はじまり
この世界、はじまりの国は、今、封印された魔王の復活の日が近づいていた。
魔王の目覚めをとめるためには、この世界のどこかにあるバラの花園で、聖なる光でしか咲かないバラをさかせなければならない。
そのバラを咲かせるために、私は今日、旅立つ。
私の名前は、ナナ・フオルトム。
胸に、バラの証がある、聖なる光を宿した聖女であり、勇者の力も持つ。だが、その事が原因で、フオルトムの家は、多くの犠牲を払った。
私が、5ヶ月の赤ん坊のころ、家が襲われ、父は私を助けるために、騎士であるサード・マルディオンに私を託し、屋敷に火を放った。そして、私の生存は絶望的だと嘆き、悲しんだ。世間も全焼してしまった屋敷をきき、私の死は、暗黙の事実となり、日々の喧騒のなかで、私の存在は少しずつ忘れられていった。
その間、サードは、私を連れて、各地を転々とし、私を育ててくれた。そして、私は今日12歳の誕生日を迎えることができた。
私には、治癒魔法が優れており、聖なる力は、少しずつ強さを増していった。その一方で、その力を自分の中に漂わせることで、その力を感じとる人間はいなくなった。
「ナナ、12歳になったな」サードが、私に、すずらんの髪留めを渡しながら、目を細める。
「兄さん、ありがとう。」
私は、満面の笑みで、サードを見つめる。
「やはり、ナナの黒髪には、よくにあう。」
私の髪に髪留めをとめながらサードが、優しくささやく。
私とサードは、片田舎で、兄妹として、生活をして半年になる。私が聖なる力を制御できるようになったので、このマーベルの地に、居を構えたのである。
サードと私は、冒険者として、生計を立ており、剣術、体術でも、自分を守る力をつけてきた。
「ナナ、明日は、フォルデンの森にいこう。」
サードが、剣の手入れをしながらいう。
「わかった。じゃあ、そろそろ寝るね。おやすみ」
私は、そういうと自分の部屋へ戻る。
自室に戻り、鏡をみる。
黒髪が、肩までのび、健康的に焼けた顔がそこにはあった。私は静かに、服をずらし、胸元をみる。
そこには、小さなバラが薄く映し出されている。
「久しぶりにあえるのね。」
私は、久しぶりの再会に思いを馳せる。
「‥そろそろねむらなくちゃ」
私はそうつぶやいて、ベットにはいり、めをつぶる。
明日から、新しい旅が始まる。期待と不安で、胸が押し潰されそうになる。私は、ぎゅっと、目をつぶりながら、よが更けていくのを感じていた。