14話 そんなこんなで冒険者です
ずいぶんと遅くなりました・・・
男は自分のあったはずの槍の先を呆然と見る。
「・・・なにしやがった」
あっ、目の感じが変わった、怖い
「さぁ?なんでしょうね?」
気持ちが少し落ち着いて上手く喋れるようになったのでそれっぽく答えてみる。
「まぁなんでもいいや、ちょっと痛い目を見てもらうだけのつもりだったけど・・・しばらく動けねぇようにして――――」
「てめぇらぁっっ!!!なにやってんだぁっっ!!!!!!」
男が先の無い槍でもやってやると言わんばかりの勢いを出した瞬間
ギルド内に凄まじい怒号が響いた
入口から聞こえた声にギルド内の視線が一斉に集まる。
そこには鬼の様な形相をしたアニキが居た
「おい!ルーカス!!またてめぇかっ!!!」
こちらを見て放ったアニキの怒声にルーカスと呼ばれた男がビクっと震えた。
「バ、バリーさん!違いますよ~ちょっと冒険者流儀の雰囲気を味わってもらおうかな~って」
「てめぇはそれで何人新人を潰してきた?」
言葉に詰まるルーカス・・・ってかコイツ何人か新人潰してたの!!
あきらめたような様子になったルーカスは、バリーにため息交じりに話し始めた
「バリーさんコイツ、なんかしんね~けど急に大金を手に入れたみたいなんっすよ、あり得ますか?新人がっすよ?な~んかきな臭くないですか?それを聞き出そうとしてたんっすよ!」
コイツさらっと嘘を!・・・嘘だよね?多分
「んでこいつ、金をゴブリンにも使うって・・・こういうテイムのゴブリンって基本使い潰しじゃないっすか?ってか他の魔物でもテイムすればいいのにわざわざ・・・」
悪かったな!こちとらゴブリンテイマーなもんでね!!!他の魔物なんてテイム出来ないんですよ!
それに金の使い方なんて俺の自由だろうが!!
なんてことを考えているとアニキは、言いたいことはそれだけか?っと言わんばかりの表情で話し始めた。
「此奴はな!ゴブリンテイマーってジョブについていてどうやらゴブリンしかテイム出来ないらしい!」
アニキがそう言うとギルド内からは「聞いたことないジョブだ」や「それ、もう無理じゃね?」などの声が聞こえる。なんか笑い声まで聞こえてきた気がするぞ・・・
バリーは話をつづけた
「だがな、お前ら・・・この新人のゴブリンは相当ヤバいぞ・・・」
アニキは歯を出しニヤッと笑いゴブを見た。
またも一斉にギルド内の視線がゴブに集まる。
「ゴ、ゴブ・・・」
少し気圧されたように周りを見渡すゴブ、そんなこいつに「確かにさっきの・・・」っと声が聞こえる。
ざわつき始めるギルド内にバリーの声はやけに響いた
「大金を得られる事になったのも、おそらくこのゴブリンのおかげだろう!だが!すごいのはこのゴブリンだけじゃない!このゴブリンをテイムし尚且つ正しく使役できているこの新人!オージャーも大した奴だ!」
やめてアニキ!真実を見抜かれているのと過大評価で俺の感情はぐちゃぐちゃだよ!
ギルド内では
「なるほどなぁ」
「あのゴブリンが・・・」
「さすがバリーさん」
など色々な声が聞こえ始めた、バツが悪そうなルーカスにバリーはビシッとそして
「お前もくだらねぇことしてないでしっかりやれ・・・お前もやれば出来るってのを俺は知ってるつもりだぜ」
と優しく告げた
「バ、バリーさん!」
感情があふれ出し泣き出すルーカスの肩を叩くアニキ・・・この人、神かなんかの類なのでは?
俺がそう思い見つめているとルーカスが近寄って来た
顔は涙で腫れた様子で俺をしっかり見て頭を下げた
「すまなかった・・・俺が馬鹿だったよ、最近依頼でうまくいってなくてな、そんな時新人のお前が大金を手に入れたのを見て頭にきちまった・・・前の新人だってそうさムシャクシャして八つ当たりしてたんだ・・・こんなの言い訳だよな、お前ひとりに謝ってもどうにもできることじゃねぇ!だが、せめて!今伝えられるお前だけには言いてぇ!」
「すまなかった」
先ほどまでの恐怖をルーカスからは感じられない、悪いことをしてきたのは間違いないがそれを頭ごなしに言うのはこの場を収めたアニキにも申し訳が立たない
何より実害は俺にはないなんので
「いえ、もう大丈夫です、あのこれ・・・槍の弁償代で」
俺はそう言い1万Gほどをルーカスに渡した。
ルーカスは少し驚いていたが「ありがとう」と言うとその金を受け取った。
「さぁて!いざこざも無くなったようだな!新人!いや、オージャー!お前ももう立派なギルドの仲間だ!」
豪快に笑いそういうバリーに周りも影響される
「よろしくね~」や「今度依頼一緒に受けようぜ」など暖かな声が聞こえる。
俺は周りを見た後、横にいるゴブを見つめる此奴も俺を見つめていた。
1人と1匹で笑みが零れた
拝啓
お父さん、お母さん
俺は冒険者をやって行けそうです
「それで?いつにするの?」
薄暗い場所にその場には似つかない明るい子どもの声が聞こえる。
「すぐにというわけにはっとだけ言っておきましょう」
それに答えるのは若い男の声
「あぁ~楽しみ!」「楽しみ!」
先ほどの子どもの声と、別の子どもの声が響く
「この双子は・・・大丈夫か?」
今度は女性の声がその場に通る
「大丈夫ですよ、この子達も相当ですから」
「ならいい」
男と女が言葉を交わす。
この場には5人いた、そして最後の1人
「計画は完璧にこなす、王都をこの地上から消し去るのだ」
高齢の男の声は今後起こる波乱を予告していた
とりあえず一旦ここが区切りになります。
次からは一つの舞台でのお話になります、舞台って言い方が合ってるのか微妙ですが
お読みいただき誠にありがとうございます!
出来るのであれば、次をお楽しみに!!!!