1-20 無邪気な尽き
ナオとアンナの最後の飛び込みで
最期の爆発の範囲から、
ギリギリ逃げられた。
他のチームは疲労に重なる疲労、
最前線に居た数人だけが、かろうじて立っていた。
「イタタ……終わったんですか?」
高台から目を凝らして警戒するレダン
「煙でまだ見えないが、警戒を解くなよ。」
全員がわかっていた、あのモンスターのタフさと恐怖を。
まだ爆発での煙がモクモクと上がって、
地面からも黒煙が舞う事で
青い月の姿は見えなかった。
数分の時間が経ち、煙が晴れると、
「まじか肉の形を保っている、
街一つ吹き飛ぶ威力だぞ。」
とγが顔を引き攣らせながら、ヒョコッと現れる。
所々から血が吹き出し、
乾かされたかの様にカサカサになり
変わり果てたが
黒かった体はさらに黒く焦げ、崩れかけていた。
「ピクリともしねぇな」
レダンが険しい顔のままで振り返る。
「終わりだ。」
そう言った時、
何か紅黒い、影が青い月に入り込んだ気がした。
「シロさん?」
ナオは何かを感じ取っていた。
バキバキ、メキメキと青い月の身体が動かされ
持ち上がり立たされる。
邪悪な声がそこに居た人間の脳に直接響く。
「そうか、貴様が英雄の魂を持つ者か…」
青い炎に包まれた三日月型の赤い瞳孔が、
一人でに開き、鈍くそれで重く光る。
影が入り込んだ青い月は身体が変形していく。
「なんだアレは!?全員!逃げろ!」
レダンは驚愕したあまりの魂の塊に圧倒され、
全員に逃走を命令する。
赤黒い影が、青い月の背後に形作る、
大きくモヤのかかった笑顔。
そこから影を伸ばす様に、全身に纏わせていく。
「誰だ!」
ナオは気づいたコレはこの邪悪な存在に
ただ単純に操られて、襲わされていたことに。
掴みどころの無い声で悟った様に答える
「ホウ、答えることはできませんが、
……分かっては居る様ですね、あなた方は。」
ガンッ!
ボウガンの矢が頭に入る。
「イヨしっ!」
γの矢だった。
γは瓦礫から飛び出しガッツポーズしている。
「いけ!アイツの体はもう虫の息だ、
俺のおかげでな!だからやれ!」
そんな一撃を食らった、青い月は、
「フッ下らない、攻撃よ」
見下した様な声で囁くと。
「コレは最期ぐらい使い物になってくれるか?」
そんな命を物としか考えてない、
言葉が軽々しく紡ぎ出される。
ナオは無性に腹が立ち気がつくと
眉間に皺を寄せ、魂衣を纏い突っ込んでいた、
高速の攻撃
そして
魂が尽きる。
頑丈な蹄が変形されて鋭利になった爪が、
ナオに向かって伸びる。
魂が尽きさえしなければ、
相打ちになったかもしれない反撃。
(うあ!、あ)
誰もが反応できなかった、不意打ちの一撃
一人だけ全員が肩を下ろしても、
静観し、警戒していたSランク冒険者レダン、
だけがナオを庇う。
ドッッッ
「カハ…」
レダンが体を軋ませながら吹き飛ぶ。
ボコッン!
ミシ
嫌な音が聞こえる。
ナオが目を見開き、絶叫する。
「レダンさん!!!」
―――
20年以上前の冒険者組合
冒険者全員と遊んでは、叱られたり、
遊んでは、
そんな無邪気な子供だった。
それからもずーっとそうだと思ってた。
「レダンは赤ん坊の時に捨てられたらしい、」
そう聞いたのは、ちょうど冒険者になってBランクの
時だった。
書斎で本を整理していた、
アンカレ街の代表、兼組合の長、
若きケン・アルカルース。
扉が勢いよく開くと、レダンが飛び込んで来て
アルカルースの本が置かれたテーブルの前で止まる。
「おおレダンBランクおめで、」
ドンッ!
そう言い出した瞬間、テーブルに拳が叩きつけられ、
本が中を舞う。
レダンが涙を堪え切れなかった、顔が本の間から見えた。
「ど どうしたんだ、レダン機嫌悪いのか?」
アルカルースは体を縮こめてレダンと顔を合わせる。
「親父!本当のことを言ってくれよ!」
「……レダンのお菓子食べちゃったこと?」
「違う。」
レダンは顔も上げずに言う。
「え...とじゃあ!レダンの服宴会で借りちゃった。」
「……違う、」
それでもレダンは顔を上げずに、
駄々をこねる様に言う。
「そーかう〜ん、そうだな〜」
アルカルースは少しでも和ませようと
頭と体までひねる。
そうして居ると、レダンが声を搾り出す。
「…赤ちゃんの時捨てられてた…の私 」
二人ともが聞きたくない、言いたくない、
言葉に覚悟を決める時間が過ぎる。
「……そうだレダン…隠していてすまない、だがッ」
弁明の声が出た時、
レダンはまた勢いよく飛び出していく。
レダンは依頼に出ていた。
「オイ〜お前なんか今日静かだな。」
そう絡んでくるのは、チームの仲間のオイガー、
ベテランの冒険者の中年だった。
「うっせえ!おっさん」
「ん?お前、泣いたか。」
冒険者の観察眼じゃなくても分かる、
涙の跡がくっきりと残っていた。
「え……うあぁ」
自分で目の周りを擦ると涙が出てくる。
ひたすらに泣き、勝手に今までの事も出てしまった。
「オーオーそうか、
お前はどう思ってんだ」
「分からないでも、悪いことした」
「と思ってんだな、じゃあ簡単だ謝ってこい。」
頭を撫でられると
安心した、でもあの適当で有名な
オイガーに頭を撫でられていると考えると、
「そんな事分かってんだよ!」
綺麗にされた書斎で、
アルカルースが座っていた。
「あの、オヤジ。」
同時に頭を下げる。
「ごめん」
「すまない」
「「え、何で。」」
「そんなに大事な事隠してたから」
「私はオヤジ悪くないのに怒っちゃったから」
「「……アハハハハ」」
沈黙の後笑い声が響き
扉の影からも声が聞こえる
「ア、ヤバッ」
みんなが影から崩れてくる。
「なっ、全員聞いてたのか!?」
「そーだよ、最初からな、」
拍手が始まり、みんなと笑い合った。
そんな1日で始まり終わった、親子喧嘩。
「レダン冒険者はみんな私の家族だ。
みんなを守りたいのに、」
手が天に伸びる、
「もう動けそうにない、頼む
助けてくれ。」
誰に言ったか本人にも分からない
懇願の声。
ナオが手を強く掴む。
「助けます。僕達が!」
(シロさん!)
久しぶりになってしまって、すいません。
話伸ばしみたいになっていますかね
くどいですかねそろそろ。
次くらいで倒します。
今回も読んでいただきありがとうございます。
投稿ペースは不定期ですが
楽しみに待っていただけたら幸いです。




