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失敗作Ⅰ  作者: 一鸞一
第一章 地獄の花園
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第十一話 三つの民族(推敲版)


僕が目の当たりにした壁、僕が心に受けた傷跡は決して消えない。


だが、ドゥートスの言葉にはどこか僕の内側を見透かすかのような、そんな不思議な説得力があるように思えた。


「......次は立ち向かう。

僕はもう、アイツらからは逃げない。

戦うのは、もう随分前から決めていることだ」


【救うべき道が見えたんだね?

なら、僕はそのサポートに徹するとしよう。

君ならきっとやり遂げられるよ】


こうして、僕らは同じ標的を定める同志としての結束を強固にする。


そうだ、僕らは戦うためにここにいるのを忘れちゃダメなんだ......!


ここでのらりくらりなんてできない!

迷えば、僕は多くを失うだろう。

不言実行だ......!


多くの障壁、太陽軍(トラウマ)を乗り越えるんだ......!


ーーーーー


太陽の王、それは地上の席巻を目論む太陽軍の総帥。

とある国を丸々裏から牛耳っており、実質的な国王の座を築き計画を一つ一つ進めている。


「太陽の王......それが、僕らの最終目標なんだね?」


【そうだよ、彼は古代からいる偶像神(ムーナス)と呼ばれる存在だ。


その力は強大で、現状彼を止められる勢力も数少ないという】


「太陽の王を止められる勢力......!

話には聞いていたが、やはり世界は広いな。


まさか、僕でも手も足も出なかった奴らを止められるのがいるなんて」


しかし、太陽の王か。

太陽軍という世界最高峰の兵力を率いる怪物。

そして僕らの今後の最終目標。


これからはそれを念頭に置いた上で、しっかりと対策を立てないといけないな。


その男を確実に葬るために......。


僕はドゥートスに質問を投げかけようとしたが、咄嗟にやめた。


なんだか無意味な質問をドゥートスにしてしまう気がして。


ドゥートスはそんな僕の裏向きの気持ちを汲み取ったのか、何も言わず無言で先へと進んでくれた。


古代の文字で表記された看板があるが、僕はふとそれを読むことができるのに気づいた。


「マドノワ広場......? これ、古の文献に書かれてる文字だよな?


なんで僕なんかが読めるようになってるんだ?

今まで一つとして読めなかったのに」


【それは僕の契約が君の体に影響を及ぼしているからだよ。


きっと古代文字と僕の生い立ちに縁があるから、それで必然的に情報が翻訳されちゃうんだろうね。


君はある意味、僕との契約で古代文字の読解が可能になったといえるよ】


へぇ、そんな便利な機能があったのか?

知らなかった。


っていうか、そういうのは前もって言ってくれよ。

いざという時、困惑するだろ!


【ここマドノワ広場は多くの商人が行き来していた場所だ。


この地底空間でしか取れない特別な鉱石や幽灯石などの材質を運び出し、地上の文明の発展に大きく貢献した。


そんな交易の中心地だったからこそ、この広場は長い間賑わいを見せていたそうだ】


「流石悪魔だな。

どんなことにも博識で慧眼を持てるのは、やはり悪魔らしい」


【君は、この世界に三つの民族があるのをご存知かな?】


......うん?

突然どうした、お前?

三つの民族?


「.......?」


【せっかくだから、この機会に民族のことについて話しておこう。ちょうど、僕は君からそれなりの情報を対価として貰ってるわけだしね。


ほら、契約の件でさ】


......たしかに、契約で記憶を対価にしてるみたいなことを言ってたような気もする。


でも知識のおさらいって、今必要か?


「それ、重要?」


【重要だよ。

これから先、君が戦う相手の基本情報が傾向としてわかるんだよ? 


場合によっては選局だって変えられるような情報だ。

そんな情報を見過ごすなんて、歴戦の武術家の君らしくないね】


「......たしかに、民族の基本知識は必要か。

要は三つの種族の特徴だよな?

なら、なるべく簡潔にそれらについて教えてくれ」


こうして僕は三つの民族に関する基礎知識をドゥートスから聞き出した。


【さて、まずは基礎知識だ。

この世界に住む民には三つのルーツがある。

それが何かわかるかい?」


「三つのルーツ?

わからん!」


【正解はこれらの三つだ。

メヌギス、ローヌ、ルドガリア。


世間一般では俗に『メヌギス系』『ローヌ系』『ルドガリア系』と呼ばれる】


「......ルドガリア!? 

ここでもその名前が出てくるのか!?」


【ああ、それら三つの民族には特徴があって、種族の特性に応じて特別な能力があるんだ】


「特別な能力? 

といいますと?」


【まずはメヌギス系。

神球と呼ばれる神気の宿った球体を生成し応用する力を持つ。


それらの民族の総称を人呼んで『世界民(セカイタミ)』と称する】


「セカイタミ!

聞いたことあるぞ!」


【他にも、ローヌ系、ルドガリア系にも名称は存在している。


ローヌ系は魔呪(まじゅ)と呼ばれる暗黒エネルギーを操る『亜民(アノタミ)』、ルドガリア系は契約の力を持つ『遊民(アソビノタミ)』と呼ばれる】


「そっか、亜民とかの民族ってそういう基準で分けられていたのか......!

普通に初めて知った!」


【世界はこれら三つの民族を基本として成り立ち、大まかに区分されている。


ま、今では混血も多くなって、民族の境目自体が曖昧になりつつはあるんだけどね】


三民族の特徴か......。

あれ、待てよ?

そういえば僕って何系なんだ?


三つの民族って言ってるけど、僕が何らかの民族に属してるのなら、そのどれかの能力が使えてもいいはずじゃないか?


そういえば使えた試しがないというか、使った記憶がまるでない。


なぜだ?

.......。


僕はふと辺りを見渡す。

マドノワ広場で休息を取り終えた僕はドゥートスの後に続き広場を後にする。


が、そこで妙なことに気づく。


「......妙だな。

さっきは暗くて見えなかったが、これって建物の瓦礫だろ?


まるで荒廃しているみたいな酷い惨状だな」


【当たり前だよ。

ここは戦争の跡地なんだから】


戦争の? 

一体どういうことだ?


「戦争の跡地って、一体何が争ってたんだよ?」


【邪の王さ。


邪の王という強大な力を持つ者を封印することと引き換えに、このルドガリア地底領の文明は滅びたんだよ】


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