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プロローグ

 剣はどうしようか迷っていた。

 生まれた時は別の形をしていたのだが、少し前に人間の要望で形を剣に変えたのだ。人類を滅ぼしてしまうかもしれない大いなる敵を打ち倒す為、シンボルとして選ばれたのだ。

 剣は固形ではなかった。だから斬ったり刺したりする時は使用者の魔力でもって補っていた。ハリボテなのだ。

 使用者が居なくなって随分と経っていた。そろそろ剣の形をとっていなくても良いのではないか、と魔が差し始めていた。薄暗い洞窟の奥深くで、次なる使用者が現れるのを待っている。理由は待てと言われたからだ。

 剣は自分で考えることが苦手だった。何がしたいという欲も無い。だから何もせず、考えず、ぼんやりしていた。

 ところが最近気になることが出来た。使用者が打ち倒そうとしていた強い気配が一つに集まろうとしている。やはり分散させるだけでは足りなかったのだ。

 今の世に使用者は居ない。だが、使用者にはこの強き存在を次こそ討ち果たしてくれと無茶な願いをされている。私にそんな力はなく、使用者頼りと知っているだろうに託してきた。それほど、頼れるものが少なかったのだ。

 こんな洞窟の奥で、抜かれる日を待っているだけで良いのだろうか。

 こんなに悩むのは久しぶりだ。まるで使用者が生きていた時のようではないか。あの、毎日が躍動していたあの頃のよう。

 このままではいけないだろう。ああ、このままでは使用者の最後の願いを叶えられない。

 岩に溶けよう。そして張り巡らせるのだ。次の使用者を定める為の取っ掛かりだけでも掴むのだ。

 そうして伸ばした感覚の先に、引っ掛かるものがあった。ああ、これは良い。丁度良い者が居た。これが使用者になる可能性はゼロに等しいが、あの強き存在との戦で、使用者と共に戦った者との類似がある。

 この者の中で待とう。いずれ、きっと、出会う筈だ。次の使用者に会った暁にはここから抜いて貰うのだ。

 感覚を鋭く持つ為にも空気とふれ合っていなければならない。この者には悪いが、少し体を貸して貰おう。

 さあ、準備は整った。早く来てくれ、次の使用者よ。

 そしてどうか、私に指示を与えておくれ。 

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