死神って言ったって戸惑いを隠せないことがない訳じゃない。
なんだかんだイツキも青明力を習得し、割とハイペースで第五ステージへ到達。そして俺達は…
「ねえもうイヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「落!ち!着!い!て!」
「こないでえっ!」
「グハッ!!」
えっとね。構図としては、俺が白髪の美女にぶん殴られて、飛ばされてる。そして雲にぽーんって落ちる。痛くはない。
「あなたの慰めは愛がないの!」
「あなたと接点何にもないの!」
さて、こういうのが上手い人、はよ来い。
「アスカ!いける?」
「うええ、やってみるけど…」
あの愛想の良さならいけるっしょと思ったのだが…
「あなたの愛は上辺だけ!人に優しく見られるための愛は愛じゃないの!」
「…はぁ?」
割と苛立ちのこもった「はぁ?」が出て終わった。しっかし上辺だけとは可哀想だ。
その後も…
「あなたは目的のために私を慰めてるのでしょう?それは愛じゃないの!」
「い、いや、まあ、そうだけど…」
ツヅリ、撃沈。
「あなたは論外!なんで拳を構えるの!愛と暴力は真逆よ!」
「タシカニ、?」
ミノ、当然の却下。
「めんどくさそうに慰められても愛なんて感じる訳無いでしょ?!」
「うぐっ…」
イツキ、愛がなくて失敗。
「あなたは私ではなく、私を慰める自分を愛してるの!」
「その通り!さっさと泣き止め!」
ミライ、前回の成功要因が今回の失敗要因に。
そんなこんなで、愛がなんだとずーっとポエムってるこの女性こそ、海瑠璃が第五席、シラマロである。聞くと、その愛の力はどんな術にも勝るときがあるというのだが…
それって、魔法少女じゃね?魔法少女ってこんなうるさい奴か?
「誰も私に真の愛を差し出してはくれないのね?!もういい!始めるよ!」
シラマロはいきなりブチギレ、いきなり訓練を始めた。のだが。
『友達が泣いているとき、あなたは助けてあげますか?理由を含めて書きなさい』
『争いのない世界は実現可能ですか?何が必要かを踏まえて書きなさい』
『ヒーローとは何ですか?簡単に答えなさい』
道徳の授業かな?この答えのなさそうな哲学感、道徳だね?しかもここで筆記テスト!
結果ヒーローぶった答えを書くことでどうにか合格。やったね。
「何が『友達を助けるのに理由なんていらない』よ!全然助けないじゃん!」
「だから、コイツは友達じゃねーの!」
「落ち着いてください!私は全然平気ですし、コイツはこういう奴ですから…」
やっと実戦かと思ったら、アクシデント発生。ツヅリがすっ転んだところをミライがからかうと、シラマロがキレた。
「なんでみんな嘘つくのぉぉっ!うわぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」
「ちょっと、ほんとに泣き止んで…」
「うるさいうるさいうるさい!」
「…おい、どーすんだよ」
「どうしようもねえよ…」
「誰か呼ぶ?」
「いや誰呼ぶん?」
「話が通じる人…いないか」
「赤暖簾さんは?」
「あの人も根性正直気合い派だろ…ケーキさんは?」
「そもそもどうやって呼びに行けば?」
そして、混乱が混沌を極めたそのときだった。
「ねえ、これってどういう状況なの?」
「あ…え?あっ、ご機嫌麗しゅう…」
「あっ、気を遣わなくても…」
神様だ。天神来た。なぜ?いやでも、この人ならワンチャン…いや、気が弱いし無理か…?
「えーっと、あの三つ編みが転んだのを灰色がからかって、そしたらシラマロさんが怒っちゃって…」
「あっ…うん」
神様は慈愛に満ちた御方…みたいなのは聞き飽きるほどありきたりな話だが、今この神様は、ちょっと呆れた顔をした。
「じゃあ、今はシラマロが一方的に怒ってる感じかな?三つ編みの子は被害者なのに殴られてるし…」
ツヅリなら避けるのは容易だろうが、目上の人かつ別世界の人故に殴られてあげてるんだろう。
「そうですね…」
「わかった。止めてくるよ」
ええ!止められるんですか?!このゴタゴタがなくなるなら嬉しいが…ちょっと心配。いやでも俺じゃ止められないし…頼るしかないか
「シラマロ!」
「なにようるさいな!…………ラズリ様、ごきげんよう」
「ねえねえシラマロ、何かあった?あのね、ボクでよければ聞かせてほしいんだけど…」
なるほど、キレてて話が通じなさそうな人には優しくするのか。これは初歩的かつ俺達が忘れていたやり方だ。そして、シラマロも我に返ったように涙を浮かべた…いや、元から泣いてはいたか。
「ラズリさまぁぁ…私、とんでもないことしてしまいました…お願いです、解雇しないでください…」
「うん、大丈夫だよ、一人にはしないからね。解雇もしない。さ、一旦落ち着いて、ケーキのところに行っておいで」
「でも訓練途中…まさか解雇?!」
「しないよ。しばらく他の者に任せるだけだから。気分が戻ったら帰っておいで。待ってるから」
「はい…」
すげえ。あんだけ手に負えなかったシラマロさんを即落ち着かせたぞ…
うーん、でも…
「ちょっと甘くないですか……?」
「シラマロは傷つきやすいんだよ。トラウマというやつがあってね。それに、泣き出すと落ち着くまで何も聞きたくないってなっちゃうから、いつもケーキにサポートしてもらうんだ」
「はあ…」
戻ってきたラズリ様に思わず聞いてしまったが、そのトラウマ、微妙に気になる。てか神様とこんなにフランクに話せちゃっていいの?俺。
うーんと考えていたら、ラズリ様はツヅリたちの方へ行ってしまった。今まで名前を忘れていたのは秘密だ。
「ごめんね、部下がかなり迷惑をかけたみたいで…これはボクの責任だ。できれば、文句はシラマロじゃなくてボクに言ってほしいなあ…」
「いえ、本を正せば私共のせいでございますので…」
「愛がなんだとかうるせえぞクソアマってミライは思います!!!」
「あ、えっと、ごめん…」
「いえ!彼女は混乱しているのだと思います!!謝ることではございません!」
ミライの爆弾発言をツヅリが慌てて訂正すること数回。ツヅリはもうダメだと言わんばかりにミライの顔を雲に埋め、戸惑うラズリに向かって頷いた。
「ええっと、お騒がせしたね!海瑠璃第五席、シラマロは訓練の継続ができなくなった。だから、君たちには、もう一度赤暖簾焼の訓練を受けてもらう!もちろん、これは第五ステージカウントだから気にしないで欲しい!」
「さっきぶりだな!赤暖簾焼だ!今訓練が終わったばかりの者もいるが、改めてよろしくな!」
こうして、俺たちの訓練は再開したのだった。
ずっと沈黙しててすみません。夏休みに歓喜していたら一瞬で8月になり、夏期講習は二十二時間入りました。
短編「あやかしあらずとも」を投稿いたしました。それから、今年も夏の駄作を投稿したいと考えておりますので、そちらもご期待いただけたら幸いです。




