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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第〇章 赤き覚醒者
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第六話 皇位の悪魔の住まう森


小舟ボートを漕ぎ、およそ数時間が経過した頃、霧の領域を抜けワシは大きな陸地が広がっているのを目の当たりにしていた。


「......あともう少しじゃ。

耐えろよ、お前さんら!!!」


道中、得体の知れぬ悪寒のようなものが海の底からこちらを睨んでいるようにも思えたが、何とかそれらの領域を超えることに成功し、ワシは陸地に足を踏み入れていた。


「よし、森は目前じゃな。

また誘導してくれよ、悪魔の森......!」


ワシの声に呼応するかの如く、謎の橙色の人影が森の奥からこちらに近づいてくる。


ワシは思わず反射的に臨戦態勢をとったが、相手側からは敵意のようなものは感じられなかったため、構えていたぶきを背中に引っ掛けた。


【ご苦労だった。

あとは我々に任せろ】


「いや、その前に名を名乗れい。

お前さんらが信用できるかどうかはワシが判断することじゃ。


分かったらせめて名を名乗れい」


【......私は霊陽神アメトスの遣いのような者だ。

名はファラティーという】


「アメトス、ねえ......。

噂には聞いてるぜ。


数ある悪魔の中でも最高位に位置すると言われている、別名『皇位の悪魔』。


太陽軍と武人との戦いでは完全に傍観していたアンタらが、なぜここにきて頭を突っ込んでくる?

もしや、この同胞あくまの影響か?」


【我々はお礼がしたかっただけだ。

それに、その悪魔と少年は我々悪魔にとっては特別な客人に等しい者だ。


無論、それを助けてくれた君にも相応の報酬を与える所存だ】


「報酬ねえ。

一体、何をくれるというんだい?」


【悪魔の森からは一つ、『金霊の回復薬』を贈呈しよう。

怪我や病にも効く、特別な特効薬だ】


「金霊の回復薬?

ま、貰えるもんは貰ってはおくが、ワシは森には入れないのか?」


【途中までなら構わない。

一応、悪魔の森には一般の人間が踏み入ってもいい領域と踏み入ってはならない領域の二つがある。


しかし、馬鹿で愚かな人間はそれらのルールに則ることもなく、平気で不可侵の領域を踏み荒らす。


だから原則、この森に人間が侵入することは極力禁止しているんだ。


だが、もし君がルールを破らないというのなら、指示に従うのを条件に連れて行ってやってもいい】


「ああ、頼む!

ワシも悪魔の森には興味があるんじゃ!


初めての土地、未知の領域にはワクワクさせられるわい!」


ワシが担ぎ小舟で運んできた二人はファラティーの力により謎の球体に閉じ込められ、フワフワと宙を浮かぶ。


どうやらこの球体、謎の枠に閉じ込めて浮かせる能力が悪魔の森ならではの運搬手段らしいのだ。


ワシは一応怪我人もいるのだと注意をしようとはしたが、ファラティー曰く「これも治療の一環」とのことで、ワシは素直にその言葉を信じることにした。


そして......。


【着きましたよ、悪魔の森の中心『精霊の町』。

この先に彼らを連れ込むための、療養ベッドがあります】


「療養ベッド?

悪魔もベッドを使うのか?」


【これは人間用です。

悪魔には使いません。

では、早速彼らを連れて行きましょう】


人間用の療養ベッドに少年を寝かせ、溺れていた悪魔をファラティーとともに治療し回復させる。


しばらくすると悪魔の方は目を覚まし、そして二時間が経過した後に少年が全快の体で起き上がる。


先ほどまでに見られた全身の火傷跡が嘘のように消失し、綺麗さっぱり無くなっているのが見て分かる。

一体、悪魔の世界の医術はどうなっているんだ?


こんなの、見たことも聞いたこともないぞ......!


「......あれ?

ここどこ?」


「目覚めたようだな、少年......!」


意識を取り戻し辺りをキョロキョロと見回す少年と、先ほどから沈黙を貫く悪魔。

......あれ?


よくよく見ると、この二人どこかで見た気が.......?


「......あああッ!!!

この二人、どこかで見たと思ったら!!!

太陽軍に指名手配されてた二人じゃねえか!!!」


そうか、そういうことか......!!!

この二人、よりにもよって太陽軍が欲していた首だったのだな!?


道理で妙だと思った。

こんな海岸まで軍を率いてくるものだから変だとは思ってたんだ!


ってことはこの二人、もしかして太陽軍にとって致命的な何かを抱えているのでは?


それは、月霊軍われわれにとっては朗報にも等しい情報だぞ.......!

弱みであれなんであれ、聞き出さない手などない!


「なあ、目覚めて早々悪いが、ちょっと質問に答えてもらってもいいか?」


【......今は答えたくない】


僕が助けた悪魔の方はまるで不貞腐れているかのように口を紡ぐ。

あれ、なんか様子が変?


そしてもう一方はというと......。


「質問の前に、まずアンタは誰だ?

まさか、太陽軍の連中じゃねえよな?」


僕のことを疑いにかかっていた。

ま、見知らぬ者に介抱されていてはそうなるのも無理はないか。


「......ワシはモンズ。

月霊軍モドゥロガガンに所属する戦闘員だ。

そしてここは悪魔の森。


お前たちを助ける過程で、まあ成り行きでここに辿り着いたってわけよ......!」


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