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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第二章 悪夢の水滴
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第二十七話 同志探し(推敲版)


「ど、どうしたんです?

急にそっぽを向いて......せ、精神異常の方ですか?」


「商人なら言葉を選べよ.....いや、驚かせて悪かったけどよ......」


デンローツは僕の唐突な行動に思わず目を丸くする。

それもそうだ。


僕の行動は側から見れば奇行にしか見えないだろう。

まったく、ドゥートスめ......肝心なことを伝え忘れやがって......目の前の一般人にどう説明してやればいいんだ、お前のことは。


【......一応言っておくけど、今はまだ明かさないでね、僕のこと。本当に必要な時は僕から合図を出すから、彼にはきちんと誤魔化しといて】


誤魔化せって、なんつう無茶振りだよ......。

ただでさえ誤魔化したり嘘ついたりするのは苦手ってのに、勘弁してくれよ......。


「......あの、さっきからどうしたんですか?

一人でモゴモゴと......もしかして幻覚?」


「いえいえ! 滅相もない!

ちょっと変なことを思い出して、気が動転してしまったんですよ! それで、独り言を......」


「......そうですか。

そうですよね。

世の中にはそういう人もいますもんね」


おい、お前のせいで彼、凄い苦笑いを浮かべてるじゃないか......! 

やめろこの気まずい空気!


メチャクチャ話しにくいじゃないか!!!

お前のせいだぞ、このバカドゥートス!!!


【......なんかごめん】


「それで、僕はどうしたらそのユメール王国に入れるんですか?」


「ええ、あなたがユメールに入るにはですね......え、今なんと?」


「ん? ユメールに入るにはって.......」


僕の発言、それが地雷であったかの如く、デンローツは先程から見せていた笑顔から唐突に険しい表情に移り変わる。


えっ、何かまずいこと言っちゃったか、僕は?


「......正気ですか?

僕、遠回しにあなたに引き返せって、そう言いませんでしたっけ?」


「遠回しにっていうか、普通に促してましたけどね、引き返すことを提案するって」


「そこまで覚えているのなら、なぜ私に従わないのです?


今のユメールの惨状は悲惨なんですよ?

あなたが行ってもロクなことにはなりません」


「ほう、どうして?」


「あなたが年端もいかぬ一般人だからです。

だからこそ、あなたを見捨てるわけにはいかない......!」


デンローツは無謀な僕を見て決意を固めたのか、懐から謎の銃を取り出し、僕に向かって突きつけた。


「......なんのつもりだ、アンタ?」


「悪いことは言わない。

今からでも引き返すんだ。


あそこは、あなたのような人間が行く場所ではない......!」


「見られたら不都合な物でもあるのか、あの国には?」


「まさか。

私はただ、あなたを助けたいだけですよ。

命知らずの若者を正しく導くのも私の役割です」


「へえ、僕を止める気か?

やってみろ、やれるなら......!」


「その無謀が、あなたの命取りだ......!」


デンローツは手に持った銃の引き金を引く。

その瞬間、膨大な電気エネルギーが僕の目の前を迸っていく。


が、僕はこの銃撃を間一髪、横への歩法で見事に躱し、デンローツを強く睨みつけた。


「嘘、まさか避けられるなんて......!」


「アンタ、武術家を舐めてないかい?

その程度の銃撃、躱せない僕じゃない」


「まさか、その歳で名のある武術家の卵なのか、君?

でもね、上には上がいるものだよ。


きっとあなたも思い知るよ......太陽軍の怖さを!」


心配無用だ。

その恐怖はとっくの前に経験済みだからな。


立ち向かう勇気ハラは、もうすでに決めてある......!


デンローツはテンポ良く銃の引き金を引き、再び電気のエネルギーを放出する。


なるほど、引き金を引く時間の差異で放出される電気の形態を変える性質があるのか、この武器。


さっきは弾丸のような球体だったのに、今回は特大のレーザーみたいだ。


僕はデンローツの銃撃を物静かに分析しながら、再度電気エネルギーの回避を試みる。

すると......。


「なに?」


電気エネルギーの光線がまるで木の枝のように綺麗に空中で分岐し、まるで鳥籠のように僕を包囲する。


なるほど、まるで魔術師のような能力だ。

いや、もしくはこの武器の性能が特殊なのか?


「口先だけでは、現実は変えられないよ?」


「ならば、その現実を打ち破って見せよう......!」


僕は勢いよく目の前に流れ込む電気の激流に向かって全身全霊の拳を叩き入れる。


装填された拳(シトロカット)


冷静に突き出された拳は目前の電流に触れずとも遠隔で徐々に、蝕むように打ち壊していく。


これは空気の層を意図的に拳で弾いたからこそできる、対飛び道具用の防壁だ。


しかしこのように、面倒で厄介な飛び道具を出力次第で緩和したり、うまくいけば相殺・霧散させる機能も備わっていたりする。


そんな対飛び道具用の特殊な障害によって電気の銃撃を見事に打開されたデンローツの目は、びっくり仰天を通り越して僕を人間なのかと疑うような目で見つめていた。


「嘘じゃん、これ打開しちゃうの!?

今までこの銃に対応できた武術家なんていなかったのに!」


「この程度の攻撃を?

舐められたものだ。本物の武術家は、この程度でくたばりはしないぞ......!」


「じゃあ君は、本物なのかな?

なぜ、ユメール王国に行くのか尋ねても?」


「僕にしかできないことがあるからだ。

太陽軍打破は僕ととある仲間たちとの悲願であり使命なんだ。


多くの人を救うためには、僕が世界を変えるしかないんだ......!」


「まったく、志は同じってことだね。

でも、生き急ぎすぎ。君はもっと、他の誰かの手を借りるべきなんだ」


「他の? 例えば?」


「例えば......僕の所属している反太陽組織とか?」


「は? 反太陽?」


「ねえ、君さ、僕らの組織に来てみない?

君のような志を持つ人を僕らはずっと探してるんだ」


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