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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第一章 地獄の花園
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第十二話 神窟の異変(推敲版)


ルドガリア地底領が滅びた?

つまり、その時にルドガリア地底領から国が消えたってことなのか?


「......驚いた。

それはつまり、たった一人の男が原因で国が滅んだという解釈でいいのか?」


【その通りだよ。

一説には『心に傷を負った闇の力を持つ悪魔』が暴走したそうなんだ。


それを何千何万年もの年月を生きた男スター・タリズマンが止めた】


スター・タリズマン......?

誰だそれ?


【今君が見ている風景、それはかつてのルドガリア文明の名残だよ。

それもつい最近まで、この文明は活動していたんだ】


......驚いた。

まさか、国の滅亡に悪魔が絡んでいるなんてな。


「なあ、その悪魔って今はどうなってる?

そのまま放置したらヤベェのは目に見えてわかってる相手なんだろ? 


それなら、この地底領も危険区域の仲間入りだ。

大丈夫なのか?」


【ああ、それなら心配いらないよ。

現在、その悪魔というのは封印されてるんだ。


他ならぬスター・タリズマンの手によってね。

ただ、その悪魔の力は想像を遥かに超えるほどに強いらしい。


無論、悪魔の僕でも迂闊に近寄れないとか。

注意するに越したことはないよ】


うーん......なんだかまた物騒な地域に足を踏み入れてしまった気がするな......。

だが今はやむを得ん。


その悪魔とやらに呑まれなければいいんだろう?

やるべきことはシンプルだ。

よし、向かおう。


やるべきことがはっきりしてる分、僕は前に進めるからね!


ーーーーー


マドノワ広場から続くルドガリア地帝国を代表する公道『マズミ公道』に足を踏み入れた僕は、途中湯気の湧き出す温泉街のような場所を訪れていた。


「あちこちに間欠泉が見えるな。

それに周囲の瓦礫の様子から見ても、温泉が普及していた痕跡があるように思える」


【よく気づいたね。

ここは『オーダの温泉郷』と呼ばれる温泉街に続く道だよ。


この辺りは地底の活火山がいっぱいあるから、それに比例して温泉も多かったんだよ】


「温泉街か......これだけの規模感のある街が滅んだんだよな?


悲しい話だ。

僕なら絶対にこんな街を失いたくはない」


【そうだね。

悪魔にとってもこの地の源泉はかけがえのないものだ。


だからこそ、これを滅ぼしたアイツは許してはならない存在なんだ】


アイツ......? アイツって?


「アイツって、誰だ......?」


【アイツはアイツだよ。

こっちの話だから、気にしないで。


それより、せっかくの機会だから温泉に浸かっていかないかい?】


え、温泉に?

逃げるんじゃなかったのか?

一体、どういう風の吹き回しなんだ?


【温泉には疲労回復や気力向上の効果がある。

今、クタクタで疲れきった君を回復させるのにうってつけだ】


「なるほど」


僕は逃亡で溜め込んだ疲労を回復するため、少しの間だけ温泉に浸かることを決めた。


オーダの温泉郷の手前側には間欠泉から湧き出した温泉の支流がいくつも流れており、それらの支流を跨ぐように作られた木製の橋を僕は踏み越えていく。


僕はドゥートスの案内で見晴らしの悪い残骸まみれの温泉に辿り着くと、服を脱ぎ上裸で温泉に肩を浸した。


景色の方は皮肉にも良いとは言えなかったが、温泉に浸かると長きに渡る逃亡劇が嘘かのように疲れが湯とともに流れていくのがわかる。


力が抜け、全身の血行が良くなったかと思うと、僕は突如空腹という名の悪魔に襲われた。


「うおっ!」


全身のリラックスが緊張の糸を弛緩させる。

そして僕は疲労回復と引き換えに大きなデメリットを背負うことになった。


「腹が、減った.......」


僕は空腹の苦難、もとい試練を課せられ温泉郷を後にした。


ーーーーー


知恵の洞窟最深部、智慧の神窟(マウラーデ)


「ガンナット様!

例の男、やはり洞窟内にもいないようで」


「......ならば死に物狂いで探せ。

オレの癇癪が始まる前に」


「はっ!」


「......しかし、前代未聞だな。

我々が攻め入ること自体、本来ならイレギュラーなこと。


だが霊陽神(アメトス)が一人としていないのはどういうことだ?

敵前逃亡......とは考えられまい」


「やはり妙ですよね?

現地の悪魔もアメトスの動向を知ってる者が一人もいませんでしたし」


「もしくは、口止めされているか、だ。

アメトスめ、我々の戦力をどこかで嗅ぎつけたのか?


この結界透過装置の存在が知れ渡っていた可能性さえある。


だが、実に残念だよ。

所詮、伝説は伝説だったのだ」


「あの男の捜索はいかがいたしますか?

洞窟内に姿が見当たらない以上、すでに我々の目を掻い潜った可能性も」


「馬鹿を言うな。

無論、続行だ。


悪魔の森は我々太陽軍が監視している。

必ず近くにいるだろう」


「はっ!」


「......我々の地位を脅かす武人たち。

奴らを一人残らず殺すのだ。


そうでなければ、全ての芽を摘むことなどできやしない」


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