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六人の忌み子のお話  作者: untitled
1世界からの嫌われ者
16/24

記憶屋

記憶を受け持とう。

たとえそれがつらい過去だったりしても

記憶を読もう。

たとえそれが知ってはいけなかったことだとしても

記憶を渡そう。

たとえそれが悪事に使われようとも

一見、普通の一軒家に見える家がある。

白い柵に貼られている木札には黒い字で「記憶屋」と書かれている。

白色のドアには「open」の看板がぶら下げられている。

その店の庭に、警察なるものが足を踏み入れた。


「ここが記憶屋、、、、」


一番ガタイの良い男はそう言った。

後ろにいる二人はドアのopenの文字をにらみつけている

ガタイの良い男はゴクリと唾を飲み込んで、その店の中へと入った。


「いらっしゃいませ!記憶屋へようこそ、少々お待ちください。」


店の中に入るなり、ショートヘアーの女の子が手招きする。

頭につけている赤いリボンがゆらゆらと揺れていた。

真っ黒な髪によく似合う鮮やかな赤色


「このお店は、未成年も働かせているのか?」


後ろに構えている、片方の警官がそう言った。


「いえ、私はここの店主に拾われて、弟子入りしただけですので、お店のお仕事は、私がやりたくて、手伝っているんです。師匠は何も悪くありません。」


孤児、か

最近戦争もあったりしたため、恐らくこの見た目の年齢だと戦災孤児であろう。


「店主は何処に?」

「ただいま準備中です。先に、御用件をお伺いしても?」

「、構わないが、、、、、」


要件は簡単

未解決事件の解決の手助けをしてほしいだけ、

ここの店主は、心を読めるという話もある。

捜査に役立ち、更には俺の地位の向上も、、、、、って、それは良くないか、

市民の安全を守るために、頑張っているのだ!!

階級など、、、、、!(ほしい!!)


「なるほど、能力者による殺人事件ですか、」

「はい、全て変死体が発見され、その後も、事件とは関係あるのかは分かりませんが、不可解なことが続いています。」

「ふむ、、、、、分かりました。」


女の子は、一瞬こちらを見て、そのあとに了承した。

この子も、心を読めるのだろうか、、、、、

そう思っていたときに、ガチャリとドアの開く音が聞こえた。


「ごめんなさい、少々身支度に時間がかかってしまって、、、、、」


奥の部屋から赤っぽいオレンジ色をした瞳の、白髪の女性が出てきた。

寒いのだろうか、薄い茶色の毛布を羽織っていた。

小走りに私達の間を横切って、カウンターらしき場所にある席に座る。

ちらりと、少女のほうを見た。


「なるほど、そういう要件ね、、、あぁ、申し遅れました、私は記憶屋店主の鬼崎麗奈(おにざきれな)です。」


そう言って、軽く会釈をした。


「それで、あなたたちが今回の事件で私達を使う理由は?」


「っ、知っておいでで?」


「それなりには、それで、理由は何ですか?私が助けてしまうと、あなたは階級を上げることが難しくなりますわよ?」


「っ、何故そこまで知って、、、!?」


「ふふっ、さぁ?」


そう言って口元に手を添えて笑った。

店主は私の反応を見てとても面白そうにした。

やはり、記憶屋の名は伊達ではない、、、か、、、


「まぁ、手柄はすべてあなた方にお譲りいたしますので、心配はいりませんわ。」


「は、はぁ、、、」


完全に彼女のペースに持ってかれている気がするが、私は落ち着いて話すことにした。




「どうぞ、」


少女が私達に紅茶をふるまってくれた。

少し動きがぎこちなかった。まだ、練習途中なのだろう。

紅茶のいい香りが漂う。

一口飲んでみると、手慣れていないような動きの割には、とても美味しい紅茶だった。


「すいませんね、私のお気に入りのお茶しかなくて、できるだけ、種類は多くしているつもりなのですけれど、、、、」


「あ、あぁ、大丈夫ですよ。」


申し訳なさそうにする店主をなだめる。

どうやら、部下が気に入らないような顔をしていたのが気になっていたらしい


「それで、どんな記憶をお望みで?」


ゆらりと目を開き、うっすらと笑みを浮かべる店主

その姿に少し身震いした。


「三名上がっている容疑者全員の事件が起きた前後の記憶が欲しい。できれば一週間から二週間ほどでたのむ。」


自分では真剣な顔つきをしているつもりで話す。

自力で解決したいが、どうも分からない。

異世界人は頼ることができなかった。

なら、ここが最後の切り札

ここで挫折したら、あきらめるしかなくなる。


「、、、、分かりました。お引き受けしましょう。」


「!、、、では!」

「しかし、」


そう言って、店主はにっこりとほほ笑んだ。


「料金は前払いで、お願いしますね。」


顔の横に八分音符が見えた気がした。

無論、事前の情報収集で知っていることだった。

血が入っている小瓶を二つほど胸ポケットから取り出し、机の上に置く。


「取り寄せた。できるだけ、不純物の入らないようにした血液だ。これで足りるか?」


店主は、一瞬驚いた顔をして、そのあとにっこりとまた笑って


「十分です。ありがとうございます。それじゃあ、二日後辺りにまた来てくださると、記憶をお渡しできるかと思います。」


と、言った。


「ありがとうございます!!」


その場で立って、深くお辞儀をした。

これで、事件解決の糸口が、、、、!

一つの希望を胸に抱いて、

私は、記憶屋を出た。

二日後

こんなに待ち遠しく思ったことは、私の人生で一回もなかった気がした。

あの警部からもらった小瓶のふたを開けて

その中身を

私は勢いよく口の中に流した。

とても、おいしかった。

師匠は優しかった。

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