の管理官?だった。
「...っ!よかった...無事だったか...」
そして、彼の後ろからピッカピカの無傷の前田が現れ、向井はホッと胸を撫で下ろした。
「あぁ、こっちは何ともないが、そっちは大丈夫そうではない...な」
「まぁ、自業自得だ...ん、前田が助けを?」
「っ...あぁ、エコで警備員を探して、たまたまいた才亮さんを見つけたらしい。」
「....才亮さん。前田。助かった、ありがとう」
「いや、才亮さんが...」
前田が才亮にありがとうをパスしようとしたが、それよりも話すべきことに入った。
「それより、レベルアップ場に不法侵入したお前ら3人。1年間のレベルアップ場への入場禁止と24週間の講習だ。」
正式な通告書を持ってきた才亮は3人のその紙を配って、処罰をあてた。
「っ....ん...免許は?!」
重めの処罰を言い渡された彼らであったが、通告書内には召喚獣帯同免許の停止は記載されていなかった。
「今回の事件は免許停止、剥奪の要件は満たそうと思えば満たせるな。」
「「っ....」」
召喚獣帯同免許の永年停止、剥奪はこの日本国に生きるにおいて、特別な事情を除いて、自分の召喚獣すら扱いきれない、または召喚獣で他へ危害を加える危険性があると見なされたと同義であり、それらは前科一犯に相当するもので社会的に死んだも同じであった。
「ただ、その前になぜ、こんなリスクまで取った?」
「それは...」
答えを迷っているようには見えないが、郷田は何が自分をそうさせたのか熟考していた。
「.....」
才亮は15歳の青年の答えを待った。
「もっと、強くなりたくて...」
「なんのため?」
「それは....」
頭と胴体に包帯を巻いている10年来の友と目が合う。
病室の窓を見ると、自分たちは死にかけていたというのに、変わらず朝日が上り、近くの学校から朝練で早くからスポーツに励んでいる学生たちの元気な声が聞こえる。
「....」
やり方や、犯した罪は決して無視できない。
許す許されないに関係なく、一生背負って生きていくしかない。
そうしようとする、朝日へ向かう15歳の青年の答えは確かに先人たちと通じていた。
「今より、もっと強くなって....皆を守りたいからです。」
『ーーーー・・お前の勝手な判断で、何人死んだ?!』
『ーーーー・・遺族に何と言うつもりなんだ....』
『ーーーー・・次私の前に現れたら、私はあなたを殺さずにいられない。』
胸に伝う高い湿気と、腐りきった磯、焼ける木々の匂いが目の奥にフラッシュバックする。
目を開けると、3人の青年たちが澄み切った目でこちらを見つめている。
彼らへの処遇は初めから決めていた。
「.....そうか、お前らなら近道しなくとも強くなれる。期待してるぞ。」
「...っ....はい!!」
おそらく彼らは、これから何があっても、病室を立ち去る金髪の召喚獣管理官の背中を忘れないであろう。




