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六人の忌み子のお話  作者: untitled
1世界からの嫌われ者
13/24

Ⅺ恐怖を植え付けた。

荒らさないで、私たちの記憶を

見つけないで、私達の過去を

もういい加減にして、お願いだから

もう、これ以上は何もないからっ!!

薄暗い森の先に開けた場所を見つけた。

町があると思った。

言われた通りの場所に来たからだ。

それなのに、、、、

なぜ、人の声が聞こえない?

まだ森を出たばかりだから?違う


そこに人はいたはずだったからだ


古臭い家が立ち並んでいる。

もう、何年も前に作られたのだろう、所々が腐食していた。

それなのに、どこか恐怖を感じる。

理由はまるわかりだ、人が誰もいないのだ。

腐食はしているとは言えど、まだ人は住めそうだった。

腐食していない家もあった。それなのに、

人は一切いない。

静かな空間

鳥の泣き声も、風の音も

何も聞こえない。

静寂に包まれた空間を

聞こえてくる足音に、いつも以上に驚いてしまう。

自分が歩いているせいだとは知らずに、

それほどに静かなところだった。

一つの家に入ってみる。

木でできたきれいな柄の食器

中央魔法界にある食器の柄とは、また違う柄をしている。

どこか、前の世界での和を感じるような模様だった。


別の部屋に入ってみる。

寝室なのか、敷布団が4つほど並べて敷かれていた。

雑にめくられた布団

投げ出された固い枕

火のついていない、ロウが皿から垂れそうになっているまま固まっている蝋燭


いったんその部屋を出て、別の部屋に入る。

古ぼけた積み木がある部屋

ぼろぼろのぬいぐるみもある。

子供部屋、といったところだろうか

乱雑におもちゃがおかれている、遊んでいた途中なのだろうか。

絵本のようなものが棚に置かれている。

絵本の表紙には、斬撃のような跡があった。

棚にも、爪でひっかいたような跡がある。

その跡に触れようとした時だった。


「ショウタ様、」


外交官に呼び止められた。

「どうした?」

にこやかにそう答えてみる。

「情報を知っている方と、連絡が取れまして、この先にある町に住んでいるようで、今から、向かわれますか?」

「ふむ、、、、では向かおう。」

そう言って、その家を後にした。

本当は、もう少し調べておきたかったが、

一瞬、小さな子供がいたような気がしたのは、気にしないことにした。




「すまないな、急に押しかけてしまって」

「いえいえ、、異世界人様に来ていただけるなんて、光栄なことです。」

そう言って、一軒家に入れてもらう。

街並みに溶け込んだ一つの家

外見的には古臭い家かと思ったが、意外と中身はきれいだった。

「お茶を入れてきます、」

「いや、別に構わない。」

すっぱりと断っておく

「いえ、私が落ち着くためだけですので、、、、」

これから話してもらうことは、それほど彼にとって衝撃的なことだったのだろうか、

「まぁ、私もあまり覚えてはいないんですけれどね、、、、もう、幾千年前のことなので、、、」

「待て、ここにいる奴はみな年齢バグってんのか?」

涼太郎が口をはさむ

つぎは千年単位、、、、まぁ、言っていることに否定はしない

「私達竜の一族は、何の属性やどの竜の血を引いてるかによって寿命が決まるんです。私の場合は、蒼黒竜(そうこくりゅう)の血を引いて生まれたので、およそ一万年から一万五千年ほどです。」

蒼黒竜は青い鱗に黒の体を持つ竜

主に水と氷の属性を持っていて、弱点の属性がほぼ無効される。

なお、黒が入る竜は基本的に弱点属性は無効してくるものが大半だ。

中央魔法界でかなり問題視されている竜が、こんな辺境地に住んでいたとは、、、、

「私は、黒の竜の中でも、弱いほうですけれどね。竜の姿になろうとも、私は蜥蜴くらいの姿にしかなれませんので、、、、」

そう言って苦笑する。

人の姿であろうとも、弱そうな体をしている。

何らかの病気にでもかかっていたのか、元からなのか、どこかにぶつけたら、すぐに折れてしまいそうなほどにやせ細っている。

「で、あの誰一人としていなかった村のような場所で、何かあったのかどうかを知っているのか?」

「えぇ、勿論ですよ、、、、」

そう言って、目を伏せると、


「ああなった原因は、私たちのせいだといっても、おかしくありませんから」


「、、、、どういうことだ?あれは、ここにいた忌み子とやらのせいだと聞いたが?」

「間違ってはいませんよ、ですが、ああしたのは私達の行動が問題です。私たちが、あの子を忌み子と忌み嫌わなければ、ああなることはありませんでしたので」


忌み子は忌み嫌って当然だろうに


「私は、最初は見て見ぬふりをしていたのです。あの子は、、、、もう、名前も忘れてしまった子ですが、あの子はいつも、村の人たちの奴隷として扱われていました。とても酷い姿で、気になっていたところ言えば、殴られたところは一瞬だけしか痣にならなかったことです。最初は、見ていられずに、目をそらしていたのがいつもでした。」


一瞬しか痣になっていない、治癒能力持ちか


「その後に、私はあの子の顔を見ることができたのです。私は、光のこもらない真っ黒な目と目があいました。その瞬間に、私は一目ぼれしたのでしょう。その日から、私はあの子のあの表情の分からないあの真っ黒な目が、目に焼き付いて離れませんでした。」


忌み子に恋をするとは、随分物好きだな、、、、


「そこから、一年かそこらが過ぎた頃でしょうか、彼女が、家の外で一人、歩いていたのを見ました。本来、一人で歩くことは禁じられているはずでしたので、驚きつつも、後を付けました。その時に、あの子は脇道に入っていったので、こっそりとみてみると、人の死体を食べているのを見つけました。」


「人の死体を、か?」

確かに、ドラゴンどもは、人を食べることが多いが、竜人までもが人を食うのか、

「はい、あの子はそれをおいしそうに食べていました。」

「竜は人を食うからか?」

「いえ、あの子に与えられた食事に、まともなものがなかったからだと思います。すべてカビが生えた食べ物や、腐ったもの、まともなものかと思ったら、毒が入っている食事が大半らしいので、おそらく、人肉があの子にとって一番まともな食べ物なんでしょう。」

それほどにひどい扱いを受けるとは、、、、それほどやって、なぜ死んでいないのかがきになるところだが、


「あの子は、それをとても美味しそうに食べていたんです。その時の笑顔と言ったら、とてもかわいらしく、とても狂気的でした。あれから、私はあの子が閉じ込められている部屋にこっそり人の死体を置いて行ってあげてました。」


「ばれたりはしなかったのか?」

「私のような弱者は何をしてようが、無視されるのがいつもなので。」

「そういう格差は東方にもあるのか」

って、感心するようなことではないか、


「続けますね、それから、一週間後くらいの話でしょうか、その日だけは、しっかり覚えているんです。あの日は、雨が降っていました。ちょうど夕暮れ間もなくなってきた時間帯でしょうか、村の人たちが、なぜか中心部に集まっていたんです。とても急いだ様子で、私はあの子を逃がすための準備をしていました。それを一度中断して、中心部に向かいました。ただ事ではないような気がしたからです。その時に、私は雨のにおいに混じって、血の匂いがしていることに気が付きました。そして、不思議な情景を見ました。」


「あの子が、倒れている人々の中心に立っていたのです。」


「、、、殺したのか?」

「、、、、はい、あの子は、村の人たちを虐殺して回っていました。驚いた村の人たちは、あの子を一度殺害して、止めようと集まっていたのです。珍しく武装して、それでも、あの子に勝つことはできませんでした。あの子の爪は鉄でできた鎧をいとも簡単に破壊しました。」

「虐げられて、弱っていたはずの子を?」

「弱っていたどころではありませんでした。あの子は、長年の間に体の中に大量の魔力を溜め込んでいました。妖力と共に。」

「妖力?」

「妖怪の持つ特殊な力です。竜人という定義であれば、妖怪と判定されるので、私も少ないですが持っていないことはないですよ。」

「魔力を溜め込んでいたとはどういうことだ?」

「中央魔法界の人なら分かると思いますが、魔力は定期的、または継続的に開放しないと体の中で暴走してしまうらしいですね。」

「そうなのか?」

「え、えぇ、はい。」

急に話を振られて、眠そうにしていた外交官は戸惑いつつも反応した。

「そのため、他人に魔力がばれてはいけない、開放してはいけないと教育された影響で魔力を開放できず、そのまま魔力は片っ端から増えていくので、逆に強くなっていってしまったのでしょう。あの時のあの子には、ただならぬ覇気をかんじましたので」

覇気というか、殺気ではないのかそれは。

「あの子は私以外の村の人たちを殺害してしまいました。その後に、私のほうを向いて、背筋が凍るような冷たい瞳と言葉でこう言いました。」


「あなたは私にご飯をくれた人、生かしてあげるから速く逃げて、私に二度と顔を見せないで」


「私は恐怖に耐えきれず、一目散に逃げだしました。そして、この町の人々にあって、事情を説明した時に、快く迎えてくれて、私はここにあの子の記憶を通じるために生かされました。魔力持ちを、安全に匿うために、」

「、、、、、なぜそのような路線に行くのかが分からないな。」

治らない癖が出てきてしまう。

水を差してしまうようなことを言ったのはわかっている。

「罪滅ぼしですよ、早くあの子を助けていれば、あの村の人間が死ぬことはありませんでした。」

「だが、忌み子を扱うのは危険ではないか?」

「いえ、あの子たちは私たちが虐めるため、心身が不安定になるので暴走しやすくなるのです。日ごろから、あの子たちの望んだ生活をさせてあげたりすると、暴走は全くと言い程しなくなります。」

「なぜ、忌み嫌うべき存在を忌み嫌わない?」

「あの子たちは望んでそんな力を持って生まれたわけではありません。そんな子たちを忌み嫌うのは理不尽極まりないでしょう。」

「それは仕方のないことではないか?」

「そうですか?では、あなたは望んでこの世界に飛ばされたのですか?」

「いや、そういうわけではないが」

「そういうことですよ。」

「、、、、どういうことだ?」

「望んでないことを勝手に確定だと決めつけられるのがこの世界ですよ。」

「は?」

「ちょ、ショウタぁ、おいつけないよぉ、」

百瀬が私の腕に泣きついてくる。

あまりの速度の質疑応答に追いつけないようだ。

涼太郎なんか、宙を仰いでしまっている。

外交官は上の空どころではないようだ。

「、、、、、すまない。」

ボソッとそう言っておく。

そんなつもりはなかったのだがな

見つけたらもう戻れないよ。

あなたたちは恨みを買ったんだ。

もう、逃れることはできない。

この運命からは

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