第一話 赤き戦士、それが彼の異名
絶望。
それは希望を織りなす心の仕組みが理不尽な現実に直面して初めて起こるもの。
命あるものに希望は宿り、また他者の時間を蝕む者に絶望は宿る。
そんな繰り返しの歴史を淡々と繰り返して来た僕ら人類は、神の時代から君臨する神『偶像神』の支配下で自らの身を守る殺伐とした時代を生き延びていく。
が、その時代の行く末は新たなる魔の出没により途絶えることとなる。
ーーー
悪魔の森。
それは罪を犯し追放された悪魔が集まり、新たなる聖地として築き上げられた特別な神域。
罪を犯し、この世に戦乱を引き起こした彼らの祖先は、追放されたことでことの重大さを初めて認知する。
そしてそれらの罪を贖うべく、善行に善行を重ね、世間からの信用を回復した後、雲隠れをする。
そんな謎めいた存在が多く住まう森である。
彼らは人々と手を取り新たなる安寧を築き穏和な国をもたらす、はずだった......。
太陽と呼ばれる新星の旗を掲げる、新たなる指導者が現れるまでは。
男はこの世に十つある主要国を次々と牛耳、そして実質的な政権を我が物にする。
大陸の資源の大半を己の懐に収め、太陽兵に与しない者たちは容赦なく虐待し、その全てを奪う。
その惨状に酷い不快感を露わにした武人たちは、武の誇りから結束すると、太陽国の王テナウドリストに一斉に宣戦布告。
後に武人蜂起と呼ばれる大騒動にまで発展し、次第に各地の武人と太陽軍の対立はみるみる深まると、次第に歴史をかけた巨大な戦いが勃発。
人々はこれを『太陽戦争』と呼び、勝ったのは太陽の王率いる太陽軍の面々であった。
太陽軍はこの戦いにより実質的な絶対支配者となり、そして表立って武人らの捕縛と公開処刑の実施を開始。
それらの政策に民間は震え上がるも、そんな中一人の希望となる人物が民を救うべく勇気をもって立ち向かっていた。
人々は絶望にうちひしがれた。
各地で英雄と呼ばれ、高い実力と人気を有していた彼ら武人が完膚なきまでの敗北を喫したからだ。
人々はもうこの先に希望を見出せなかった。
勝てるわけのない敵、相手。
そんなヤツを相手にどう抗うのか、反論するのか。
頼みの綱となる武人ら『英雄』はその多くが処刑された。
もう、絶望を抱く他にない。
そう、誰もが諦め始めていた時、その男は急遽力に目覚めた。
ーーー
赤き戦士。
それが彼の異名だ。
かつては武人の卵として、数々の英雄たちと拳を交え、そして己の技量を磨き、基礎を積み上げてきた。
そして彼は近い将来、名のある武人になると師匠から太鼓判を押され、彼はそれを信じていた。
そんな彼の夢は突如として終わりを迎えた。
太陽の王の君臨、武人勢力の敗北。
そして敬愛する師匠の処刑。
数々の出来事が彼の心を打った。
どうして自分は弱いのか?
どうして自分は戦わないんだ?
どうして、僕は大切な人のために怒れない?
首を刎ねられた師匠の断末魔が僕の耳に届く。
「嫌だ、嫌だァアアアアアア!!!!!」
全てがトラウマだ。
この世の全て、不条理の全てを憎み、呪った。
だが、そんなことをしても現実は変わらなかった。
誰も、変わりはしなかった。
全ては希望から恐怖に塗り替えられていたから。
僕は、変わる決意をした。
太陽兵、そして太陽の王テナウドリストを討つためにできることをやると。
どんなに苦しい結果になろうとも、人々の笑顔を取り戻すために戦うと。
彼は、特別な使命をその身に帯びた。
そして、現在、悪魔の森。
人々(よわき)を助け、虐殺者を挫く。
そんな叛逆同然のことを行い、無論僕は目をつけられた。
太陽軍に指名手配までされ、もはや打つ手の無い状況。
そんな時に、アイツと出会った。
影の悪魔ドゥートスだ。
ドゥートスは僕を太陽軍から助け出し、そして匿ってくれた。
そしてヤツは僕にこう告げた。
【僕と一緒に悪魔の森に逃げないかい?
命が惜しけりゃ、今は中立の悪魔の森に逃げ込むべきだよ】
僕は彼の言葉に従った。
最善のルートを選び、カイコリオ大遊国からチカニシ王国、そして気づけば海を越え、例の森に辿り着いていた。
カクヨムにて連載中。