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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第一章 地獄の花園
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第九話 幽灯石(推敲版)


地底領、地下世界。

未知のワードと経験に、僕の胸の高鳴りが最高潮に到達する。


暗闇の中で形成される未知の地形、青白く地面を照らす鉱石、しかしどこか心和む穏やかな雰囲気は、僕に新鮮な経験と躍動を植え付けた。


血液坑道の終わり際に僕らは背後を振り返り何もないことを確認すると、僕らは広大な地下空間への探索に乗り込んだ。


広い......! 

デカい......!

そして極め付けは、その地底に根付く植生だった。


「......不思議だな、まさか地底にも植物が生えているなんて」


地底空間に一定の距離を空けて点在するそれらの植物はどれも膨らみがあり、大量の水分を蓄えているように見えた。


要は多肉植物の類だ。


地上ではあまり見られないタイプの植物なのだが、この地底にはそれらに属する未知の種類の植物が地面から壁に至るまであらゆるところに張り付いているものだから驚いたものだ。


【ここ、地底領ルドガリアでは、地底の特産品である多肉植物の輸出と栽培が盛んだったのも影響してると思うよ。


特に地底サボテンの類なんかは観賞用にも薬や塗料の材料にもなるから、あらゆるところで重宝されているんだよ】


ふーん。

つまり、お宝の山確定というわけだ。

しかし不可解だ。


通常植物というのは日光があって初めて生育が可能になるはず......。


一体どういう原理で、これらの植生は成り立っているんだ?


【どうやら、君も気になってるみたいだね。

実は簡単な話、この地底領には日光の代わりになるものが存在しているんだよ。


それがこれ、幽灯石(ゆうとうせき)だ】


「幽灯石......?」


【幽灯石......地底にある膨大なエネルギーを取り込んだ特殊な性質を持つ石のことさ。

その石が、地底空間に大きな影響を及ぼしたんだ】


大きな、影響?


【今言った日光の代理さ。

この石は地底を照らす光源として非常に優秀で、今現在でもこの地底空間を照らし続けている。


ほら見て、地底の天井を。

あの輝きは幽灯石から放たれているものだ】


あれか......!

なるほど、あの光が日光の代わりとなって光合成に関与しているという仕組みなんだな。

合点がいったぞ......!


「......光合成か......!」


【そ、光合成に使われてるのがあの幽灯石から放たれる光ってわけだね。


それに地底の多肉植物には地下水を飲み水に変える力があるんだよ。


だからこそ、この地底でも文明は栄えることができたんだ】


空にはまるで夜空に輝く星々の如く多彩な色の幽灯石が地底を照らしているのがわかる。


白、黄、青、赤、橙、その他あらゆる幽灯石の色彩は、僕らを明るく出迎えるように道を照らしてくれていた。


【さ、この地底の出口を探すよ。

目指すは地底の抜け口『静脈坑道』だ......!


太陽軍があの坑道への入り口を見つけないとは限らないからね】


しかし驚いたものだ。

地底領というのは噂では聞いていたし、実際にそれに関する資料があるのも知っていた。


でも現実は自分の想像を遥かに超える光景を僕にしかと見せてくれた。

感無量だ。


まるで宇宙空間のように広がるその景色は、僕の内側に潜む好奇心と微かな冒険心を幾らか満たしてくれた。


「広大な世界だ。

......しかし、この広い地底領からお前はどうやって出口を探す気なんだ、ドゥートス?」


【たしかに、ダラダラと時間を使っていては()()()()()()が起きた時に備えられない。


それが最悪の事態を引き起こすことも想定するべきことだ。

でも大丈夫、僕に考えがあるんだ】


「考え?」


【この地底領に詳しい人物をこの地底で探せばいいんだ。

幸いにも、一人だけその人物に心当たりがあってね】


「心当たり?

滅んだ文明に人なんているのか?」


【......かつて地底世界には秘密の書庫を守り抜いたという伝説の偶像神(ムーナス)がいるんだ】


偶像神(ムーナス)

なんだそれ?


【ムーナスっていうのは、この世界に存在する何らかの力を有した()()()()の通称だ。


神様の側面を切り取ったことから『側面神(ネイサー)』とも呼ばれていて、その多くが寿命や能力が人間や悪魔とは比にならないレベルで超越していると言われている】


つまり、その偶像神(ムーナス)ってのは人間や悪魔とは比べ物にならない化け物ということか?


【ま、能力的に言えばね?

基本、人間や悪魔が敵う存在じゃあない。


だからこそ、それらの神は崇拝と信仰の対象となり、大地や人を守ってきたんだよ】


なるほど、僕らが会うべき人が一体どのような存在なのかはこれで明らかになった。


けど、その会うべき相手って地底のどこにいるんだ?

こんな広い空間をくまなく探すなんて無理がある。


「一体、そのムーナスっていうのはどこにいる?

見当はついているか?」


【おおよそね。

ま、大体の地形は頭に入っているから大丈夫大丈夫。

心配無用だよ】


本当か?

ちょっと心配になってくるな、そう発言されると。


こんな広い地底空間の中でその人物を特定するなんてさ、情報ありきとはいえどなかなか手こずるのではないかとも思える。


【疑惑の目を向けずとも大丈夫だよ。

なにせ相手は地底神ルドガリアとの血縁者だ。


ただのムーナスとは訳が違う。

近くにいればその神気で一目瞭然だろうさ】


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