黒の炎
「よく来たな、歓迎するぞ」
西方勢の総長サマに迎え入れられる。
無駄に筋肉質な腕を露出させ、胸筋やらなんやらで服は張り裂けそうにも見えていた。
「えぇ、お久しぶりですね嶽山様」
普段のシスコンぶりからは考えられないほどに礼儀正しい兄には腹が立つ。
俺は何も言わずに、少し頭を下げた。
「堅苦しいのはよい、で?なんのようだ。」
兄貴はちらっと俺のほうを見た。
俺は、兄貴の少し前に出る。
「中央勢力からの伝言だ。近々会議やらお茶会やらを開きたいので、空いてる予定があったら知らせてほしいとのことだ。」
嶽山は銀、、、白色の短い髭を撫でながら首をひねる。
小さく唸った後に口を開いた。
「あい分かった。その件に関しては、文通で送ることにしよう。」
「ん、そうしてほしい。」
「だが、それをするには条件がある。」
「は?」
嶽山はずかずかとでかい図体をこちらに向かわせる。
「私と戦って、勝ったら、聞き入れてやろう!」
こいつ、、、ただ戦いたいだけだろ
ちらっと兄貴のほうを見るとニコニコしている。
知ってたなこいつ、、、!!
「はぁ、、、分かった分かった、応じよう。ただ、ここを壊してしまっても怒らないでくれ」
「はっはっは!!当たり前だ。戦いに犠牲はつきものだからな!」
相手は無駄にでかい武器だった気がするが、弾幕型の槍で耐えれるのか?
微妙な武器しか持ってきてないんだが、、、
「容赦はせぬぞ!天狗の娘よ!」
「問題になっても知らねえぞ?」
戦いのコングが聞こえたような気がしたが、俺は構わずに槍を相手に投げる。
無論、大きな土煙が舞ったと思ったら、槍は一瞬で潰されていた。
目の前にあるのは、大きな斧のような武器
、、、簡単に勝てるわけはない、か。
弾幕性の槍なので、ほぼ使い捨てのような感覚で使っても特に問題はない。
そして、利点といえば、弾幕性の槍にはエフェクトなるものがつけられる。
どこまで、対応できるか、、、、
「怖気着いたか天狗の娘よ!!我が最高傑作!断山剣を!!」
そうだった、これ大剣だ。
山を両断してしまうほどの強さがあるらしい。
あたったら即死案件でいいなこれ。
まぁ、数はこちらが優勢だから、捌ききれなさそうなくらいの数の槍でも出しとけば、、、
紫に染まる槍を試しに十本ほど出して、嶽山に向かって放ってみる。
しっかり、狙いは心臓に定めて、殺す気で向かわせる。
――――いや、失敗だったな。
咄嗟に翼を使って飛ぶ。
俺が出した槍がすべて、俺のいた場所に突き刺さる。
一か所だけを狙ったら一発で跳ね返されるのか、なら、時間差ならいけるか?あるいは数か所狙うか?
「どうした!!もう終わりか!?」
腹立つ
一回死なせるか?
じゃないと気がすまない。
てか、柱の上だから足場安定しないんだが
「来ないのか?ならば、こちらから行くぞ!!」
「お決まりセリフどーも!」
こちらに向かってきたタイミングで翼を無理やり変形させる。
氷の翼は、よくあいつがやるやつだ。
嶽山に向かって氷の羽を飛ばす。
余計な筋肉が邪魔するだろうから、ダメージが入るとは思ってはいない。
少し巻き込まれて、腰のあたりをかすったが、気にする必要性はない。
辺りに散らばる霧に紛れてその場を脱し、地に足をつける。
柄だけがのこった羽は消し去る。
「来いよ。俺に勝てる気でいるんだろ?」
あざ笑うかのような素振りを見せる。
そうすれば、ああいうタイプはすぐに乗ってくる。
俺はそれを利用して相手を倒すのが好きだ。
「天狗の娘ごときが我をおちょくるな!!」
無駄に声を張り上げ、大剣をこちらに向けて突進してくる。
相手が手前で素早く剣を振り上げた瞬間に、パチンッと、音を鳴らす。
まだ歯茎は見せるな。
ぎりぎりまで火力をためろ、
勝ちが確信するまで――――
黒の炎が辺りを包み込んだ。
彼女の縁者はその様子を見て、小さく笑った。
火力は溜めすぎる程度がちょうどよかったようだ。




