死神って言ったってそこまで戦闘に慣れている訳じゃない。
不穏な空気ですなぁ…
夏休みなので、投稿増やそうか迷ってます。
シオリさんは震えながらうつむき、それでもなんとか声を絞り出した。
「天界に向かっているときに、天国の奴らがちょっかいをかけてきたんだ。そのときは跳ね返して解決したと思ったんだけど…ダメだった。もっと、考えたほうが良かった…」
「シオちゃんは悪くないよ!ね?」
【天国】と【天界】は違う。
【天界】こそ俗に言う天国。善い行いをした者、罪のない者が幸せに死後の生活を送る世界だ。
【天国】は違うのだ。ここ地界でも手に負えないような、反省、更生の見込みがないと判断された者がいる世界。思考を抜き、自我を無くすことで極悪人を止める世界。
それだけなら別に問題はない。問題なのはそこの主、【天国主】だった。彼は神のいる天界へ行くことを望み、それを阻止する地界の者たちを憎む。
最近では、反省できたかもしれない者の悪い部分を強くして無理矢理天国の民にしたり、天界に本格的に侵攻しようとしたりと流石に行動が目立つようになったらしい。
しかし、ここまで大胆に地界へちょっかいをかけてきたのは初めてだと言う。
「おおかた、天地同盟軍に全滅させられる前にどちらかだけでも潰しておく戦法なんだろうな。…あいつらしい、単純明快で甘い作戦だ。ただ、そのまま敵ではなく、容易に殺すこともできないこちらの住人なのが面倒くさい…」
近くにいたイツキが何か言っている。
あいつ?誰だ?イツキは謎ばっかだな。そんでもってまーた難しい考察始めてるし…
うーむ、ガリ勉の頭はわからん。
「今は、殺傷力を低下させた武器で叩くしかないよねぇ…」
「元々は牛頭鬼って凶暴だったらしいぜ」
「てかまじ何やってんだよ上層部…」
言われてんなぁ…まあでもいきなりだし、しゃーないか。死神ってめんどい。いや、元の人間がめんどいのか……?わからない…。
「うっさいのじゃ!聞こえてるからハッキリと申せ!」
げ、閻魔大王来ちゃったじゃん。これは先生の愚痴いってたら聞かれてたみたいなのと同じやつじゃん。
「だが、まぁ仕方ない。不安を煽ったのもまた事実。こうなったら、余自ら行動で詫びてやるのじゃ!」
ん?????
これ、聞いたらカッコ悪いかな!?すごく聞きたい!どーゆーこと?!?!?!
閻魔はロリの体じゃ絶対無理な速度で走ってあっさり内側から結界を破り、ただ叫んだ。
「牛ども!それでも地界の悪鬼を語るか!それでも余の下僕と言えるのか!」
え?そんだけ?それ、正気じゃないやつ相手に効くの?
「…今の閻魔大王様が持つ最強の力、【絶対君主】。高い洗脳能力で、術者が被術者を裏切れば絶対の滅びが待っているが、他の洗脳を解く力は絶大。一度術をかければ、訴えるだけでも大体のやつが正気を取り戻すんだ。ちなみに使用魔力量は閃光流星華鎌の半分もない。能力って感じだしな」
「なんでそんな企業秘密みたいなとこまで知ってるの…やば…」
「…地界文藝社発行新地界大全、九百十三ページ六十九章、近代から現代の閻魔大王たちの四十二行目より引用」
ミノのドン引きに答えるイツキ。
…パードンミー???地界文藝社のあとがわからなかった。コイツ、滑舌良すぎな?こんなに陰キャなのに。…いや俺も人のこと言えるほど明るくはないけど。
「へわっ?!おい!牛頭鬼!何やっておるのじゃ!わらわ…余は主等の王じゃ!おい!聞こえとるのか!」
…効いて無さそう!?洗脳を解くって言ってた割には効果がうすい?いや、そんなはずはない。イツキの言うことが正しいのならば、間違いなく洗脳は解けている。通常なら。
「【ドラップ】!ほら、君らも魔法なりなんなりかけてよ!」
シオリさんは禍々しい色の球体を無数に飛ばし、後ろに向かって怒鳴る。その声で死神たちが各々で遠距離攻撃を始め、アスカも弓を構えた。って、それじゃ死ぬんじゃ…
「【雷轟音】」
止める前にアスカは弓を射た。金色の光となったそれは、数体の牛頭鬼の『耳』をかすめただけだった。なのに彼は満足そうに頷いている。その理由がわかったのは数秒後。さっきその光に当たった牛頭鬼が耳を塞いで倒れたのだ。目で見てもわからないことってたくさんあると思うけれど、これを代表例として見せても良いんじゃなかろうか。
まあ、流石に言いすぎだけど、それくらいわからない事が起きているのだ。これは直接聞くに限る。
「アスカ、それ何?」
「ん〜?耳元ですごい音が聞こえるようにする魔法だよー。鼓膜を破らないように調整するのがめんどいんだけどねー」
「はぁ………」
全くしてわからない。理屈でわからないならかけられてみればいいのだろうか?もう少し聞いてみようかと思って隣を見たら、ツヅリがいるあたりに移動している。追いかけようと思える距離でもなかったし余裕もなくなりそうだったので諦めた。
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「…数が多いね。遠くからじゃそろそろしんどくなってくる。天使も見つけなきゃいけない。リスクが多くなってくるし、援軍が来ても困る。近距離も良しにしようかな」
イロリは呟く。特級死神として認められた実力の多くは、その爆発魔法の火力とずば抜けた観察眼が担っていた。
「これより、近距離攻撃も可とする!ただし、牛頭鬼を殺すことは許さない!そこを踏まえての攻撃をするように!誤って魂を刈り取ってしまったなんてことは絶対にないように!」
念を押したが、血気盛んな者たちは聞いていない様子だった。こんなときこそ観察眼の出番。聞いていなかったように見えた者の近くに、一つ一つミニ爆弾を投下する。
…この世界にパワハラという概念は存在しなかった。理屈が通っていればパワハラも一概に全て悪い訳では無いという考え方も、ないことはないのだ。―――無論、そんな事ができるほど裏表や私情のないところなら、の話だが。
「ふぅ…私も行くかな…」
イロリは結界の外へと走りだした。
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ツヅリは、近接戦闘の許可が出るのを今か今かと待っていた。先ほどアスカに渡されたのは、重い鉄球のついた棒だ。手加減できるように、棒の持ち手側にもピンポン玉サイズの鉄球がついている。さらに大きい方は外すこともできるという優れものだった。
「【重量増加】」
ピンポン玉形態にすると、軽すぎて逆に持ちにくいので、少し重くした。それ自体がかなり異常ではあるのだが、それに気付くことも、やっぱり変かなと思うこともできないほど、彼女の頭の中は、「手柄を立てて昇格すること」でいっぱいだった。
「特級になれば、天界にいける。待ってて。マクラ」
誰かに向かって囁いたそのとき、待ちに待ったイロリからの許可がおりた。
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「あいつ」がいるかどうか、イツキにはまだわからない。ただ、本当に「あいつ」の作戦なのだとしたら、作戦負けなんてことは絶対にできない。…したくない。
「今の俺なら、魔法がある。勝てる。絶対に」
ガバガバだけど、できてしまって、評価を受けている「あいつ」が憎くて仕方ない。死ぬ前から、ずっと。
今回こそは、勝ってみせる。吠え面をかかせてやる。
これまでにないほど激しいやる気の炎が、イツキの心に灯った。
―――戦いはさらに激しくなろうとしていた。
読んでくれてありがとうございます!
さて、マクラって誰?あいつって誰?が後半の感想だと思います。乞うご期待!
最後の、戦いはさらに〜のやつ、過去話したらただのウザい前フリになっちゃう気もする…
まぁ、頑張りますね(?)




