死神って言ったって絶対覚醒しない訳じゃない。
結局報告からも一日遅れました。大変申し訳ありません。
重ねて、今回はとてつもなく説明感のあるつまらない文が多くなっています。ごめんなさい。
「願う者」とは、単に願いを抱えた者のことを言うのではない。己の身を、心を捨ててでも叶えたい願いを抱き、願いのためだけに生き、死んだ人のことだ。しかも、それを後悔し、取り消したいという強い願いを抱き直すことが必要であり、なろうと思ってなれるものではない。
しかし、「願う者」は、地界で生まれることの方が圧倒的に多い。それは、『願いを叶えるために(誰かを巻き込んで)死んだ→償うため地獄に落ちた→後悔した』という順番で「願う者」となる亡者が圧倒的に多いからである。だからこそ、天界の住人である枕が「願う者」の術を使ったことにエルマは驚いたのだ。
(あ、どうやって止めるんだろ、あれ)
鋏を構え直す間もなく、エルマは気を失った。
「倒したらいいんだっけ?」
「いや、許可証みたいなのもらわないとだよ」
「そっかー、頑張って起こすかぁ…起きろボケぇ!カスぅ!アホぉ!」
いくら大きい声で呼んでもボロクソ言ってもエルマが起きる気配がないので、出雲葵はどこからかメガホンを出現させ、エルマの耳元にくっつけた。
「そ、それは流石に駄目じゃ…」
「そーかねえ…」
出雲葵は仕方なさそうにメガホンを消した。
「未だに魔法とか天青術とかの違いわかんないよね」
「え?まじ?」
「うん」
「じゃー説明してしんぜよう!体の中に血のように入っている黒いものが魔力!死んで地獄に落ちると、もとの体は耐えられずに血や内臓が変質!よってこれは地界のもの!」
「…なるほど?」
「次、天青術!天界の魔法みたいなもん!天神の力によって平等に与えられるのが青明力!死んで天界に来ると、精神状態判別のための紋章に付随し、青明力も胸に刻まれる!よってこれは天界のもの!」
「…違いは?」
「魔力は個体差があり、量が質を上回る、若干才能ゲー、天青術は平等で、質を自分で高める努力ゲーってとこかな。あと、回復の速さ。魔力が本人の血のようなものであることに対して、青明力はもともと天神の力で出来てるから、天神によっぽどのことがない限り、かなり回復が速いよ」
「…そうなんだ?」
「ははっ。まーちゃんには早かったかな。とりあえず、コイツが起きるまでは休憩といこうか」
出雲葵は苦裏夢疎堕を枕に渡し、火不壊惡零を流し込んだ。
「超強炭酸…」
「あっつ!!!クッソ熱い!!!!」
どうやら地界ドリンクは、天界人からは不評な感じである。
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「【節分豆エクスプロージョン】!」
「【こがらし・たつまき・きのこごはん】!」
珍妙なセリフとそれに似合わない出力の魔法がぶっ飛ぶ。ワッフルはそれを全てまともに受け止めておきながら未だ完全体だった。レベル差とか強敵とかそういう次元じゃないのかもしれない。それか、俺達の頭が悪いだけで、どこかに弱点があるとか。
「イツキ!なんかわかんねえのかよ!そもそも皿のやつじゃ駄目なのかよ!」
「まだ近付けてすらいないのにわかるわけないだろ?!皿のやつってもう紙袋ついてるし!…強いて言うなら紙の袋を装甲ということにして、生地が見えないところだとは思うけど!」
「最初からそれ言えやあああ!【海霹靂】!!」
コバルトブルーの雷が紙袋にぶつかり、若っっっ干焦げた。本当に若干焦げただけなので大いにショックだ。
「逃げろトウマ!!」
振り向くとそこには、ビョンビョンジャンプしながらこっちに突進してくる巨大ワッフルがいた。
「改めて見るとキショいなああああ!!!」
「そこー!お菓子にキショいなんて言っちゃダメだよー!」
なんで聞いてるんだよ!!!とにかく逃げないと!
必死に逃げ回ること体感十分。イツキが一緒に逃げる羽目になって、そこから更に体感二十分。死神になって身体能力がかなり上がったとはいえ、体感三十分も走れば、俺達ガリガリ陰キャはへとへとだ。
「し、しぬ…」
「やっほー!お疲れかな?」
「あ、アンタは!じゃなくてあなたは!」
「べつにいーよ、アンタでも」
クソデカスイーツ生み出し人、ケーキではないか。いつの間にやら緑色のツインテールが三つ編みになっている。だいぶ暇だったんだろうな。
「実は、白群色地獄に行ってないのは、今は君たちだけなんだよねぇ。だから、パッと魔法を出せるコツを、ケーキが伝授しようと思って」
なるほど。最後とは驚いた。パッと魔法を出せるコツってなんだろう。
「魔法はイメージが大事だよね。だから、こんなエフェクトで、こんな効果で、こんな感じ!って強いイメージを抱きながら、大きな声ではっきり、それに合った呪文を唱えるんだよ!」
なるほど。…それ、速い出し方じゃなくて新しい魔法の出し方じゃない?めちゃくちゃ強くイメージしたら上手くいくってことか?
「なるほど?」
「あ、ワッフル来ちゃった」
「うぎゃああああああ!!」
そうやってまた逃げ惑いながら、必死に考える。イメージ、イメージ…バーン!ってワッフルを押し潰せたら楽だよなあ…。重力を落とす感じで、上手くいけないかな…
「【激重胸糞愛憎重力操作】!!」
しーん。
「全っ然だめじゃねえかよおおおおおお!」
「えーっと、なんかいけそうな感じの魔法…」
「辞書めくる前に逃げろよイツキも!!はやく!」
イツキはそれを聞いてやっと走り出したが、ときどき躓いたりまだ辞書をめくっていたりと危なっかしい。
「おいワッフルそっち行ったぞ!」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理」
俺よりもさらにもやしガリ勉陰キャのイツキは怨念を吐きながら荒い息で走るのが精一杯のようだ。そりゃそうか。
「はぁ…むり…しぬっ…」
ふらつきながらなんとか足を動かしていたイツキだが、体力の限界だった。足がもつれて、思いっきり転んでしまった。…ってクッソ危なくね?!
こんなときに上手く魔法を使えれば、何かがあるのかもしれないけれど、今の俺に使える技では、多少の注意を引くことができる程度だろう。周りが使っていたものを見て真似ることも簡単じゃないし、俺はレパートリーがクソほど少ない。そもそもイツキは思いっきり転んだのだから、怪我をしている可能性がある。そんな状態で体力もないのに、ほんの数秒時間を稼いだって逃げられる訳が無い。
「それなら新しく作るまで!!」
ワッフルとイツキの間に滑り込み、なんとか啖呵を切ったところまでは良かったが、どうにかなるだろうか。
とにかくイメージだ。鎌…と、包丁も使ったら少しは威力を上げられるだろう。それから、今は倒すより守るが大事だし、押さえつけるような感じが良いかもしれない。【暮帳】とかいうやつもあったけど、あれは光用だから無理か。でも、半球状にバリアってのは良いかもしれない。あー、時間がない。これ以上考えたら俺が潰される。よし、基本は【暮帳】と同じようなのにしよう。
「【ペケ+十コネクト・バリアアンブレラ】!!!」
青明力と生命力が一応かけられています。【精神状態判別のための紋章】は、天神が未熟なためつけられているもので、亡者の心をだいたい読むことができます。
神なのに未熟なのは、名前を奪われたためです。けっこう最近のできごと。もとが人間である以上荒んだ心の人は地界にも天界にもいます。閻魔は普通に読めます。でも天神はできないみたいです。そもそもなんで名前奪われただけでそんなに弱くなる?とは思うかもしれませんので、ちょっと考えてみてください。
どちらの世界でも日本語が通じる上に、日本人しかいないっぽい雰囲気ですよね。どうして彼らの主の名は外国語っぽいのでしょうか。
もし、もとが日本語の何かを表すものならば、もし、大きな力の存在につけられたものならば…天国主が命ではなく名前を奪ったことに、ちゃんとした理由があるならば、その名前がどんなものであろうと、今より強いはずですよね。




