死神って言ったってスベったりアホになったりしない訳じゃない。
「…え?」
一言だけで状況説明しよう、スベった。
「ねえ…イツキくん?頭おかしいのかな?」
「ちゃんとやるとは言ってない」
「…そんな態度だから地獄に落ちんだよ」
俺、割と引いてるよ?コイツ、白を切りやがって。俺の恥ずかしさ、貴様にわかるまいなクソ野郎が。
「あ〜…………ありがとう、紫の髪の毛の人」
え?めっちゃ困ってそうな顔で目逸らされながらお礼言われたんですけど。酷くない?もうちょっとだけ労って?
「えっと、じゃあ、始めるね」
始めるねの「る」くらいの時点で雨が激しくなり、言い終わる頃には何も聞こえない土砂降りとなった。
「トウマあれ張り直せ!」
「【ペケプラス十文字・バリアアンブレラ】!!」
「…さっきはごめん。どうしても恥ずくて」
「今それじゃない!」
「俺が雨の種類を見て言うから、トウマはそれに応じてバリア変えたり張り直したりして。残りはこっちだ」
「こっち?」
(思念伝達に決まってんだろ。聞こえるかもだから)
あ、それ思念伝達って言うのね。俺は念話派だけど、この際伝わればなんでもいい。
(転移したり、飛んだり、なんでも良いから魔法と天青術を使って距離を詰める。いろんな種類のやつを使いまくって、あっちが対策してきたあたりで、魔法少女の靴。一気に加速して意表を突き、紐を奪う。これでどうだ?)
(うーん。最初の作戦としては上々だと思う。多分いける。頑張る…って、加速機能が作動しないとか言ってなかった?)
(直したわバーカ)
「おし!いくぞ!まだお酢か?」
「まだお酢!…これも使え!」
イツキが取り出したのは、クリエイトパレット、そして、薄い本。誓って寝取られ本ではないだろうが、同人誌味がある表紙だ。下手な絵とともに「いろんなバリア〜超初歩的な術からマニアックまで〜」とある。有難いが、ひとつ聞きたい。
「これ、お前が出した同人誌だろ?」
「………エッ?」
イツキはこれでバレないと思ったのだろうか。ペンネーム、「ブドウキライ」だぞ?絵のセンス低めなんだぞ?格式高そうな気取った本好んで読んでるのに、これなんだぞ?お前しかいねえだろ。作者がお前ってだけで心配度爆上がりだよ。
ただ、イツキは発明面、作戦面が時々おバカなだけで、暗記して再現するならモーマンタイだろう。多分。だから、使わせてもらわない手はない。
「えーなになに?【そもそもバリアとはなんだろうか。子どもの戯れから始まり、現閻魔大王の奥義に終わり、生涯、離れることのないこの魔法とは、なんだろうか。筆者は、このバリア、防御魔法と呼ばれる…】」
「早くページをめくれ!!!!」
おし、イツキの愉快な反応も見たことだし、気合い入れてきますか!
「おい!普通の雨になった!」
「えーっと…【貯水】!」
「初手バリアじゃないのいく?!」
「載せたのお前だろ」
バリアとはちょっと違うけど近い技、貯水。言葉としては水をためておく池、モンスターを使役し四つの技で戦うゲームの強力特性…いろいろあるが、この場合は「一時的に水の攻撃を己の魔力に変換できるようになる技」のことである。ゲームの特性に近いか。
「次来るぞ!槍!」
「スパン短すぎん?!しかも槍?!えーっと…これだ!【パンクシールド】!」
張ったのはギラギラのパリピオーラを放つバリア。無数のスパンコールが衝撃を緩和してくれるらしく、物理攻撃に有用そうだ。
それにしても、本を見ただけで新魔法を使えるようになるとは、俺も成長したのだろうか。
「残念。それ、全部に補助ついてるぜ」
補助。つまり、軽くイメージして魔力を出すだけである程度の完成度を保つことができるようになるサービス魔法。子供向けの本などによくついている機能である。
ついでに、心を読まれて癪である。はぁ…まぢ病む…
「おい!!!」
「え?ん?なに?」
「毒来てるって!」
「うわぁぁぁぁぁあっ!!!」
こんなことを繰り返すこと、体感一時間。ついに二人してしびれを切らした。
「もっと早く雨防げや!」
「雨の種類言うだけじゃサポート未満だよ!」
「「…」」
睨み合いの結果、ひとまず行動を起こし追いかけるべく、ファースト転移する流れとなった。
「【影転移】」
俺とイツキは、センカの後ろを取ることに成功した…が。
「あわわわわっ…」
「「あっ」」
秒で逃がしてしまった。
ーーーーーーーーーーーーー
「さあ作戦会議をするよ!」
「うるさいよ!」
ミノとミライはいつも通りだ。ミノが雨に対する文句を言っている間に、ミライは淡々と作戦を述べていった。
「いい?まずは、ミノちゃんがとにかくアイツを追っかける。追いかけまくって、逃げさせて、一瞬でも混乱させたら、ミライが撃ち抜く。ぶっ倒して、紐を取る!」
「この雨しつけえな…でもって酸っぱいな。…え?なんだって?」
「だーかーらーーー!」
ミライが再度説明をすると、ミノは首を傾げた。
「脳筋プレイすぎやしないか?」
「うちらにはピッタリでしょ」
「いや、これ、逆の方が良い」
「は?」
「貴様はあのよくわならん羽衣でふわふわ飛んで、水鉄砲で翻弄して、隙を作る。そしたら私が全速力で走るか転移するかで行って、手刀一発。紐を取る。完璧じゃない?」
「…悪くない」
脳筋プレイなことに何も変わりはないが、所詮実技ゴリ押しと合格点スレスレの頭だ。上等である。
「さあ行けミライ!」
「指図するな!」
こうして、また一つ、ヘンテコ作戦ができた。
ーーーーーーーーーーーーー
「こういうのは、頭を使おうと思ったら負けなの。単純明快、鬼ごっこ脳でいきましょ」
「お、鬼ごっこ脳?具体的には?」
「アスカはどうにかして私をセンカに近付ける。私は自分ごと防御を展開して、センカを捕まえる。鎖でタブル確保、紐を取る、クリア」
「あんまりにも特攻じゃない?鬼ごっことは?」
「じゃあアスカだったらどうするの?」
「うーん…あ、幻術をかけて、紐を渡せって命令を聞かせちゃうとか!」
「…すごく単純ね」
アスカとツヅリも行き詰まっていた。変な作戦ばかり思いついてしまう。
と、ここで、ケーキの迷言を思い出した。突拍子も無いピンチに即興や賭けで立ち向かえるようになった、だから強くなれた、とか言ってた気がした二人は、頷いた。
「「全部やろう!」」
しかし、ククク…やつは四天王の中でも最弱…どころではない。やつは七天王の中で最弱なのだ。その言葉を真に受けた作戦で四番目に太刀打ちできるかは謎であった。




