エピローグ
翌朝、僕は初めて彼女のお墓を訪れた。
青空が広がる清々しい朝で、墓地には心地よい風が吹いていた。
しばらく歩くと、彼女が眠るお墓に辿り着く。綺麗に掃除が行き届いており、供えられた花はまだ活き活きとしていた。
昨夜の出来事が夢だったのか現実だったのか、まだ判然としない部分もある。けれど、僕の心は確実に変わっていた。
墓石の前に膝をつき、僕は静かに話しかける。
「昨日のは夢じゃないんだね」
風が僕の頬を撫でていく。まるで彼女が「そうよ」と答えているかのようだった。
「由美ちゃんありがとう。由美ちゃんのおかげでやっと前を向けそうだよ」
僕は十年間一度も言えなかった彼女の名前を、ようやく声にすることができた。言葉にしてみると、それは思ったよりもずっと自然に口から出てきて、とても温かいものだった。
胸の奥に温かな光が宿るのを感じる。それはもう思い出したくない思い出の痛みではない。彼女に対する愛おしさと、感謝に満ちた優しい光だった。
墓前には、白い百合の花が朝日を浴びて美しく輝いている。
まるで彼女が僕に話しかけてくれているかのように風が吹いて、供えられた百合の花が揺れていた。
「僕、頑張るよ。これからも君と一緒だから、僕はもう大丈夫」
僕は手を合わせ彼女にそう報告した。
目を開け、ゆっくりと立ち上がると、僕は空を見上げた。青い空に白い雲がゆっくりと流れている。
「なんだか、久々に上を向いて空を見た気がするな・・・」
そんな事を呟くと、空の向こうから、彼女の笑い声が聞こえてくる気がした。
最後まで呼んで頂き、ありがとうございます。
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▶https://youtu.be/m-UR0bO21VU




