第5話 6周目はとラブる満載で
まさかの展開!
書いている本人が驚いてどうする。
次回からどうしよう(^o^;)
○6周目○その2
-勇者メル視点-
露天風呂。
タオルを巻いて。
準備は出来た。
いつでも大丈夫。
もし、見えちゃってもいいよね。
ケンタロー王子さまだったら。
でも、無節操に男湯と女湯の間の壁を破壊しようとする音が耳障りだわ。
「『魔滅雷迅』!」
私は指先に一撃必殺の雷を宿します。
そして、壁に穴が開いた瞬間にこれを打ち込み、敵を倒し、穴を溶解させて閉じるのです。
「私らまで感電させる気っ!」
ぱかーんと私の頭がはたかれます。
ショックで魔法が霧散しました。
「あ、リカ」
「『あ』じゃない!そんなに本気を出さなくてもいいって言ったでしょ!」
「でも、万が一とかあるから」
「ないないない」
確かにリカの作戦通りなら、男どもに裸を見られる可能性は0%だわ。
でも、ピンチでないと駆けつけてくれないから…。
「リカ、私、あれ、着てないから」
「ええーっ?!何しているのよ!」
リカに渡されていた、肌色の水着。
あれをこっそり着込んで、見られてもはずかしくないようにしていた。
でも、私は本当のピンチにならないとだめ。
だから、着てくるわけにはいかなかったの。
「というわけで、本気で戦わないと見られるかもしれないわ。必殺の…」
「結局ピンチじゃなくなるから、駄目っ!」
-女神ジュライヌ視点-
始まったわね。
ケンタローを一瞬ここに呼び出して、お決まりのセリフを言って、今回は『ラブコメ主人公』のチートを付けてあげるわ。
さあ、男子生徒達がんばりなさい。
その壁をそれなりに突破したところで、ベルリン名物の壁崩壊槌を送り込んであげるわ。
メルちゃんの裸は拝ませないけど、他のは見れるからよかったわねー。
よし!今よ!
-主人公ケンタロー視点-
どうしたものか。
『愚者』のスキルセットがあまりにひどい。
だけど、使えないわけじゃない。
きっと、組み合わせ次第でかなりの能力を発揮できるはず。
でも、あいにくとこの状況ではなかなか頭が回らない。
せめて次に呼び出されるまでに何か1つくらい…
そう思っていたら目の前に黒い穴が開いた。
またかー。
「おお、ケンタローよ!」
「こら!馬鹿女神!いい加減にしろ!」
「(無視)あなたは次の場所に転移しますので、チート能力を差し上げましょう」
「どうせろくなものじゃないんだろ!」
「(むかっ!)この超強力なのチートをもらっても、そんなことが言えるかしら?」
「え?!」
俺の体に力が流れ込んでくる。
これはすごいチート能力?
黒い穴をくぐった俺はすぐにステータスを確認した。
追加されたのは以下のスキルだ。
『ラブコメ主人公』
何だこれ?
どっかできいたことあるぞ。
これ、かなりヤバくないか?
「おい、ヘルプくん。この能力を教えてくれ」
『チート能力は専門外やけどな。ま、ええわ。教えたる』
あいかわらずの関西弁だな。
『これは目の前に女の子がいると突っ込んで行って、いやらしい体勢になってしまうっていうチート能力やな。いわゆるラッキースケベってやつや。よかったなー。いいチートもらえて』
いらんわっ!
いや待て。
不本意ではあるが、いやらしい体勢になってしまうのであれば、そこに止まるってことじゃないの?
ついに着陸できるのか!
『刑務所直行やけどな』
それを言うなっ!
じゃあ、どうしろって言うんだよ!
『主の機嫌でも覚えたらどうや?許してもらえるかもしれへんで』
「フライング土下座させる気かっ!」
-勇者メル視点-
壁にひびが!
女生徒たちももう限界だわ。
その時、空の彼方から飛来するものがあったの。
ああ、あれは間違いない。
「ケンタロー王子様っ!」
私は手を振りました。
こっちにまっすぐ向かってきます。
いえ、角度的に壁に群がっている男子生徒達に直撃しそうなコースですね。
「メル!あのコースだと、たぶん、壁に当たるわ!」
「え?どうして?」
「そういう計算は得意なのよ!」
そういえば、リカは着弾地点の計算とか得意でしたわね。
それで、男子生徒に当たらず壁に当たる?
いったい、何をされるおつもりなのですか、ケンタロー王子様。
-主人公ケンタロー視点-
見えたのは露天風呂。
遠目でも男女の違いは分かる。
このコース。
壁に群がっている男子を弾き飛ばしつつ、壁をぶっこわすコースだ。
つまり、俺がのぞきをしようとしている男子を吹っ飛ばすものの、壁を壊して、チート能力でエッチなことをしてしまうと?
「させるかあっ!壁に当たる前に『下降回避』!
するとすかさずヘルプくんがつっこんでくる。
『それは攻撃されないと使えんで』
え?それなら!
「おい!お前ら!こっちを見ろ!」
俺の接近に気付いた奴らが、邪魔をされると思ったのか、こちらに向けて魔法攻撃をしてきた。
チャンスだ!
「『下降回避』!できた!」
俺は火の矢を下降回避でかわし、そのまま壁のはるか手前で水面に突っ込んだ。
ぱしゃん!
ぱしゃん!
はい?えっ?
どうして、俺は水の上で跳ねているんだ?
まさか、平べったい石を水面に投げると跳ねる『水切り』ってやつ?
普通はこんなのありえないだろ。
いや、ありえる。
俺は今、『ラブコメ主人公』のチートを持っているんだった。
そして、俺は壁に激突した。
-女神ジュライヌ視点-
盛大に壁は壊れ、男子生徒たちはそれに捲込まれて沈黙。
これで女子風呂を覗く奴らはいなくなったわ。
そして、そのままケンタローは水面をはねて、目標のメルちゃんの胸にまっしぐらよ!
カメラの角度良し!
ここからならケンタローが邪魔で、メルちゃんの大切なところは映らないわ!
サバアッ!
え?何今の?
私はうっかりしていた。
メルちゃん以外はモブだと思って油断していた。
女風呂の水中から現れた、巨大な網。
それがケンタローに絡みついて、今にも止められそうになっている。
速度低下!
もう限界、だわっ!
「強制回収!」
私はケンタローの目の前に黒い穴をあけて、網ごとケンタローを回収しましたわ。
ああ、あぶなかったわ。
しかし、誰の仕業だったのかしら?
それらしい人は、メルちゃんの側にいないみたいだけど。
-勇者メル視点-
壁が破壊されて、その向こうにぷかぷか浮いている男子生徒達。
そして、水面をはねてくるケンタロー王子様。
「私のところに、来てっ!」
両手を広げて待ち構える私。
大丈夫。きっとうまくいく。
そしてケンタロー王子様は私の目の前まで来て、
サバアッ!
水中から現れた巨大な網。
これがリカの考えた罠。
これでケンタロー王子様を捕まえられるはず。
網にケンタロー王子様がひっかかり、その速度が落ちていき…
不意に現れた黒い穴がケンタロー王子様と網を吸い込んで、あっと思う間もなく消えてしまいました。
そんな!
「リカ、失敗でしたわね」
ん?
「ねえ、リカ?」
リカの返事は無かった。
-主人公ケンタロー視点-
あ、あぶねー。
あやうく、いつもの女の子に体当たりするところだった。
露天風呂でそんなことになったら一大事だ。
いや、むしろ網で止められた方が良かったのか?
止まったよな?
でも、『ラブコメ主人公』があると、網くらい突き破るかもしれないな。
しかし、網が絡んだまま飛ばされて、思ったように動けないや。
「なあ、ヘルプくん。この網をほどけるようなスキル無い?」
『あるけど、まず現状把握すべきやないか?』
「現状把握?」
「そうよ、気づきなさいよ。王子様」
「王子様って何?え?君は?!」
俺の絡んでいた網に一緒に絡まっていたのは、見たこともない女の子だった。
「ちょっとだけ、お願いしてもいいかしら?」
「はい?」
「あのね、私、今、全裸なの。巻き込まれたときにタオルが落ちたのよ。だから、この薄暗いところから抜け出す前に、何とかしてもらえないかしら?」
ええっ?!
「じゃあ、俺のシャツを」
「ちょ、脱ぐ気?」
「でも他に服が」
「待って、動かないで!ああっ!」
「わあっ!」
絡まっていた網を引っ張ってしまい、さらにややこしく絡まる。
ふにょん
たぶん、俺の頭の後ろにあるのは、アレだよなー。
『ラブコメ主人公』のチート能力は伊達じゃないのか。
顔じゃなくてまだ良かったけど。
「王子様…いえ、ケンタローさん」
「君、どうして俺の名前を?」
「色々事情があるのよ。そちらにもでしょうけど。でもね。まず、ぶっ叩いていいかしら」
ああ、仕方ないね。
「どうぞ」
びったーーーん!
お読みいただきありがとうございました。
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次回は12月14日土曜日18時更新です。