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夏祭りで出会った不思議な少女が僕の大事なものを奪いにやって来た  作者: もものけだま


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第四話 僕の決意

彼女からその言葉を聞いた時、僕の目から涙があふれ出した。


「嫌だ!それだけは絶対に嫌だ!」


僕は必死に首を振った。


「・・・お願いします」

「僕からこの思い出を持って行かないで・・・」


大好きな彼女の葬儀でさえ流すことができなかった涙が、今度こそ本当に堰を切ったように流れ出してくる。


「・・・お願い・・・持って行かないで・・・」

「僕には大事な思い出なんだ」

「他の人には重荷だと思われるかも知れないけど、僕には大事な大事な思い出なんだ」


僕は震える声で続けた。


「大好きだったんだ」

「君の事が本当に大好きだったんだ」


涙が止まらない。思い出す度に辛くて悲しくなった彼女と一緒に過ごしてきた思い出。


でも、その思い出の中の彼女が僕の中から消えてしまうのが、嫌で嫌で涙が止まらなかった。


「もう!そんなに泣かないでよ!」

「泣き虫なのは十年経っても治ってないのね」


まるで昔のように彼女は僕の隣に座って、そっと背中をさすってくれた。


「君は何も悪いことをしていない。私は君と過ごした日々はどれも楽しくて幸せだった。君も同じように思っていてくれて嬉しいし、私も君の事がずっと大好きだよ」


そんな彼女を聞きながら、僕は泣き続けた。十年間溜め込んでいた悲しみ、罪悪感、そして愛しさが全て涙となって流れ出した。


「ねぇ・・・久しぶりに、秘密基地に行かない?」


「え?あの秘密基地?」

と僕が顔をあげて彼女を見つめ返す。どうやら僕のその表情には不安が現れていたようで、彼女がポンっと僕の肩を叩く。


「大丈夫!私と一緒だからもう怖くないよ。もう思い出したくない思い出じゃないよ」


彼女の言葉に押し切られて、僕は重い腰をあげ立ち上がった。


「そんなに大きくなったんだから、おんぶしてよ!」


10年前には僕よりも背の高かった彼女が、僕をじっと見上げている。


「良いでしょ!せっかく来たんだから、それくらいして貰っても!」


「・・・わかった」

と僕が言うと、彼女が顔を少し赤らめながら呟く。


「・・・やっぱり抱っこがいい」


そう言って僕に抱き着く彼女は、昔よりもとてもとても小さく感じた。僕がその小さい体を抱き上げると、彼女は僕の肩に顔を埋める。


(ああ、こんなにも小さかったんだ・・・それなのに、僕はあの頃から心配ばかりかけちゃっていたんだな)


そう思いながら、「歩くよ」と声をかける。


「うん」


そう小さな声で言った彼女は、僕の肩に顔を埋めながら、声を殺して泣いていた。


僕はそっと彼女の頭を撫でながら、神社の裏手にある森へと進んで行った。

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