第4話 6周目でヘルプくんをゲット
更新確定押し損ないましたm(_ _)m
話が細かくなってきたので、1話ごとに1周はできなくなりそうです。
○6周目○
-勇者メル視点-
今日も何も問題ない1日でした。
それが私にとって一番の問題なのに。
何か危険な目に合わないとケンタロー王子様は現れません。
だからって、自分から失敗するとか難しすぎるわ。
「ねえ、聞いてる?」
「あ、ごめん、リカ。えっと、修学旅行の話よね」
帰り道、親友のリカと修学旅行の話をしているところでした。
「それでね、宿泊先は有名な温泉旅館なんですって」
「温泉?いいわねえ」
私はあまり情報通ではないので、リカの情報は本当に頼りになります。
「でも、そこの女湯はいつも覗かれるのよ」
「え゛?」
ちょっとなによそれ。最悪ですわ。
「それがね、これも授業の一環で、男子は覗くために、女子は覗かれないようにがんばりなさいって」
「さ、最低の学校だわ」
思わず鳥肌が立ちました。
ちょっと待って。
もしかして、これもピンチかしら?
「覗かれる時にケンタロー王子様が助けに来てくれるかも!」
「メル?あなたがたまに言う、その王子様って一体何?」
「え?たまに?声に出てた?!」
「いつも出てるわよ。妄想だろうってほうっておいたけど、修学旅行前に医者に…」
「妄想じゃありませんの!本当ですわ!」
私は声を大にして主張します。
そしてリカに、子供の時からの不思議な話をしました。
「すごい妄想ね。もう設定が完璧だわ」
「リカでも信じてくれないの…」
「ちょ、そんな顔しないで!冗談よ!信じるわよ!」
本当かしら?
「それで、ステータスは見れたけど、これからどうしたらいいかなって」
「そうねえ。覗きがあった時に、その王子様が助けに来ること前提で」
「前提で?」
「ね、ね、いっそ罠張っちゃう?」
ムフフと口を押えて、いたずらっぽい笑みを浮かべるリカ。
「罠?」
「準備は任せて!」
何、このやる気?
まさか?
「ねえ、リカ」
「何かしら?」
「王子様は渡しませんからね!」
「要らないわよ!」
「リカ!私の王子様がいらないって言うの?!」
「どっちなのよっ?!」
私のものにしたいけど、要らないっていわれるのも嫌なのよ。
-女神ジュライヌ視点-
暇があると下界のメルちゃんの様子を見ていて、修学旅行で覗きイベントがあるところまでは突き止めたわ。
そしてようやく、私の完璧な計算式ができたのよ。
あの露天風呂にメルちゃんが入る。
男どもが覗こうとする。
メルちゃんが撃退する前に救世主を送り込む。
そう、この角度よ。
するとあら不思議。
男湯と女湯の間の壁が壊れて、丸見えになるのよ。
その直後に覗き魔がメルちゃんのあの大きな胸に突入。
うっかり避けられないように、ケンタローには『ラブコメ主人公』のチート能力を付けてあげるわ。
カメラワークも考えてあるから、メルちゃんの全裸は見えなくなるのよ。
それからメルちゃんがとっさにケンタローを叩き落として、水しぶきが上がって、水中でケンタローを回収して動画は終了。
動画閲覧の男神どもには、メルちゃんの全裸は拝ませないわ。
半裸くらいは見えてもいいわよね。
他のクラスメイトはサービスで見えてもいいわよね。
そもそも神動画に規制なんてありませんもの。
メルちゃんはヒロインだから、あえての自主規制ですわ。
ふふふ。
修学旅行が待ち遠しいわ。
-主人公ケンタロー視点-
『レベル:1(経験値ストック有)』
ステータスに表示されているこの一文が唯一の希望。
経験値を消費して、レベルを上げたり、スキル取得とかできるはず。
「レベルアップ!スキル取得!経験値使用!」
色々言ってみるけど反応が無い。
何が足りないのだろうか?
くそう!
ピッ!
ん?ステータス画面を叩いたら、何か聞こえたような?
『経験値を振り分けて下さい』
総経験値:120000
レベル経験値:0
スキル経験値:0
ステータス表示は手がすり抜けるのにタッチパネル式?!
えっと、120000だけど、どう振り分ければいいんだ?
とりあえず、止まれるようなスキルがほしいな。
でも、何ポイント振れば、何が得られるかさっぱりわからん。
ヘルプ機能無いのかな?
『ヘルプ』
あれ?何かヘルプの表示が出たぞ。
触ってみよう。
『ヘルプ』経験値について。
レベル経験値に振ってレベルアップすると、基本ステータスがアップします。
スキル経験値に振ってレベルアップすると、スキルを取得できます。
『ヘルプ』スキル取得について。
スキルレベルが上がるたびにスキルポイントが得られます。
それを消費するとスキルが取得できます。
「ということは、とりあえず、スキル経験値に10000振ってみようか」
『スキルレベルが10に上がりました』
『スキルポイントを20獲得しました』
待てっ!
いきなりレベル10?!
そうか。チート能力が無かった変わりだから、かなり経験値あるんだな。
スキルポイントはレベルごとに2なのかな?
よし、選べるスキルのリストは…これか!
ピッ!
な、なんだこりゃあ!
-女神ジュライヌ視点-
危なかったわ。
修学旅行まで時間があるから、なんとなくケンタローの様子を見て正解だったわ。
どうしてあんなに経験値持ってるのよ。
体当たりで少し魔族とか倒しただけなのに。
すぐにケンタローのスキルリストを『愚者』のものと差替えておいてよかったわ。
『愚者』って役立たずのスキルしか持ってない職業なのよね。
本当はしちゃいけないんだけど、バレなきゃいいのよ!
動画再生順位が1ケタに行けば、私こそが上位神になるのよ!
-勇者メル視点-
修学旅行が始まった。
何を見ても聞いても、頭に入らない。
だって、今夜は、もしかするとケンタロー王子様に会える日。
早くお風呂の時間にならないかしら。
「…そしてケンタロー王子様に私の全てを見てもらうのよ」
「さっきから何勝手に人の心の描写してるんですかっ!(ぱかんっ!)」
私はリカの頭を張り飛ばす。
「だって、楽しい修学旅行なのに、ぼうっとしてるじゃないの」
うっ、図星。
「王子様の為に勝負下着は準備してきた?あっ、全裸だからいらないわね。おっと」
私のパンチをあっさりかわすリカ。
「ふふふ。いつものようなキレが無いわよ。そんなことじゃあ、ケンタロー王子様が来る前に、同級生の男どもに見られちゃうわよ」
「見た奴は殺す」
私がそう言うと、リカはビクッと身を震わせた。
ケンタロー王子様にだってまだ見せる気無いのに、他の男に見せるとかありえないわ!
-主人公ケンタロー視点-
スキルの一覧を見て、俺は絶望した。
ろくなスキルが無い。
例えばこれだ。
●取得にスキルポイント1と必要とするスキル●
『主の機嫌』
自分より偉い相手のご機嫌取りが出来る。
他者から疎まれることがある。
『蛮勇印力』
呪印を付けた部分だけ筋力がアップする。
ただし、力の加減が出来ない。
『不倒王子』
どんな丸い物でも転がらないようになる。
転がしたくても転がせない。
後半の説明でで台無しだよ!
それに最後のこれなんか、「王子」じゃなくて「玉子」じゃないの?!
お?これは?!
俺はようやく辺りっぽいスキルを見つけた。
『技能説明』
技能について教えてくれる機能。
AIで学習もする。
おおっ!これこれ!
いわゆる『ヘルプ機能』だよね!
最初にこれを取らないと、異世界チートが始まらないと言うくらいの!
これを取得してから、他のスキルを検討しよう。
えっと、こうやって、こうかな?
-『技能説明』を取得しました-
よっしゃ!
じゃあさっそく!
「『主の機嫌』について教えてくれ」
『自分より偉い相手とは、強い相手を含みます。そのため、敵から逃げるときなどに使用可能です』
おおっ!わかりやすい!
『複数の相手が要る時、一番強い相手を指定しないと、その他の相手からの敵意が増すことが有ります』
なるほど。じゃあ、『他者から疎まれることがある』って言うのは、それほどひどい欠点じゃないんだ。
『このスキルを使うとフライング土下座を自動的に行い』
ん?
『相手に最高の土下座を見せることで、ご機嫌を取るようになっており』
おいおいおい
『足元とかがどんな状況でもやるので、海岸でやると溺死することが有りますとか、ふざけるんじゃないよ』
口調おかしいよ!
『だいたい、土下座なんて、モンスターに通じるんか?!このスキル本当に使えるんやろな?!』
なんとなく関西弁ぽく愚痴言ってる!
『あんたもいちいちつっこむな!』
え?心の声に返事された?
『当たり前や。今聞こえているのだって、頭の中やないか』
そうですけど…。
『それにな、あんた英語苦手やったやろ』
な、なに?急に?
『スキルコンプレインってスキルエクスプレインとちゃうで』
は?
『エクスプレインは説明やけど、コンプレインは不平とか不満や』
はあっ?!
『この『愚者のスキルセット』はおかしなスキルとか誤字とかが多いしな。ま、あきらめてな』
待て待て待て。
『愚者のスキルセット』って何?
『勇者とか、大魔導師とか、聖女とか、職業ごとにあるスキルセットからスキルを選ぶんや。あんたの場合は、『愚者』やな。
なんでーっ!
お読みいただきありがとうございました。
次回は12月7日土曜日18時更新です。