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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第二章 悪夢の水滴
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第三十一話 変装の箱(推敲版)



《......話は分かった。

だが、目的は何だ?


なぜお前たちは太陽軍の敵になる?

我らに肩入れをする? その理由を聞いても?》


【......簡単な話さ。

現在、彼をはじめとする実力ある者たちがヘッドハンティングに遭っているんだ。


しかもそれを断れば、太陽軍の本軍に殺されるというオマケ付きでね。


僕はね、そんな奴らが世界を牛耳ることはあってはならないと考えてるんだ。


そして隣の彼も、武闘家と力を貸したいと意気込んでいる】


《......なるほど、契約者は武闘家か、ドゥートス》


【......そ。

僕らは今、利害が一致した関係にあるの。


だから、僕らは一人でも多く太陽軍を倒すための勢力を掻き集めたいんだ。

それが必ず勝利を手助けしてくれるから】


《......話は分かった。

ならば実績で示すがいい。


その代わり、我々は一切手出しはしないことをあらかじめ伝えておこう》


「......ボス!

正気ですかそれは!?


いくら何でも、彼ら二人に国家奪還を任せるなど......!」


《......いや、ここはけんに回るのが無難だ。

万が一、そこの二人が失敗したとしても我等は痛くも痒くもない。


もし本当にこの二人が国家奪還を果たした場合、それは我々にとっても大きな希望になるはずだ。

ならば、その手にならない道理はない》


「......しかし、本当にできるのですか!?

二人で国家を奪還など!!!」


《......できるさ。

もし本当にアメトスがその二人についてるならばな》


【......そういうことさ。

諦めな、デンローツ氏。

僕らは戦う以外にそれを証明する手立てがないんだ。


どんなに力を振り翳そうと、結果を残せない者に人はついてはこない。

僕らは結果を残すことが最重要の役目なんだ】


ーーーーー


僕とドゥートスは月霊軍モドゥロガガンと呼ばれる反太陽を掲げる組織のトップとの通話を終わらせる。


そしてデンローツに別れを告げようとしたその時、心配性のデンローツは僕らにとある提案を持ちかけていた。


「あの......これから本当に、国家奪還に向かうんですよね?


じゃあ、これ。私の武器、いくつか持っていってください」


「......これは?」


「護身用の『サイクリット式放電銃』です。


あと、街に行った時に洗脳毒にやられないための解毒薬数本、あと耐毒の塗り薬と、食糧......どうか役に立ててください」


「......本当にいいのか?

これ、値段だけでも結構するんじゃ?」


「餞別ですよ。

これは私からの気持ちです。


これからユメール奪還を開始するあなた方を手ぶらで行かせるなんてわけにはいきませんからね」


「......分かった。

ありがたく頂戴しよう。

助かった、デンローツ」


「いえいえ、こういう時は助け合いですから」


こうして僕はデンローツから護身用の魔導武器と解毒薬関連の薬をいくつか譲り受け、そしてユメールへと向かった。


《......よくやった、デンローツ。

まさかこれほどの朗報を持ち帰るとは》


「......ええ。

でも大丈夫でしょうか、彼らは。


相手はあの猛毒の魔女......一筋縄じゃいかない相手ですよ?」


《......それをどうにかするのが彼らの仕事さ。

さて、我らもうかうかしてられない。


次の作戦に備え、幹部たちに声をかけておこう。

お前もただちに、軍と合流を果たすのだ......!》


「.......はい!」


ユメール王国関所前、木陰に隠れ関所周辺を監視していた僕とドゥートスだったが、そこで奇妙な事実に気がついた。


「ドゥートス、あれ」


僕の指指す方角にあるもの、それは妙に虚な目をした二人の門番と、関所周辺から滲み出ていた紫色の霧のような謎の気体ガスだった。


【ああ、間違いない。

あの門番は洗脳毒を受けているんだ。

道理で生気を感じないわけだ】


「ああ、あの門番からは生きた気を感じない。

間違いなく、思考が奪われている」


シカニサ峠を越える途中、僕は太陽軍の兵士のことについてドゥートスから重大な事実を耳にしていた。


ーー


【【ねえ、ルマ。

ユメール王国に入る際に僕から伝えなくちゃいけないことがあるんだけど、構わないかな?】】


「「......? 

なんだ?」」


【【認識阻害についての話をしたのを覚えてる?

デンローツ氏の前で話したやつ。

あれね、太陽軍には通用しないみたいなんだ】】


「「......太陽軍に、通用しない?」」


【【ああ。


実は太陽軍の兵士にはね、『命の蝋燭』と呼ばれる()()()()()()()()()が体内に埋め込まれてるんだ。


それが何を隠そう、僕の認識阻害を無力化してしまうんだよ】】


「「......どうして、命の蝋燭が無力化を?」」


【【簡単な話だよ。

命の蝋燭には()()()()宿()()()()()


それが僕の認識阻害を無効化し、僕を可視化させる要因に繋がっているんだよ。


だから、僕の認識阻害は太陽軍には通用しない。

それを見越してさ、関所前まで来たらさ、()()をさせて欲しい。


僕のとっておきのものを用意するから】】


ーー


「なあ、ドゥートス。

お前が言っていた変装、今やるんだよな?」


【ああ。

出番だね、僕の】


ドゥートスは手のひらから墨色のエネルギーの球体を生み出すと、それを天に掲げ墨色のシャワーを僕らに浴びせた。


変装の箱(マディノ・ロツキオ)


墨色のエネルギーが全身にポツポツと降り注ぎ、虹色を彷彿とさせる様々な色合いが髪の毛の先端から足のつま先まで広がり行き届いていく。


そして僕らは貧相かつとても貧乏な汚い身なりの人間へと変身していた。


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