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第8話 9周目。勇者は愚者をその胸で迎えられるか。ボヨヨン

まさかの彼女


令和2年1月4日誤字を修正しました。

〇9周目〇


-勇者メル視点-


結魂コネクトソウルは色々便利だけど、まだ私も使いこなしていない。


上達すれば、会話はもちろん、相手を転移させることだって可能になる。


とりあえず、会話ができるか試しましょう。


リカ、リカ、聞こえる?



駄目ね。

というか、これってあちらが無視していてもわからないわよね?


まあリカが無視なんてするはずが無いわよ。


『ケンタロー王子様!メルの居ないうちに私と結ばれて!』

『や、やめてくれ!俺にはメルという心に決めた人が!』

『ふふっ、どこにも逃げられないわよ!』

『やーめーてー!』


ケンタロー王子様の危機だわ!



駄目ね、妄想が過ぎたわ。


リカが私を裏切るはずなんてない。


いえ、裏切ってもいいように結魂コネクトソウルをしているのですもの。


リカが先に結ばれても、二人は一心同体。

私も結ばれる運命なのだから。


…でも、やっぱり私が1番にしてほしいわ。


だって、私のほうが先にケンタロー王子様に出会っているのですもの!



とりあえず、危険を探すところから始めるわね。


ケンタロー王子様が助けに来てくれるように!



-不遇な親友リカ視点-


ぎゅっ


半袖とすごい短いズボンなので、肌寒くてケンタローさんにしがみつきます。


『それは体操服とブルマっていうんやで』


ヘルプ君の声を聴くためにも、振り落とされないためにも、ケンタローさんにしがみつかないといけないんです。


メルを裏切っているわけじゃないから!


『…リカ…リカ…』


「えっ?メルの声?」


そういえば、結魂コネクトソウルは心で会話もできるのよね。

練習中には会得できなかったけど。


メル!メル!


だめだ、返事が無い。

向こうの声も聞こえなくなったし。


「ヘルプ君、結魂コネクトソウルってわかります?」

『魂同士結び付けて色々ステータスを共有したりできる奴やな』

「実は、メルと結魂コネクトソウルしてて」

『レズやったんか』

「ええっ?!」

「ちちちち、違います!メルが勝手に!ケンタローさんも、勘違いしないで!」

「ごめん」

『なんや、せっかく面白い三角関係になるかと思ったのに』

「三角関係?」

「いや、何でもない。な、ヘルプ君」

『まあ、それでもええけどな。鈍感系主人公』


鈍感系主人公ってケンタローさんのことかしら?


別に私はアプローチとかしていないから…


えっと、


こんな恥ずかしい服でケンタローさんに密着しているわね。

明らかに誘惑しているレベルだわ。


そりゃあ、ケンタローさん、最初は怖かったけど、意外と純情で、優しくて、顔もちょっとだけ、ちょっとだけ好みかも。



そういえば、このブルマの下って履いて無いのよね。


どうしようかしら、頼むべきかしら?

女神さまの下着を釣ってもらうのもねえ。


そもそもパンティくださいなんて言うの恥ずかしいんですけど!


『恥ずかしくても、履いてないのはあかんやろ』


そうなのよねえ。


『なあ、リカちゃん』


なにかしら?


『いや、お前さっきから、普通に心の中で俺と会話しとるやろ』


そうね。


『ずっと話していて、たった今、通じ合うレベルが上がったみたいなんや』


そんなのあるのね。


『それ、ケンタローもできるようになったんや』


え?


良く見るとケンタローさんの顔が真っ赤だわ。



-主人公ケンタロー視点-


ななななな。


何か聞こえてはいけない声が聞こえる。


『そりゃあ、ケンタローさん、最初は怖かったけど、意外と純情で、優しくて、顔もちょっとだけ、ちょっとだけ好みかも』


『そういえば、このブルマの下って履いて無いのよね』



『良く見るとケンタローさんの顔が真っ赤だわ』


もう限界!

必死に何も考えないようにしてたけど、無理!

ごめん!


「えっ?!ケンタローさん、私の心の声が全部聞こえてたの?!」

「すまん、わざとじゃないんだ。でも、これからはヘルプ君と話すとき以外は俺の背中から少し体を浮かせてくれたほうがいいよ」


ぎゅううっ


「え?」

「ケンタローさんは、私のこと好きですか?」


ちょ!何を聞いてるの?!


「メルのほうが好き?」


え、えっと、その、だって、だめ、離れて!聞かないで!


「ふふっ、逃がさないわよ」

『おお、急に積極的になったな』

「だって、ケンタローさん、いじめたくなっちゃうんですもの」


だって俺はっ!…が好きなんだ!


「『ええっ!!』」


ヘルプ君とリカちゃんの声がハモった。




-勇者メル視点-


『メル!メル!』


あら?

リカの声だわ!


リカ?!


『メル!やっと通じ…!実は…』


途切れ途切れですわね。


『それで、ケンタロー…が、…のことを好きみたいなの』


一番肝心な部分が聞こえないわっ!


『ヘルプ君が…で、…女神さまの服を…』


ああっもう!


ヘルプ君ってなに?

君だから男性よね?


女神さまって、まさか…


ケンタロー王子様は女神さまのことが好き?!


こんなひどい目にあわされているのに?


『俺は女神さまの事が好きなんだ。こうやって色々俺をこき使ってくれるからな』


Mなのね、ケンタロー王子様はMだったのね!


『メル、馬鹿なの?』


ああっ!今度ははっきり聞こえたわ!


というか、妄想がリカに伝達されてた?!


『うん、しっかり』


今だけすごくはっきり聞こえるわよ!


じゃあ、教えて!

ケンタロー王子様は誰が好きなの?!


『皆さんが好きだって!』


皆さんって、私と、リカと、女神も!まさかヘルプ君って人も?!


ハーレム願望なの?!


ううん、別に勇者なら複数の異性を妻にしたり夫にしたりはするわよ。


リカなら問題ないわ。


女神さまって良く知らないけど、まあ神様だしありかもしれないわ。


でも、ヘルプ君って何?!


何者なの?!


ねえ、教えて!



ああっ!また通じなくなった!



-不遇な親友リカ視点-


どうしよう。


すごい誤解をさせたところで通じなくなってしまったわ。


『それにしても、まさかケンタローが前の世界の彼女を未だに好きとわなー』

「彼女じゃない!ただの幼馴染だ!俺が一方的に好きなだけで」

「やっぱりケンタローさんは純情なんですね」

「ううっ、言うんじゃなかった。というか、心の声が聞こえるとかひどいよ」

「でも、私がメルに『ミナさん』って言ったのを『皆さん』に聞き間違えられたみたいで」

『ハーレム願望って思われたんやな』

「最悪だーっ!」


別にメルのことが好きじゃないなら、最悪とか思わなくてもいいのに。


でも、ああ、好きなのは私じゃないのかー。

会ったばかりだから当然よね。


「ところで、『皆さん』の中に『ヘルプ君』も入れられてましたよ。ふふっ、笑っちゃいますね」

『は?』

「え?」

『わわわわ、わたしは、そのお、ケンタローのことなんか全然なんとも!』

「え?わたし?」

「え?女性の声?」

『ああっ!しもうた!』



-女神ジュライヌ視点-


削除依頼通りましたわ。


もう、個人で保有しているのはあきらめるしかありませんわ。


まったく、誰なのよ、高貴な私の服を釣るなんて!


ビービービービー!

ビービービービー!


この音は!


さっき設置した『メルちゃん危険教える装置(仮)』の警報音だわ!


どうしたのかしら?


ああっ!


メルちゃん、どうして捕まっているのよ!



-勇者メル視点-


「兄貴、もう家に帰しません?」

「俺もそうしたいけどな」

「駄目ですわよ。このまま私をしっかり閉じ込めてください」


そう、今私は盗賊の根城にいる。


すごく強い盗賊だって聞いたから、依頼を引き受けもせずに勝手に乗り込んだのよ。


だったら、激弱。


だって、この人たち、盗賊稼業始めたばかりなのよ。


すごく強い盗賊は引っ越した後で、その跡を格安で譲ってもらって、これから盗賊をやろうというときに私が来て、こてんぱんに。


だから、こうやって捕まえてもらっているの。


ふふっ、囚われのお姫様(自称)を迎えに来る王子様はまだかしら?


「あねご!食事です」

「あら、ありがとう」

「大した材料も無くて、その程度ですまねえっす!」

「いいのよ。でも、すごくおいしいわ。あなたたちも盗賊やるより、ここで旅人向けのお店でも開いたら?」


「兄貴も俺っちもこんな顔ですぜい」


確かにヒャッハーな感じね。


「じゃあ、兄貴から焼き肉をもらってきまっさあ」


口調はともかく、意外と礼儀正しいのよね。


「ヒャッハー!お肉は強火で焼くぜー!」

「さすが兄貴!見事な火炎放射器さばきっす!」


火炎放射器なんてあるのね。

転生して記憶が戻ってから初めて聞いたわ。


そういえば、私の前世ってどうして思い出せないのかしら?




キキーッ!


『危ない!』

『ああっ!』

『きゃああ!』

『わおーん!』


どん!


どすっ!


がん、どかんっ!


ぴよぴよ


いろんな音や声が記憶に残っているわ。


いったい、どれが私の声なのかしら?


私って、どうやって死んだのかしら?



-不遇な親友リカ視点-


「し、下着、釣れたからさ」


結局ケンタローさんは、わたしのために下着を釣ってくれた。


「うう、その、もう今更ですけど、見ないでくださいね」

「大丈夫、目をつぶっているから」


そう言って、ケンタローさんは私を背中からぎゅっと抱きしめてくれる。


そうしないと、うまく履き替えられないから。


「ケンタローさん」

「何?」

「もっとしっかり抱きしめてくれないと、落ちそう」

「ごめん!」


ぎゅうううっ


痛いくらいに抱きしめてくれる。


うん、さっきのでも十分だった。


でも、でも、このくらいの役得はいいよね?

あっ、しまった。


こんなにくっつくと、心の声が聞こえちゃう。


でも、いいや。


私の事好きじゃないなら、困っちゃえ。



-主人公ケイト視点-


リカちゃんが積極的すぎる。


いかん、余分なことを考えるんじゃない。


可愛いけどさ、でもさ、


「えへ、うれしいな」


聞こえてるしーっ!


「体離さないでね。落ちるから」


ううっ!

これは拷問ですかっ!


『おい、ケンタロー!』


あっ、実は女性だったヘルプさん・・


『目をつぶっていたら見えんやろけど、目の前に穴が開いてるで』


あっ…



-女神ジュライヌ視点-


来たわねケンタロー!


って、ちょっと距離が近かったわ。


うわっ!すごい風圧!


近いとこんなふうなのね!



やっと風が収まったわ。


って、何も言えなかったじゃないの!


録画したものを確認よ。


あら?

私のスカートが風でめくれて…


…ななな、どうしてめくれたスカートの中が何も履いてないのよっ!


いつの間に?!


生放送じゃなくてよかったわ!

でも、本当に誰の仕業なのよ!


…それ以前に、今、私のスカートの中、ケンタローに見られたかしら?


もし、見ていたらどうしましょう?


キル?



-主人公ケンタロー視点-


はわわわわ。


とんでもないものを見てしまった。


「ケンタローさん、目をつぶっているはずじゃなかったのかしら」

「それはヘルプさんが穴が開いたって言うから」

「冗談です。ケンタローさんはちょっと真面目すぎです」


もう、からかわれてばかりだな。


「今度は私が魔法で減速して、メルが受け止める作戦になってます」

「そうか。うまくいってほしいな」

「それで、その、減速の魔法は高度な風魔法で、両手を使うんです」

「つまり、また後ろから捕まえていればいいんだね」

「捕まえるじゃなくて、抱きしめていてください」


もうやけくそだ。


ぎゅううううっ


「スピードが速すぎるので、減速のための風魔法の他に、プロテクションもかけますね」

「プロテクション?」

「バリア的なものです」


リカが魔法を唱えると俺たちの周りを白い光が覆った。


「透明じゃないんだ」

「不慣れだと透明にできないんです」


いよいよ出るな。


さあ、どこだっ!


って、古城?!


あっ、あの塔の上に人影が!


「あれメルです!」

「普通に居るように見えるけど?」

「多分、閉じ込められているのかと」

「窓開いてるよ」

「塔は高いですし」

「勇者だよね?」

「うん、きっと自分でピンチを演出しただけです。ごめんなさい」


俺はすっとリカの頭をなでる。


「いいよ、俺のためだろ。ありがとうな」


『はう、もっと撫でて…ああっ!心の声がっ!』


迫ってくる塔。

いや、メルちゃん。


そして風魔法で減速された俺は彼女の大きな胸へ…


ボヨヨーン!


へ?



-勇者メル視点-


ついにこの時が来たわ!


リカもうまく魔法を使っているみたいね!


さあ、私も受け止めるための強化魔法をたっぷりかけたこの胸でケンタロー王子様をお迎えするわ!


「ケンタロー王子様っ!」


ついに、ついに私の胸に!


ボヨヨーン!


え?



-女神ジュライヌ視点-


何よあれ!


全然ピンチじゃないわ!


それにケンタローを受け止められるところだったわ。


思わず、スキルポイントをメルちゃんにぶっこんで、『反射胸バルタン』のスキルを与えてしまったわよ。


こんなことしたら駄目なのですけど、まあ、罰則規定ないからいいわよね!


それにしても、見事に跳ね返って飛んで行ったわね。

ケンタローの顔や体が白っぽいもので隠れて見えなかったのが残念だけど。


あれ、何かのスキルね。

愚者のスキル一覧に、あんなのものあったかしら?


まあ、いいわ。


さあ、動画をアップするわよ!

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークとか感想とかいただけると大変嬉しいです(^ー^)♪


次回は新年、1月4日18時更新です。

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