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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第〇章 赤き覚醒者
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第三話 メリカーの導き


......夢を見ていた。

何か、とても重要そうな会話をしていた。

そんな夢を。


気のせい、だろうか......?


「イテテ......」


上体を起こす気力は回復している。

しかし、足が痺れて動かない。

目も少し掠れている。


目一杯に軋む体を動かし意識を取り戻していくと、僕はそこが見知らぬ洞窟のど真ん中であることに気づいた。


【......無事かい?

よかったよ、何とか無事に救い出せて】


「......アン、タは......?」


【私かい?

私は霊陽神アメトスが一角『メリカー』。

主に闇を司る能力を保持している】


「アメトスって、まさか最高位に位置する悪魔界の皇帝のこと?

僕のこと、助けてくれたの......?」


【助けた、とは言えないだろう。

それにしては君はあまりにも満身創痍な体だ。

さて、本題に入ろう。


我々アメトスは、とある人物の依頼で君と契約を交わすよう告げられている。

そこで我々は縁あって君と契約を交わすことにしたのだ】


「アメトスと、契約......!?

ゴホッ、ゴホッ......!!!」


【ああ、力みすぎないでくれ。

本調子ではない体では気が休まらないだろう。

だが、今はかなり危険な状況だ。


後でそれは話すが、まずは回復するがいい】


アメトスは謎の琥珀色の液体の入った瓶を生成、そして僕の口にその液体を魔法のように操り、口へと運んだ後に僕の上体を地面に倒し休ませる。


どうやらこの液体には意識を眠りへと引き戻す作用があるらしい。


その代わり、僕の肉体はみるみるうちに回復し、黄金色の輝きを放ちながら徐々にエネルギーで満ち溢れていくのが分かる。


この液体は、アメトスにしか作れない魔法の液体なのか?

僕は強い眠気に作用され再び目を瞑ると、アメトスは覚悟を決めた表情で僕をその場に置き去りにし宙に浮いた。


【今だけは存分に休んでおけ。

この後すぐに、現実がお前を叩きのめしにやってくるだろう。


その時、生き延びられるかどうかはお前にかかっている】


「......」


全身の赤い血が沸々と滾ってくる。

ああ、これは、知っている。

生の喜びだ。


生きる希望、戦える希望、そしてありったけの勇気が僕の心を満たしていく。

ああ、これだ。


これが、僕の望む感覚。

そう、これこそが、これ、こそが.......。


が、が.......ががががが。

が......が?


瞼を開く。

この上なくすっきりとした表情で僕は目を覚ます。

夢の中、空想の中では確かに僕は強くなってたはずだ。


淡く消えた、希望に満ち溢れていた世界。

あれ、現実って、どっちだっけ?


僕の視界には見覚えのある街や空が炎一色で埋め尽くされているように見えた。

あれ、ここは......ここは!?


「カイコリオ、大遊国......!?」


夢ではない本物げんじつの世界。


さっきまでうたた寝していたのが嘘であるかのように、僕は炎に見舞われ地獄と化した故郷の街並みを呆然と眺め、そしてふと我に返った。


「嘘だ、これが現実なんて......嘘だ、あり得ない!!!」


【寝ボケるな!!!

目の前のこれが本物だ!!!

理不尽な現実から目を逸らしてどうするんだ!!!】


その声を告げられて僕はハッキリと目を覚ます。

あれ?

隣にいるのは......誰だっけ?


墨色の靄を全身に覆った謎の影が、真横で僕を睨んでいる。

えっと、コイツはたしか......?

どこかで......?


【覚えてないか?

ともに悪魔の森へ逃げないかといった提案を......!】


「あっ......!

お、思い出した!

あの時の、顔が分からない悪魔......!」


【驚くのも無理はない。

君は半ば意識がトんだ状態で僕と行動を共にしていたのだ。

ここがどこだか、ちゃんと把握できてるか?】


「えっと、把握......できてないよ。

何が何だか......」


【......ここはチカニシ王国の沿岸だ。

海沿いの街が現在太陽軍に包囲されていて、じきにここにも追っ手がやってくる......!


分かるか、僕らに残された逃げ場はもはや一つしかないんだよ......!!!】


でも、なんだ......?

何か、大切なことを忘れてしまっている気がする。

なんだ、この胸に渦巻く悪寒は......?


何か、何かがプツンと壊されそうな、嫌な予感が拭えない......!


そんな時、僕が迷いを抱きその場に立ち竦んでいた時のことだった。

あの男は突如、僕の前に姿を現した。


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