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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第一章 地獄の花園
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第二十話 技の応酬(推敲版)


「最後だ。

覚悟を決めろ、小僧。

お前とは剣で決着をつけたい」


「......」


空気石化(シジドヤーウェ)!」


石の剣王は真上に向けて手のひらをかざし、空気中から大量の石飛礫を生成する。


「空中に石......?

まさか、そんなことまで......!」


「空気を石に変えたのさ。

さあ、受けてみろ、この石球を......!」


石の剣王の真上には、みるみる大きくなる石の球体が完成していく。


大きさにして僕の身長の三倍はありそうな規模(デカさ)だ。


神王石球(ザカルマ・ダキ)!」


石の剣王の真上に生まれた石球が僕めがけて放たれる。


常人なら立ち向かうのを躊躇ってしまうような能力だ。


しかし、僕は逃げない。

立ち向かう、理由がある。

コイツを、好きにさせないためだ......!


ーーー


「「装填された拳(シトロカット)!」」


「「装填された脚(シドロキッター)」」


「「ぐぁ!?」」


僕が師匠と出会った時、それは齢八歳くらいの時だっただろうか。


ボロボロになって道端に捨てられていたところを師匠に拾われたのがきっかけだった。


その後、僕は師匠にありとあらゆる戦いの術を教わり、基礎基本を徹底して叩き込まれたのを覚えている。


「「まだまだ基礎が甘い。ちゃんと言われた通り鍛えたんだろうな?」」


「「うっ、ううう......もう嫌だ、キツイよ.......」」


「「泣き言を言うな!

お前、自分がどれだけ恵まれてるのかわかっててそれを言ってるのか?


 あの時、俺がお前を助けなければお前は死んでたんだ! 


それに、お前は自分が気弱だから強くなりたいって泣きついてきたんじゃないのか?


だったら最後までやり通せ! 

不言実行、自分の信念を曲げず、最後までやり切るんだ!」」


「「ううう......はい.......」」


最後まで、やり切る......。

そうか、忘れていた!


僕はなぜこれを忘れていたんだ?

師匠とのやりとり、徹底された基礎基本の重要性を......!


そうだ、僕はまだやり切っていない!

やり切ってそれで全てが終わるんだ!

それをやり遂げるまで、僕は止まれない......!


ーーー


石球は僕を押し潰そうと凄まじい回転と速さで僕の目の前まで迫ってくる。


だが、僕の()()()こんなものに遅れを取らないぞ。


「どうした、ボーっとしてる暇はないんじゃねえか!!!」


「してないよ。

覚悟を、決めただけだ......」


僕は目から飛び出る鋭利な殺気の力を右腕にこめる。

右腕にこめられた殺意の拳は、やがて拳の威力を一点に集中させ対象を穿つ。


殺意の拳(シンド・ローデル)


目の前の石球めがけて僕は渾身の殺意のこもった拳を打ちつける。


途端、石球は一点から歪みが生まれ、そして全体に力が拡散される。


僕の勝ちだ。

僕はそう確信し石球の歪みめがけて真っ直ぐに走り出す。


途中、石球はパカリと真っ二つに分断され、僕の目の前には追加の石球を用意していた石の剣王が見える状態になっている。


僕はその真っ二つに分断された割れ目に飛び込み、そして石の剣王の正面に現れた。


「剣王ぉおおおおおおお!!!!!」


針礫(シトックル)!!!」


石の剣王は石化した空気の針を無数に生み出し、まるでマシンガンのように射出する。

が、僕は傷まみれでも止まることなく突き進む。


「正気か?

捨て身などただの愚策だぞ!」


石の剣王は右手に装備した剣を振り回し僕を間合いに入らせないよう仕向ける。

が......。


ここが勝負所と見た僕は、石の剣王の剣を見切り、拳を武器に突きつけた。


武器崩し(ジーテ・ネール)!」


飛び散る金属の片鱗、そして目を丸くする石の剣王。

僕はすかさず石の剣王の懐に飛び込み、そして渾身の拳をお見舞いした。


剣士殺し(ルード・ムヌー)!!!」


「ガハッ......!!!」


石の剣王は僕の右拳を喰らってもなおふらふらとよろめき、僕を睨みつける。

もう一歩だ、あと一撃を喰らわせろ......!


「負けたよ」


石の剣王はニヤリと笑う。

その純真な笑みに僕は惑わされることなく、石化した左拳をお見舞いした。


装填された拳(シトロカット)石の拳(ロッグ)!」


暗殺拳の如く的確かつピンポイントにヒットした僕の左拳は石の剣王を地面は叩きつけノックアウトする。


呼吸が荒くなり、全身に疲労感が広がると、自身の石化した左腕が消失していることに僕は気がつく。


やむを得ない。

これが最適解だったのだ。


これから先、腕を無くしたまま進むのは手痛いがそれでもこれまで僕を支えてくれた左手には感謝したい。


「ありがとう......!」


僕は失った左腕を押さえその場に座り込む。

ああ、いよいよ力尽きそうだ。


ただでさえ空腹で頭がイカれそうだったのに、本気の戦闘をしてしまったせいでもはや後がなくなってしまっている。


やはりあの時逃げ出すべきだっただろうか。

そう、僕が微かな意識で思考を巡らせていた時、彼女は唐突に僕の前に現れた。


「はっはっは。

かなり無茶をしたみたいだね、ルマ」


「.......?」


朦朧とした意識の中、僕の名を呼ぶ声が頭に響く。

誰だ.....? 女性?

長髪で......黄金の瞳......一体、誰.......。


「おっと、女神様が今助けてやるからな。

意識をしっかり保て!

空腹なんだろ?」


「......」


「チッ、ダメか。困ったなー。

せっかく綺麗なお姉さんが助けにきたっていうのに、気ぃ失っちゃった。


うん、どうしよ。力づくで起こすか!」


「......」


「うん、やっぱ可哀想。

こういう時は、えーと......そうだ!


そう、これこれ〜!

よかったわね、ルマ。

あなた、運が良いみたいよ?」


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