死神って言ったってトラウマがない訳じゃない。
いやーなんとか書き終わりました!
最後の方、またぐちゃぐちゃかもしれませんが、許してください…誤字報告も絶賛受付中です…
そんなわけで(?)今回はイツキにスポットライトが当たってます。
「ツヅリ。立てるか?麻痺しているかもしれぬが、そなたもミノと同じくらい疲れておるのじゃ」
「はっ。問題ございません。格別なお気遣いを賜りまして、心より感謝申し上げます」
流れるような所作と言葉。メリザはそれを見て、思わず笑いが込み上げた。
「固いのう!そんなことを言われたのは久しぶりじゃ!」
ツヅリの背中を叩いて大笑いする。涙が出るほど笑ったあと、魔法陣を作って指差した。
「正面から行ったら他の死神たちに絡まれる。そこの魔法陣でも使うのじゃ」
ツヅリは言われた通りミノを背負って、閻魔城へ転移できる魔法陣の上に立った。
「あっぶな…背中叩かれたとき吐くかと思ったわ…」
種族の違いは力の違いだと、嫌でも感じさせられたツヅリだった。
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「うわぁ、あれ、僕たちの魔法いらなかったっぽい?」
「「っぽい…」」
とんでもない数の防御魔法を見せつけられ、あ然とする俺たち。さらに閻魔登場で、俺たちのなけなしの自尊心は消えた…と、思っていた。
「すげー…あれが噂に聞く桜霞墨かぁ…伊達に閻魔大王やってないな…」
「さっきの壁の魔法のさ、珊瑚のやつと水晶のやつ、うまく組み合わせたらさ、きれいなお城できそうだよね!珊瑚塀、だっけ?聞いたことないけど、翡翠とかもありそ〜」
あーやばい。俺だけだった。
(そう言えば、ミノは…)
「ミノちゃんたち、今は…閻魔城かなぁ?」
「流石にあれだけの目に会わされておいて、正面から戻って戦えなんてことはないだろ。俺も閻魔城だと思う」
あ〜、そういう感じね?俺だけわかってない感じね?無事ならなにより。
「出てこい!貴様がただの天使でないことぐらい、わかっておる!」
いけないいけない。戦ってる途中だった。閻魔の声でハッとして、前を見る。
桜色の結界の奥に目を凝らすと、あの激キモ不穏めちゃ怖天使がいた。その口がぱっくりと、これ以上ないくらいに大きく開く。
そこから這い出るようにして出てきたのは…一人の、少年だった。かなりシュール!小学校高学年か、中一くらいだろうか。俺より少し年下に見える。
外にはねた黒髪と、いたずらっぽい蜂蜜色の目は子供っぽさがあるが、シワのないワイシャツと黒いベスト、ズボンに艶のある靴としっかりした服装をしていた。
「あ…」
掠れたイツキの声に振り返る。震えて目を見開き、何かに怯えているような、彼らしくない姿。少し驚いた。
「おい、イツキ…大丈夫か?」
「イツキー、どしたの?あの子に見覚えあり!とかー?」
アスカはふざけて言ったのだろう。しかし、イツキは泣きそうな顔で頷いた。
「「マ?!?!?!」」
「うん…」
お?珍しいな。いっつも「あぁ」とか「そうだ」とか、ちょっと怖い感じだから新鮮。
騒ぐ俺たちをよそに、少年は結界へと近付いてくる。
軽くお辞儀をして笑みを浮かべ、彼は名乗った。
「はじめまして。僕の名前はイブキ。僕、イツキって死神に用があるんだけど、通してくれない?」
「出来ぬ相談じゃ。そもそも、貴様とイツキに何の関わりがある?まぁ、関わりがあっても通す気は無いが」
「関わり?あるよ。だって…僕は紫野ノ目 以不輝で、イツキは紫野ノ目 何時輝。僕とイツキは兄弟なんだもの。ね?イツキはおにーちゃんでしょ?」
「違う……違う!お前は俺の弟なんかじゃないし、俺もお前の兄じゃない!とっとと失せろ!人でなし!ろくでなし!馬鹿!」
イツキはものすごい勢いで言い返す。怖いモノの前で強がってるみたいに。てか好きな奴の目の前で暴言吐けるタイプか。強いな。
「…ふーん。結局何時までも輝けなかったイツキが、そんなこと言っちゃって良いんだぁ」
「うるさい!お前だって以上でも以下でもない平凡野郎で、不得意ばっかで…っ!」
うーわ。兄弟喧嘩。仲裁に入るべきかわからない。俺、一人っ子だったしな。
「そう。でも、その平凡野郎が今や天国主の側近さ。結局だめなのはイツキだけ。まだ二級なんでしょ?せめて、一級くらいになってから言ってよね」
「ちょっとー!それって僕のことも言ってるー?ひどくなーい!?」
アスカが叫ぶ。こんなことを俺が言えば、ツッコまれるか何かを諦めたと思われるかの二択だ。今のところ彼にしか似合わない台詞…いや、ミノは言えるか。三級だけど。
てか俺だって三級なんだし、もうちょい気を使えよな!
「おい!三級だっておるんやぞ!四級と見習いもおるんやぞ!なんか文句でもあるか?!あ゛ぁ?!」
…陰キャの特徴として、仲間がいると異様に強気になるというものが挙げられる。つまり、俺たちはイブキに思いっきり喧嘩を売ったというわけだ。
「……へぇ」
ちろりとこちらを睨んでくる蛇みたいな目がクソ怖い。
「ねー、閻魔様。イツキだけ、こっちに出してくれたら、何も心配ないよ?そうしなきゃ損ってもんだよ?」
「知るか。余は地界の主。ならば地界の民を守らずしてどうするのじゃ。大体、貴様が帰れば万事解決なのじゃ。とっとと帰れ」
意外とロリババアがかっこいい。アスカはイツキを自分の後ろに隠し、また何かをいじっている。形状からして銃だろうか。それにしてはカラフルだけど。こんなときなのに、なのか、それともこんなときだから、なのか。
どうやら後者だったらしく、アスカはその水鉄砲の様な道具をイツキに渡した。
「とりま護身用の銃として使ってよ。魔力込めてトリガー引いたら使えるからさ」
「あ…あぁ…でも……」
「怖くない怖くない。以不輝くんと昔何があったのかは知らないけどさー、今は僕たちがついてるんだから。…それに、イツキはもう、輝けるでしょ?」
謎に饒舌なアスカ。あれ?ちょっと震えてる?これは、もしかすると。
「もしかしてアスカも怖い?」
ちょっと煽ってやろ。
「ううん。我ながらさらっとハズい台詞吐いたなぁと思ってさー。なんか、すぐ殺されるキャラみたいだなって、恥ずかしくなっちゃって〜」
こ、こいつ、死亡フラグ(?)立てやがった!しかも、怖くないって…俺がダサいだけじゃないか!
「ね、イツキ。こっち来てよ。そしたら、そこの金髪の子も、こっちの閻魔様も、無事で済むよ?」
以不輝はイツキに語りかける。まるで、ペットや幼子が言うことを聞かないときに諭すみたいに。格下の相手に優しく言い聞かせながら圧をかけているみたいに。
「あ…えっと…」
なんか、やばくなってきたぞ…
イツキは青ざめながら、一歩、前に出た。
さらに、もう一歩進む。
これは…行っちゃあかんやつだよね?
行ったら最後なタイプ…
「行っちゃだめだ!」
「行かないで!」
「来るでない!」
あれっ?みんな同じこと考え…てるか。普通。
「あーあ。みんなして、そんなムキになっちゃって。でもね、知ってるよ。桜霞墨って、その名の通り、霞や墨のように、強さにムラがあるんだって。だから…」
「させるか!」
閻魔はもう一度結界を張ろうとしたが、遅かった。
「【白壁】!」
アスカの作った障壁も少し遅く、俺なんて魔法を思いついて出すことさえできなかった。
以不輝の出した糸はイツキを捕まえて、結界の外に出してしまったのだ。
「さ、イツキも天国に行こ?」
「い、行かない。嫌だ。俺は、地界にいたい」
「そ。じゃあ、僕を消してみてよ。ああ。安心して。消えても天国主様に戻してもらうから」
「ざっけんなよ!」
イツキは水鉄砲を構える。それに対してイブキは…
「おいで。黒朝」
ズブ…と気持ち悪い音を立てて出てきたのは…
鳥のような、それでいて魚のようであり、暗黒害虫に似た部分もある…とても気持ち悪いモノだった。
「「きっも…」」
アスカと声が重なる。彼も同意見らしい。
結界の外に出た以上、下手に近づけば逆効果かもしれないし、俺らが何がしたことで、以不輝を怒らせたりしたらもっと面倒くさいことになる。
アスカなら隙をついて矢を放つこともできなくはないかもしれないが、あいにくそんな真似は俺にはできない。
つまり、俺には何もできない。
「頑張ってくれよ…ここで消えられたりしたら後味悪すぎる…」
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あんなに吠え面かかせてやるとか、見返してやるとか、勝たないわけにはいかないとか思い続けていたのに、いざ彼と対面すると恐怖で何もできなくなった。黒朝とかいう気色悪いナニカに至っては直視するのも嫌だ。
(考えろ。考えろ。俺の唯一の取り柄はそこなんだ。イブキじゃ予想できないような、それでいて、黒朝を潰したりせずに消せる方法を…無口頭で大量の攻撃をぶつけて、この水鉄砲で撃ちまくって、とにかく気を逸らす…とか?それとも、気を引いてちょっとずつ魔法を出して、その後ろで大魔法を組み立てとく…とか?)
悶々と考えていると、魚の鱗のような物がイツキの顔の近くを通り抜けた。ピッと音がして、髪が少し切れた。
「ほら、ちゃんと僕の方見てよ。そうしないと、どうなるかわかるよね?」
言われた通り、一応以不輝の方を向く。
もう腹をくくるしかない。どんなに変なのが出てきても開き直ろう。
「お前こそ、いつまでも余裕綽々でいられると思うなよ」
そう言ってイツキは、魔力を込めて水鉄砲のトリガーを引いた。
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