表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

問題児達

2022年、最初の投稿です。

 退屈だ、こんなつまらねぇセカイにしたのは誰だ? 今すぐぶっ殺してやるから出て来いよ!


 俺を退屈させなかったのは、カリスト様とエレクラ様、それにタカギだけだ。そのカリスト様がぶっ殺されたって聞いた時は、すげぇ驚いた。信じらんなかった。

 だってよ、支配者ですらぶっ殺せる人だったからな。セカイがそう言ってだんだから、間違いねぇだろ。


 死んだ理由は、優しさって奴だ。そうじゃ無ければタカギに殺される筈がねぇ、どんな英雄にも負けはしねぇ。カリスト様は優しかったからな。俺達みたいな孤児を助けてくれた位だしな。


 だから、タカギを助けようとしちまったんだ。カリスト様を馬鹿だと思わない。寧ろすげぇと思う。自分の命を狙ってる相手を助けようなんて、誰が考えるんだ? 例え思った所で、体が言う事を聞かねぇよ。


 タカギが悪いとも思えねぇ。セカイの支配者に操られてただけなんだしな。


 俺が退屈なのは、そんなつまんねぇ事じゃねぇんだ! わかるか? 人は変わらねぇんだ! 強くなろうとも思ってねぇ! 仕方ねぇけどな、そう作られて無いんだからよ!


 でも違うだろ? 競い合うもんだろ?


 イゴーリとパナケラが喧嘩する様に、あの姉妹がソウマに負けまいと頑張る様に、ヨルンが俺に挑む様に、俺がリミローラに挑む様にな。


 独りで黙々と体を鍛えた先に何が有る? それで満たされた気分になるのか? 心を鍛えたつもりでいるのか? 


 馬鹿じゃねぇのか! てめぇが弱い事を認めるから強くなれるんだよ! 比べる相手が居なければ、てめぇの貧弱さがわからねぇだろ! 


 最強だと思っていたカリスト様にも弱点が有った。誰もがそんなのを抱えてるんだ。どんなに強くなってもな。ただのガキなら尚更だろうが!


 最初は楽しかった。軍の奴等は、どいつもこいつも俺より強かったからな。でもな、直ぐにつまらなくなった。

 それは、俺が一番になったからじゃねぇ。奴等の強さには心が無い。薄汚ぇ暴力でしか無かったからだ。


 今の俺を楽しませてくれるのは、仲間達だけだ。でも、そんな退屈は終わりに出来そうだ。何せエレクラ様が来て下さったんだからよ。


 ☆ ☆ ☆


 魔法研究所を後にした私は、軍本部へと向かっていた。そして私は少し躊躇していた。


 恐らくあの子は、訓練場で私が来るのを待っている。そして私を見つけると『エレクラ様ぁ〜! 喧嘩しようぜ、今度は負けねぇからよぉ!』って言うに決まってる。

 せめてソウマに、リミローラの同行許可を得れば良かった。あの子が居れば、喧嘩する気が無くなると思うのに。


 カリストが居なくなって、あの子は寂しそうにしてたし。構ってあげたいんだけど、しつこいからね。今日中にみんなと会っておきたいんだけど、諦めるしかないのかな?

 

「う〜ん、どうしよっかな」

「どうもこうも、手足の骨を全部折ってやれば良いんすよ」

「え?」

「どうもっす。シルビアさん」

「いつから居たの?」

「ずっとっすよ。本物かどうか見張ってたっす」

「リミローラ、貴女……」

「凄いっすか? 褒めてくれてもいいっす」

「うん……凄いね。でも」

「大丈夫っすよ。シルビアさんには結界を張っているんで」

「それを私が気が付かなかったと?」

「そうっす。私にかかれば、朝飯前の体操前のお布団の中っす」 

「意味がわかんないよ」

「そうっすか? ソウマにも言われるんす」


 私は呆気に取られていた。リミローラは今の今まで私の近くにいて、私はそれに気が付かなかった。そんな事が有り得るの?

 それが本当から、私やカーマどころかカリストをも超え、クロア様に至る程の可能性を秘めている。

 だけど、こんな能力を持っている子を、アレが放っておくの? 今までは無事でも、これからも同じとは限らない。


「あ〜、それも大丈夫っすよ。多分、私の才能っす」

「それって?」

「隠れる、覗く、欺くみたいなのが得意っす。あ〜、よく考えると私って駄目な奴?」

「いや、そんな事ないよ」

「そうっすか? それなら、あの姉妹みたいに抱き締めてくれるっすね」

「うん。でも、ここだとちょっと」

「わかってるっす。楽しみにしてるっす。取り敢えず、ヘレイをぶっ飛ばしに行くっす」


 私はリミローラの言葉を聞いて、昔の事を思い出していた。誰が言ったのか忘れたけれど『リミローラが隠れたら、誰にも探せない』と聞いて遊び半分に試した事が有る。

 やろうと言い出したカリストは疎か、魔法なしでは私も探す事は出来なかった。


 虚構と擬態は、貴女とソウマにはピッタリの魔法だったようね。いつも冗談交じりでイマイチ掴みきれないけど、貴方はそうやってみんなを守って来たのね。ソウマが近くにおいていたのは、そういう事か。よく頑張ったね。


「ありがとう、リミローラ」

「うひょ〜、お褒めの言葉を頂いたっす。もう死んでも良い位っす」

「いや、お願いだから死なないで」

「大丈夫っす。カナちゃんの手料理を食べるまで死ねないっす」 

「もしかして、家まで見に来た?」

「そうっす。二人共すっごく可愛かったっす」


 ☆ ☆ ☆


「所でシルビアさん」

「どうしたの?」

「訓練場で待ってるのが、ヘレイだけだと思います?」

「ヨルンも一緒なの?」

「そうだったら、今日中に全員と会えますね」

「喧嘩してたら、貴女が止めるのよ」

「あれれ? もしかして少し前までおばあちゃんだったから、喧嘩が弱くなったとか?」

「そうよ。千年以上も生きてるんだから労ってよね」

「後で肩を揉みますね」

「期待しないでおくね」


 リミローラの言葉に一抹の不安を感じつつも、取り留めの無い話をしていると、直ぐに時間が過ぎ去ってしまう。

 また、往々にして嫌な予感は、想像した通りじゃなくて斜め上を超えてくる。


 訓練場を訪れた私達の目に飛び込んで来たのは、練習用の剣を激しくぶつけ合う二人の男であった。


「いやまぁ。そりゃあさ、音でわかってたけどさ」

「汗がここまで飛んで来そうっすね」

「変な事を言わないでよ」

「それにしても予想外っすね」

「何が? リミローラの言った通りじゃない」

「いやぁ。私は『男二人に迫られる老婆』を想像したんすよ」

「そんなの想像しないで」

「こっちに気が付かないとか、修行が足りてないっすね」

「それより、あの子達を止めてよ!」

「私も混ざるっす」

「はぁ? だから、あの子達を止めてよ!」

「嫌っす。三対一の勝負っすよ」


 リミローラは一瞬で数メートルの距離を縮めると、目にも止まらぬ速さで振り下ろされた二つの剣を掴む。

 そこまでは良い。良く成長したと褒めてあげる。問題はそこからだ。


 リミローラを中心に、三人はゴニョゴニョと話し始めた。そして一斉に私の方を向いた。その目は、子供の様にキラキラしてるとは言い難く、喧嘩が大好きな戦闘狂の目をしていた。


「はぁっはぁっはっはぁ! シルビアとやら! お前の強さを確かめてやる!」


 何を言ってんの? ヘレイは、相変わらず馬鹿なのか?


「ふっ、違うなヘレイ。俺がお前達を下して最強になる」


 そうか、ヨルンも子供のままか。それに比べてパナケラの安心感ったらないね。


「三人でかかれば、倒せるかも知れないっすよ」


 リミローラは調子に乗ってるね。たかだか十年や二十年程度鍛えた所で、私に勝てると思うなよ、悪がき共め!


 そうして、私と三人の模擬戦ならぬ喧嘩が始まった。いや、本当は始めるつもりなんて無かったよ。面倒だしね。

皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。


次回もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ