死神って言ったって全員才能アリ真っ平らって訳じゃない。
隔週どころか何週間も経っての投稿です。大変申し訳無い。
「そんなの、知ってたってしょうがないし…」
言い淀むスワンチェに、竒は畳み掛けるように言葉を続けた。
「でも、お父様やお姉様に迷惑がかかっている自覚はあるんでしょう?お母様が自分のせいで死んだと言われたくないんでしょう?そんなことを理由もなく言い出した親戚が憎いのでしょう?」
「だからっ、わかってたってしょうがないんだよ!」
怒声が返ってきて、竒は言葉を続けるのを躊躇する。スワンチェのくすんだサクランボ色の瞳は、今や怒りに満ち満ちて光っていた。
「わざわざそんなことを再確認させに来たのか?!天使って言ったね。どうせ、知識深淵兎人一族を潰すための工作に来たんだろう?!」
「いや、まだ話は途中で…」
「ああそうかい!じゃあ僕を真っ向から侮辱する気があって来たんだね!なんでさっきあんなことを言ったのさ!」
竒の言葉に被せて、そう叫んだ後、杖を構えるスワンチェ。静寂が広まる。次の言葉が来ないうちに、竒は呟くように返した。
「だから、あなたが遮ったからですよ…」
息を荒くしていたスワンチェは、ハッとしたように杖を下げ、バツが悪そうに顔を背けた。
「…ごめん。話を遮られるのは嫌なことだ。気分も悪くなるし、本題にたどり着けなくなる。僕でもわかることだ。…言いたいことは今のところ一つ。交渉をするなら、相手の弱点は一気に突き過ぎない方が良いと思うよ」
「いえ、竒もちょっと焦ってしまいました。ごめんなさい。…とりあえず、世界の真実を話してもいいですか?」
とりあえずとは言っても、竒はスワンチェへの悪口は次回会ったときに話そうとそのときに決めた。彼を味方につけるためには、神経を逆撫でするのは得策ではないと悟ったからだ。
「うん。教えて」
ひとまず返事をもらえて安堵したあと、竒は話し始める。
「ではまず、歴史から。こちらの世界では、天国主は悪の概念が勝手にヒトの形を得たものと言われていますよね?」
「うん。そんでもって、天神と閻魔は、最初はこの世の人間や動物の心から生まれた…って」
合っているところもある。地界でも天界でも扱い切れない悪や取り除いた怨念をまとめて、創り上げられた人形が天国主だから。天神と閻魔は地球のエネルギーや生物の生命力が自然に善悪に分かれ、集まって出来た存在だから。
でも。
「それ、真っ赤な嘘なんです」
嘘の裏返しの嘘で、白兎の瞳を揺らす。それこそが竒の狙いだった。
「ってことは、父上や姉上も、閻魔様も…」
「あなたに嘘をついて、偽りの知識を流し込む敵です」
「そっか……」
悲しそうに、悔しそうに、でもどこか諦めたように、スワンチェは肩を落とす。疑いは、その感情に塗り潰され、ゆっくりと消えた。
「そこで提案です。あなたが、世界の認識を変えませんか?真実を、広めるのです」
「いやでも、僕そんなに強くないし、舐められやすいし、社交性とかも…」
「それは竒がどうにかフォローしますから。少しだけ、おでこを貸して」
竒は、スワンチェの額に手を当てた。
「【封印】」
そして、彼の臆病さに、トラウマに、寂しさに…そして、優しさに鍵をかけた。
ーーーーーーーーーーーーー
(どこ?どこなの?プリンをはさみうちできる場所!早く見つけなきゃ、いくらツヅリちゃんでも長くはもたない!)
走っても走っても、同じ景色ばかり。何度加速魔法をかけても、カラメルの匂いさえ感じない。
「【超常星光加速】」
幾度目かの加速。リスクを承知で、壁を壊しながら進む。
「見つけた!」
甘いカラメルの匂い。柔らかいものが床で引きずられるように動く音。極めつけに、ツヅリの魔力の波動。間違いない。
壁を壊して、もう一回加速して、とにかく急ぐ。久しぶりに魔力がピンチになる気がする。
「ツヅリちゃん!!そっち大丈夫?!」
「かなりまずい…早くっ!」
どうにかして叫んでいるような、絞り出すような大声。冷や汗が吹き出た。このままでは、すぐ、終わる。
「【無限翼刃】!」
その名の通り無限の羽の刃がプリンを切り刻む。それでも、圧倒的な数と柔らかさが邪魔をする。
(焦るな、焦るな、大丈夫…まだ少し時間はあるはず…)
もはやアスカの鎌は刃物ではなく、杖だった。ひらすら魔力を込め続けて、ひたすら放つ。
「あっ、ちょっとやばいかも…きゃあっ!」
その声は、足止めの崩壊を表していた。
(あ、どうしよ、早く、早く早く。なんとかしないと。もっと、大爆破的な、すごい魔法出さなきゃ)
ツヅリに駆け寄って庇うのも、プリンを追いかけるのも、新しい魔法を考えるのも、全部同じくらい必要な気がした。何がなんだかわからない。
唐突に、いつかイロリに教えられた超級火炎魔法とやらを思い出す。あれしかない。
「【混沌灼熱砲】!!!」
焼き尽くす。今、この瞬間に最高火力を出さなければ、勝機はない。洞窟を出るまでプリンから逃げ惑うのは無理だ。見た目の問題から避けていたが、なりふりかまっていられないので、焦げて落ちたプリンに片手を伸ばした。
(あー…魔力切れそ…ツヅリちゃん、どーにかして来てくれないかな…)
そんなことをぼんやりと考えて、ハッとする。ツヅリも、自分が走っている間、同じことを考えていたのではないか、と。
(でも、ツヅリちゃんは、僕が着くまでここを守ってくれた。なら、僕もここは自分の力でやり切るべきでしょ!)
一層火力を上げて、焼き屠る…もとい焼きプリンにするのだが、それほど平和なものではないのだ。
しばらくして、這いずるような音が無くなった気がしたので、アスカは鎌をおろした。
今度はもう一度、動いている奴がいないか確認して。良く見たら一つかけらが動いていたからちょっと焼き尽くして。そうして、ようやく煙が薄くなってきたのでツヅリを探して歩き回ることにした。
「ツヅリちゃん…案外元気そうだね」
「疲れと魔力切れと声が掠れたこと以外は割と元気だよ。少なくとも火炎放射器もどきの気配を察知して焦げる前に隠れられるくらいにはね」
思っていた倍くらいはケロッとしている彼女を見て、アスカはホッとしながら横に座った。
「服も汚れたし疲れたし、しばらく動きたくないよお…」
「…これ食べる?」
「絶対いやだよ…真っ黒じゃん…」
先程は致し方なく飲み下して魔力回復をしていたが、そもそも消し炭プリンは食べられたものではない。
するとツヅリは、ズボンのポケットから苦裏夢疎堕を取り出した。空き缶ではない。新品である。
「非常食…じゃなくて、非常飲だけど、いる?」
「質問を質問で返して悪いけど、なんでその小さいポッケからそんな缶ジュースが出てくるのさ?」
苦裏夢疎堕の缶は、350mlのやつである。せいぜい手のひらくらいの大きさしかなさそうな、平たいツヅリのポケット。不自然極まりないことになっていた。
「イツキと共同開発した、【不思議なポケット】の魔法よ」
「【ポケットの中にはビスケットが一つ】ってやつ?」
そう聞きながらも、アスカは「違うよね」と思っていた。考えるまでもない。増えていないのだから。
「うーん。【次元が変わるポケット】って言ったら、ピンとくる?」
なるほどそっちか。不思議なポケットである。
「あー!もしかして、アイテムボックスってやつ?」
「まあ、近いね。本当は拡張してるだけだけど」
コンッと音を立てて置かれた缶を見つめた後、アスカは数秒迷って、お礼を言って、缶を取った。
強炭酸どころではない強炭酸だが、ポーション的な側面もある飲み物だ。気力体力共に少し回復した。
「ごめん…完全に僕のミスで、遅くなっちゃった。本当にごめん」
「いいよ。無事だったんだし。こっちこそ、倒してくれてありがとね」
「イケメンだ…」
イケメン(笑)ではなく、ガチのイケメンだ。アスカは人知れず、ミライの言葉を打ち消すことに成功した。
ーーーーーーーーーーーーー
「赤の中の青、赤の中の青…うーん」
「集中切れるから黙れようるせえな」
イツキに半ギレでそう言われ、俺は口をつぐんだ。あいも変わらず、炎は熱く、周りの叫び声は暑く、そしてなんとなく着ていた長袖長ズボンコーデの地は厚い。洗濯…しないとだめかなぁ。
「赤暖簾焼だ!!!調子はどうだ?!?!」
わかったよ名前は!!もう覚えたよ暑苦しいな!
「赤の中の青、ムズいっす!赤しか見えないです!」
ここは正直にいこう、無理なのに出来てるって言うとめんどくさいし、アドバイスもらえるかも。
「なるほど!茶髪はどうだ?!」
「…赤の中に、少しだけ色彩が一緒に燃えて見えるんです。でも、紫とか、黒とか、黄色とか…青ではない色ばかりで。大丈夫でしょうか…」
「もう紫が見えるか!魔術に長けた若者とは聞いていたが、筋がいいな!」
「へ?」
イツキは間抜けな声を出して、はてなマークいっぱいの顔になった。
「赤と青の間は紫だ!紫が見えればもうすぐだぞ!そして紫髪の君!青明力の取得は地界のものには至難の業!しばらく見えなかったらこの修行はやめにして、魔力の使い方に関する修行をしよう!」
よくわからんことのついでのように俺は恐らく才能ナシの烙印を押されてしまった。ひねくれているかもしれないが、凡人だからしかたない。
こういうところが、ミノは気に入らないのだろうなあ。うう。どーにかこーにか変えないと…
小テスト、修学旅行の計画、その他もろもろ忙しく中々文を増やすことができませんでしたが、やっと少しだけ安定してきました。
安定した矢先にテストも近づいてきているので、また無言で一ヶ月ほど失踪するかもですが、多分生きてるのでゆっくりゆったり待っててください。
死忙を終わらせる目途もたっていないのですが、他の作品を一つあっためています。調子がよかったら夏休みくらいに出すかもしれません。




