第6話 7周目はヒロインの親友と二人で
まさかの二人旅
○7周目○
-女神ジュライヌ視点-
えっ?
922億再生、45位?
思ったより伸びていませんわ!
コメントは…
『大失敗』
『自然が一番』
『メルちゃん見えない』
『モブの体が貧相で見えても意味なし』
『実用性なし』
『使うなw』
『次回に期待』
『期待』
再生数が少し伸びただけでも良かったような内容ですわ!
こうなったら、なんとか再生数を稼がないと!
『モブの体が貧相で見えても意味なし』
そうですわ!
貧相なモブじゃなくて、私の高貴で美しい姿を見せて再生数を稼ぎますわ。
さっそく準備をしないと!
-勇者メル視点-
リカが行方不明になった。
風呂場が崩れて、怪我人どころか行方不明者が出たのだから、大騒ぎになった。
そして、学校が『教育行為』という名目で、男子生徒に女子風呂を覗かせるとしていたのが、学校に多額の寄付をしている男子生徒=貴族の親たちの要望であることが判明。
だから、貴族の女子生徒は大浴場ではなく、部屋のお風呂に入らされていたのですね。
王様から学校長は叱られてクビに。
王国立である学校は関係者総入れ替えで一気にクリーンにされたの。
私を狙った馬鹿が、警備員を買収するとか、そういうことはもう出来なくなった。
それはいいのだけど、リカは戻ってこない。
きっと、あの網でケンタロー王子様を捕まえようとして、一緒に飛んで行ってしまったのだわ。
リカ、無事かしら?
いいえ。
ケンタロー王子様は無事かしら?
リカの毒牙にかかっていないかしら?
-主人公ケンタロー視点-
「いやー!」
「やめろ!何もしないから!」
「そう言って、私を毒牙にかける気ね!」
「しないって」
リカっていう子らしいが、絡まった網をほどこうとすると暴れて困る。
「もういいや。このままのほうが、万が一落ちることもないからな」
「それより、服が欲しいわ。この空間?って寒くないけど飛んでいるからスースーするのよ」
「だから俺のシャツを」
「そんなものいらないわよ!」
とりつくしまもないな。
「よし、ヘルプくん。彼女の服を何とかできないか?」
『そうやなー。スキルに『釣り師』ってあるから、それを取るんや』
「いや、服が欲しいんだけど」
『釣り具とか、釣り師が着る服とか作れるで』
「おお!」
『材料いるけどな』
材料って?!
『網から作れるのは、せいぜい下着一枚分やな』
「ねえ、何しゃべっているの?独り言?」
リカが肩越しに身を乗り出してくる。
裸を嫌がっているくせに、こんなにくっついてくるなよ。
『独り言とちがうで』
「わっ、何?何か聞こえる?」
『ケンタローにしっかりくっついているから、会話ができるんや』
「しっかりくっついて?いやっ!なにさせるのよ!…あら、聞こえないわ」
慌てて体をはなすリカ。
でも、そのせいで声が聞こえなくなったみたいだ。
「かくかくしかじかまるまるうまうまというわけで、ヘルプくんってのが居るんだ」
「触れているのに、聞こえないわよ?」
「たぶん、さっきくらいに『しっかりくっついて』いないと」
「…わかったわよ」
「…」
「反応くらいしてっ!どうせ私は小さいわよ!メルみたいに魔道具で隠すくらいの爆乳じゃありませんわよ!」
「十分感じるから、我慢しているんだが」
「あ、そうなの?そうなんだ。これで十分なの?ふーん」
ぐりぐりぐり
「や、やめてもらえる?」
「ふふーん。何だ。変な奴と思っていたけど、結構純情なんだ」
いかん、立場が逆転した。
「それで、ヘルプ君。私にも教えてもらえる?」
『おう』
…
…
…
「それで、女神が原因なわけね?」
「たぶんな。何度も繰り返させられている」
「いったい何年飛んでいるのよ?」
「俺的には1日もない」
「ええっ?!」
死んだりしているから、正確とは言えないけどな。
「さっきの『釣り師』のスキルで、思いついたのがあるの。これ、借りれる?」
リカが指示したのは、ベルトのバックルだった。
-女神ジュライヌ視点-
準備完了よ!
まず、水着!
ビキニも考えたけど、そこまでは見せすぎよね!
ワンピースの水着よ!
そして、この「7」と書かれたボード!
水着を着て、このボードを持って、目の前を通過していくケンタローの前でくるりとまわりますのよ。
そう、これはラウンドガールよっ!
女神のラウンドガールなんて、史上初、神史上初!
これで1000億再生の壁を超えるわよ!
さて、あとはメルちゃんのどのピンチに使おうかしら?
-勇者メル視点-
もしリカが一緒に飛んでいるなら、次に戻って来るのは何年も先かもしれない。
ケンタロー王子様は全然年を取っていないもの。
きっと、飛んでいる間は年を取らないか、時間を飛び越えて助けに来てくれているんだわ。
急がないと、私の方がリカより年上になっちゃう。
あと、リカが巻いていたバスタオルは見つかったのよね。
つまり、全裸よね。
ケンタロー様を誘惑していたら、絶交…にはしないけど、しないけど、うーん。
リカとなら、一緒でもいいかな?
いやーっ!
何を考えているの私!
それよりも、ピンチを作らないと!
そうだわ!
次の宿題は冒険者ギルドで実際に依頼を受けるところだわ!
難しい依頼をこっそり見ておいて、そこに行けば…ピンチが作れるわ!
-主人公ケイト視点-
「本当に、これでうまくいくのかな?」
「やってみないとわからないでしょ?」
『チャンスは一回きりや。頑張りや』
すると、目の前に黒い穴が開き、俺とリカはそこに飛び込む。
今回は前方の黒い穴まで結構距離もあり、スピードも遅めだ。
しかも、なぜか女神は水着を着て、頭の上の「7」という数字を持って、向こうを向きながらポーズを取っている。
チャンス!
俺は、網の一部をほどいて作った釣り糸とベルトのバックルを使って作成した『投げ釣り道具』を投擲した!
-女神ジュライヌ視点-
ふふん。
歩き方も練習したのよ。
そして、ここでポーズを決めるっ!
生放送だから、再生数というか視聴者数ですけど、目に見えて増えるのがわかるわ!
やっぱり生放送は最高ね!
ひゅんっ
あら?なんの音かしら?
しゅぽんっ!
あら?あらら?
何かしら?!すごい勢いで視聴者数が伸びていますの!
すごいわ!
コメントも多すぎて、まったく読めませんの!
あとでじっくり読みますわ!
さあ、そろそろ画面を切り替えて、メルちゃんの場所を映すわ!
ついでに私の水着も着替えて、
水着が
無い?
いやあああああああああああっ!
-勇者メル視点-
くっ。
有機栽培野菜を食べている穏和なオーガニックドラゴンかと思ったら、鬼竜だったなんて。
冒険者ギルドには文句を言わないと。
勝手に依頼文書を見た私が悪いから何も言えないけど。
それに、きっと助けが来るわ!
ケンタロー王子様がっ!
キラッ!
見えた!
「ケンタロー王子様っ!…え?」
ケンタロー王子様の後ろにしがみついているのは、リカだったけど、
何で水着姿なの?
-主人公ケンタロー視点-
女神さまの服を釣るって、まさかうまくいくとは思わなかったけど、よくこんな体勢で着れたなあ。
「私、早替えは得意なのよ!それより、そろそろ降りるわね」
「いや、どうやって?」
「あ」
考えてないよな。
「次の周回にする?」
「死ぬかもしれないのよね?」
「生き返るけどな」
「私も?」
「あ」
いかん、女神はリカがいることに気付いていなかったら、死んでも生き返らせないかもしれない。
「くっ。俺はどうなってもいいから、お前だけは助ける!」
俺は『芸事張扇』を呼び出すと、リカと結びつけている網をほどく。
「ちょ、ちょっと!」
「俺を信じろ!」
「う、うん」
俺は網をほどくと、リカをそれでぶっ叩いた。
あまり痛くないようにお尻を叩こうとしたけど、体勢が悪くて、胸を叩いてしまった。
すまん。
「ああーっ!」
飛ばされて離れていくリカ。
でも大丈夫だ。
『芸事張扇』の効果で、どこかにぶつかっても体力1は残るから。
たった1だと危ないから、あの子にも教えないと。
「メル!リカを助けてくれ!」
-勇者メル視点-
この日の為に、ケンタロー王子様を受け止める魔法を準備していたわ。
でも、ケンタロー王子様はリカをこちらに跳ね飛ばしてきましたの。
「メル!リカを助けてくれ!」
ケンタロー王子様が私の名前を?!
そうか、リカが教えてくれたのね!
私は闇魔法を展開して、触手で優しく飛んできたリカを捕まえます。
闇魔法しかなかったのよ、捕まえられそうなのが。
うねうねうね。
「メル、ただいまー」
「リカ、お帰りなさい」
-女神ジュライヌ視点-
わわわわ
私の高貴なゼンラが、1000億再生とか、ダレですの、勝手にアップした奴、コロス。
はっ?!ケンタローは?
あっ!オーガドラゴンに『芸事張扇』を食らわせましたわ!
でも、あっさり前足で弾き飛ばされましたわね。
はい、回収。
その隙に、メルちゃんが倒したみたいですわ。
今回は録画できなかったから、もういいですわっ!
それより、神Tubeに連絡して、私の画像、削除してらもわないと!
-勇者メル視点-
「どうにかなったわね。でも、リカしか助けられなかったわ」
「ねえ、いつまでこの触手に捕まってないといけないの?」
うねうね
うねうね
「質問していい?」
「何を?」
「ケンタロー王子様と何をしていたの?」
「何もしてないわ。空を飛んで、女神の服を奪ってきただけ」
本当かしら?
女神、そんな水着みたいな服着てるんだ…。
「その触手は嘘をつくときつく締め上げるのよ」
「うそじゃないもの。ほら平気でしょ?」
「じゃあ、ケンタロー王子様のこと、好きになった?」
「ぜーんぜん」
-親友リカ視点-
全然好きでもなんでもないわ。
『俺はどうなってもいいから、お前だけは助ける!』
『俺を信じろ!』
ちょっとはかっこよかったかな…
ぎゅうううっ
私の体を触手が締め付けてくる。
「はうっ?!」
「リカ、嘘を付いたわね?」
「な、なんで?」
「好きになったのね?誘惑したの?」
「私みたいな胸のない女の子なんて、誘惑しても好きにならないわよ!」
『十分感じるから、我慢しているんだが』
あいつ、私くらいの胸でもいいんだ…
ぎゅうううっ
ぎゅうううっ
「はううっ!」
「リカ…」
「待って、待って。話し合いましょう。こんな状態では、話し合いもできないわ」
「ふふふ。リカ。やっぱりそんなことだと思ったわ」
「ゆ、許して!大丈夫だから!メルの王子様を奪ったりしないから!」
まずい、メルのあの眼は、街中で言い寄ってきた男をぶちのめして股間を潰した時の眼だわ!
女として終わらされる!
メルは私の胸を掴むと、魔法を唱える。
「『結魂』!」
「はうっ!」
何かすごい魔力が体を包んだわ。
「ふう、これで、リカの魂と私の魂が結びついたわ」
「な、何で?」
「私の魂とリンクさせて、色々なことが出来るのよ」
「いったい何をさせる気?」
するとメルはすごく黒い笑顔でこう言った。
「もう一度、ケンタロー王子様と一緒に飛んできて」
お読みいただきありがとうございました。
次回は12月21日土曜日18時更新予定です。