死神って言ったって焦らない訳じゃない。
ごめんなさい今回ちょっと短い…
光が混ざり、ゆっくりと彼を包み込む。薄紫の光がなくなり、眩しさを感じなくなった後、サラは目を開けた。
「特に変わったところもないか。つまんないな」
気が済んで、椅子に座り直して鼻歌を歌い始める。それでも暇を持て余すと、いたずらに漂っている魂を捕まえて、潰す。しばらくそうしていると、果てしない無力感がサラを襲った。
「こんなことしてるはずじゃ、ないんだけどなぁ」
椅子は軋むだけで、誰も彼の言葉には答えなかった。
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「痛たた…ツヅリちゃん、意外と脳筋だね」
「そう?でもいいんじゃない?逃げられたし」
思いっきり壁にぶつけた背中をさすりながらアスカは立ち上がる。冗談っぽく喋って、その後のツヅリの答えにも笑い返しては見せたが、内心、かなり焦っていた。
(僕…今回そんなにすごくなくない?!)
大抵人並みにはやっているが、規格外の火力を持つツヅリの前ではパッとしない。それは、アスカからすれば大問題であった。
彼は元々優れたポテンシャルを持っている分、常に上位でいたいという欲求も強い。だから、新人でまだまだ階級も低いはずのツヅリに負けるということはアスカにとって尊厳破壊わからせもいいところなのである。
(いや、でも、今から頑張れば大丈夫!すぐ突っ込めば良いんだよ!僕はちゃんと強いんだから!)
一人頷き、なんとか気分を上げる。すでに服の汚れを払い落とし、鉄球も構え直して準備万端なツヅリを見て、アスカは小走りにそちらへ向かった。
「ね、やっぱり倒した方がいい気がしてきた!」
「うーん…まあ、倒したら有利に進められるような気もする…」
「よぉーし、決定!さ、戻ろう!今度こそ消し炭にしてやるぞー!」
「おー」
余裕そうなツヅリを見て、アスカの心に、さらなる焦りと嫉妬の火がついた。
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「【ぴかりん☆シューティングスター】!……っ魔力、減ってきたなぁ。ミノちゃん、まだ動きにくい?」
「うん、まあ、さっきよりはマシだけど。もう少しでちゃんと動けるようになると思う…お菓子、食べたら?」
「嫌。ミライはキレイで美味しいお菓子しか食べたくないもん」
強がっては見せたものの、ミライの魔力は底をつきかけていたし、体力もだいぶ減っていた。魔力の使い過ぎで、貧血のような症状が出始めている。ただ、焦げたり濡れたりしたお菓子を食べることも、弱っているミノの前で休むことも、プライドが許さなかった。
「やばっ、蒸しパン来た。逃げよう」
「わかった!」
ミノに言われるまで蒸しパンの存在に気付きもしなかった。注意力も散漫になってきている。足場の悪い入り組んだ道を、カチカチのブーツとふわふわのスカートで走る。相性は最悪だった。
「ミノちゃん、まだ無理?」
「なんで?」
「足、痛くなってきちゃった」
「自業自得でしょ。怪我でもしたら背負うけどさ」
今更ながらにミノの信頼を損ねたことを後悔する。もし彼女ともっと仲が良ければ、簡単に済んだことかもしれない。
(いや、それはみんなに対してか)
可愛くいたいと望んだ。みんなを振り回して、弄びたいと思った。それは叶った。けれど。
(ミライは、それだけじゃなくて、うざ可愛くてみんなに迷惑がられながらも、愛される女の子になりたかったんだ。ほんとは)
ぼんやりとそんなことを考える。手を握ってはいたが、ミノはどんどん速く走っていくのに対して、ミライはだんだん遅くなっていく。手が解けそうで、それが怖くて、必死に走ろうとした。
蒸しパンの迫ってくる音が聞こえる。荒い息遣いが、自分のものなのかミライのものなのかわからない。ブーツが地面にぶつかる音がうるさい。
足がふらついて、もつれる。置いていかれないように頑張って足を動かす。
「あっ」
躓きかけて姿勢が低くなった瞬間、ミノの手が滑って離れた。走ることはできるが、さっきより格段に遅い。
残る手段は、僅かな魔力で蒸しパンを倒すこと。
「【トキメキ♡トゥインクルラブショット】!!!」
渾身の技に、乗せられるだけ魔力を乗せて、水鉄砲のトリガーを引いた。
大きな音を立てて蒸しパンが倒れる。それを確認して、ミライはその場にへたり込んだ。
(あたま、ガンガンする…でも、これでしばらくお菓子は来ないよね…)
ふと、頭上に影が落ちるのを感じた。ミノがこちらに来てくれたかと思ってゆっくりと見上げると…
さっき倒れたはずの蒸しパンが、巨大な体を起こしたところだった。
すごく不穏な終わり方したけど、主人公のトウマが出てきてないって思うと少しシュールですね。




