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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第二章 悪夢の水滴
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第三十話 月霊首領(推敲版)


「魔導商人の人、それはなんだ?」


月霊軍モドゥロガガンのトップと通話できる特別な受話器です。


本来人前では絶対に使わないのですが、あなた様の前なら信頼できる......!」


そしてデンローツの繋げた通話は思わぬ人物との縁を引き寄せた。


《......どうした、RD13?

予定よりかなり早い通話じゃないか?》


「......やあ、ボス。

今ね、思わぬ朗報を入手したんだ」


《......思わぬ朗報?

何の話だ?》


「......ボス。

これから話す内容を嘘と聞き流さず、真剣に聞いてくれ。

多分聞いてもすぐには信じられないと思うから」


《......信じられない?

話が見えないな。どういう意味だ?》


「......アメトスです!

九柱のアメトスと契約を交わした人物がアメトスの代理者とともに私に接触してきたのです!」


《......なんだと?》


「......ボス、これは朗報だ!

今すぐ他の幹部たちに伝えてくれ!


彼らと上手く盟約を交わせば、新勢力の風向きは一気に変わる!」


《......待て、RD13。

お前は今までで何度、その手の話で騙されてきた?


お前が言ってるそれを証明する物をまずは示すのが先じゃないか?》


「......ボス!

そんなことを言ってる場合では!!!」


《......こんな時だからこそだ。


冷静に考えろ。お前はたしかに武器開発の点においては天才的だ。その才能に我らは何度も窮地を助けられたことはある》


「......え......?」


《......だがな、事はそう単純じゃないんだよ。

たった一つのミスが、たった一匹の鼠の侵入が大事おおごとになる。


それが我らの成している仕事なのだ。

その情報が信憑性のあるかないか、それを精査する役目が我々にはある》


「......たしかに、そうだけど......」


《......忘れるな。

今のお前は昔のような無責任な立場ではない。


新勢力を引っ張る新たなる指導者の一人として、お前は尽力しなければならない立場だ。


なるべく冷静に、思慮深く行動することを心がけろ》


「......すまない、迂闊だった......」


デンローツは露骨にがっかりした顔をし肩を落とす。

それにしても、分かりやすく純粋な奴なんだろうな。


話を聞く限りよく騙されてたみたいだし、商人向けじゃないんじゃないか?


《......して、RD13。

お前の言っていたアメトスの契約者の件だが、一応話だけは聞いてやる。


必要なら代わってくれ。

本人から直接、話を伺いたい》


【......じゃあ僕が交代しましょう。

月霊軍モドゥロガガンのトップとは面識があると思いますので】


ドゥートスはそう述べた後にデンローツから受話器を受け取ると、そのままモドゥロガガンのトップとの通話に応じた。


【......やあ、久しぶり。

元気にしてたかい、反太陽の勢力王くん?】


《......お前が、アメトスの契約者か?》


【......いや、僕は代理者側さ。

それにしても、君の『新勢力』の予言は見事に的中したよね。覚えてるかい、僕に言った言葉を】


《......何の話だ?》


【......惚けなくてもいいよ。

僕は敵じゃないから。

しかし、今では勢力王か。立派になったね、君は】


《......お前、どこでその話を?》


【......自己紹介、しちゃおっか。

僕はアメトスの代理者を務める悪魔ドゥートスさ。

忘れたわけじゃないだろう、僕と君の日々を】


《......まさか、お前.......!》


【......今は別の契約者と共にいる。

僕も今、太陽軍からは追われる身だからね。


そして彼は僕が見込んだ新たなる希望だ。

そこで君に一つ取り引きを持ち掛けたい】


《......取り引き?》


【......現在、ユメール王国は太陽軍、それも猛毒の魔女イヴァイリオンの手によって悲惨な末路を迎えている。

ねえ、この国の顛末、僕らに任せてみない?】


《......顛末?》


【......そう、取り引き。

僕は現在ルマという少年とともに九つの国家の奪還を目指している。


そしてその協力者として九柱のアメトスの助力を得ることに成功している。

だからさ、ここは一つ僕らに任せて欲しい】


《......それは事実か?

あのアメトスの助力を得たなど、にわかには信じられん話だが......》


【......その証明はいずれするよ。

君だって、今の立場上、僕らの立ち位置を区分するための『根拠』と『実績』が欲しいはずだ。


そこで、君にとってメリットのある話を提示したい】


《......メリット?》


【......君にとっても旨味のある話になる。

そして僕らも君ら反太陽の勢力に一枚噛める。

どうだい、悪くない話だろ?】


《......それで、その提案とはなんだ?》


【......僕ら二人がユメールを奪還するまで待って欲しい】


《......待つ? それはつまり、戦うということか?》


【......君は今、少しでも多くの勢力と繋がりを持っておきたい立場のはずだ。


ただ、闇雲に誰でも彼でもと協定を結ぶようじゃ君らの組織に反発する者が必ず現れる。

そこで、君は僕らの実績を待ってはくれないか?】


《......つまり、何が言いたい?》


【......今、僕と彼は九柱のアメトスと契約を結んだという稀有な立場にある。


だが、そんな常識はずれな連中が実績もなしに君らと連携し始めるのは組織の人間からしてみればあまりにも不気味なことだ。


そこで、僕らは明確な実績を作り、『国家奪還を成し遂げた反太陽の新たなる勢力』としてのアピールをする。


そうすれば、協力関係になった時のわだかまりは消えてなくなる】


《......なるほど、我々の信用を勝ち得るため、あえて不気味な立ち位置から信頼できる勢力に変わるまで待って欲しいということか》


【......そういうこと。


僕らの常識から逸脱した立場というのは、裏を返せばそれに見合う実績があるだけでその印象を大きく塗り替えられるものになる。


だからこそ、今は単独での実績が欲しいんだよ】


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