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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第〇章 赤き覚醒者
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第七話 緊急避難警報


【やはり、悪魔の森か.......】


悪魔の方はどこか苦虫を噛み潰したかのような表情でため息をつき、そっぽの壁を強く睨んでいる。


「この森がよほどの不都合なのか?

なぜそんなに不機嫌に首を傾ける?」


【君に僕の気持ちが分かるか......!

クソッ、勝手に精霊の町なんかに僕を連れ帰りやがって......!


一体誰の命令だ、あん???】


「まるでヤンキーみたいな言動だな」


【ヤンキーじゃない。

僕は有能な悪魔ドゥートスだ。

今は......太陽軍からのだっそ......待て、ルマはどこだ!?


あっ、いた!!!

無事か、ルマ!!!】


「リアクションが忙しいな。

とりあえず、ゆっくり腰を据えてワシと話をしないか?

太陽軍に指名手配されていた二人組。


『異能の怪物』ルマと悪魔ドゥートス。

君ら、どうして太陽軍なんかに追われたんじゃ?

答えてくれないかの」


【......なら、月霊軍についての情報を開示するのが先だ。

君らのことは概ね調べはついてるが、一応事実確認はしておきたい】


「開示してどうする?

こちらだって、まだ君らを完全に信用したわけじゃない。


助けた縁はあるが、まだまだ君ら悪魔のことを信用するに足りるソースが欠けている。


そんな状態で悪魔きみに打ち明けられるものはないよ、ドゥートス」


【......もし君が言っていることが真実だったとしよう。

信憑性がないとも言えない言葉ではある。

ただし、君の素性を僕は疑っている。


盾狂いのモンズ、君は一体何者だ?

なぜそれほどまでの強さを有している?】


「......強さ、ねえ。

面白いことを聞くのな?」


【.......強さには相応の理由が付きまとうものだよ。

もし、君の強さが説明のつかないものであった場合、その力の出どころを疑うのは自明の理だ。


僕は、君の本質を問うている】


「......力の出どころか。

原点でって意味なら、この盾とかそうかもな。

幼少期のワシは盾に憧れを持っておった。


盾と共に育ち、そして盾に命を救われた。

そういう意味ではワシの盾への愛は誰にも負けん。


誰にも負けないからこそ、これらの盾を誰よりも強く使いこなしたいっていう欲が出るんだ」


「分かるよ。

僕も戦いで負けたくないっていう想いを抱いて戦っている。


今、大事な家族を失ってるけど、武術を磨き極める上で愛は何よりも重要なのは知ってるんだ」


こんなことで愛を語り合うとは、我ながら気恥ずかしいもんだ。

だがこの少年......なかなか侮れん。


潜在的な闘気、鍛え抜かれた肉体、呼吸から細部の動きに至るまで、明らかに常人のそれではない。

むしろ優れた英雄を想起させるものだ。


【.......嘘はついてないな。

感情を見ていたが、嘘をつくタイプじゃあないみたいだな】


「......ああ。

ワシは嘘が苦手じゃ。

ははは!」


その後、ワシらは軽い雑談を踏まえながら様々な情報をやりとりした。


少年が有名な祭りの優勝者であること、悪魔は悪魔の森が退屈で人の世界にひっそりと忍びで過ごしていたこと、そして太陽軍がなぜ彼らを狙っているのかなど、有益な情報を聞き出すことができた。


「......なるほどのう。

君にそんな力があったとは。

悪魔ってのは、どいつもそんな力を持っているものか?」


【いや、今話した能力に関しては僕固有のものと考えていい。

おそらく、僕以外に使い手はいない。


太陽軍はそれを警戒し、僕を公に指名手配するなんてことをしたんだ。

まったく、迷惑極まりない連中だよ】


「ムーナスとか悪魔とかって、そういう固有の能力を持ってるから羨ましいよ。

僕もいずれそういうのと戦ってみたいのに、さ......」


【なら、悪魔と契約することだね。

悪魔ならお互いが承認すれば能力の獲得が行える。

もし機会があったなら、交渉してみるといい】


とりとめのない会話を交わし、穏やかな空気が流れる。

そんな時だった。

突如、悪魔の森にサイレンが鳴り響いたのは。


《《《緊急避難警報、緊急避難警報......!

悪魔の森に移住した人間の皆様は速やかに知恵の洞窟へ避難してください。


繰り返します。

緊急避難警報、緊急避難警報......!》》》


「なんだ、何が起きているんだ!?」


「太陽軍だァアアアアアア!!!!!

お前ら、荷物をまとめて早く逃げろ!!!」


【太陽軍!?

まさか、悪魔の森に侵攻するつもりなのか!?

不可侵条約はどうした!!!】


「まさか......あの時わざと見逃されていたのか!?

ワシの行き先に襲撃する口実を作るために......!!!」


「モンズ、それはどういう意味だ!?」


「太陽軍は悪魔の森と不可侵の条約を交わしているし、ワシら月霊軍の拠点をおそらく把握してなかった。


だからこそ、わざと泳がし、遠くから監視して襲撃する気だったんだ......!」


「じゃあ、僕らがこの森にいることは!?」


「おそらくバレている.......!

それどころか、一気に命を狙ってるぞ.......!」


【二人とも、僕の指示に従って!

霊陽神アメトスに許可は取った!


今から知恵の洞窟の更に地下、智慧の神窟(マウラーデ)に向かう!

モンズも早く来るんだ......!】


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