第3話 5周目は炎となり、復讐の鍵を手にする
いつまでも女神の思い通りにはなりません。
まずは反撃の第一歩です。
令和元年12月5日誤字修正しました。
○5周目○
―主人公ケンタロー視点―
あれはヤバかった。
死んだかと思った。
いや、多分死んでいる。
女神にまた蘇生させられたのだろう。
そしてまたこの何もない薄暗い空間を飛んでいる。
この空間での時間の進み方はおそらく『かなり遅い』。
いつも助けている子はどんどん成長しているが、俺にとってはまだ1日も経っている気がしない。
時間かもしくは感覚が狂っているのだろう。
それでも、やれることをやらないといけない。
まず、
考えている最中に、いきなり目の前に黒い穴が開いた。
「ええ?!」
さすがに早すぎない?!
-女神ジュライヌ視点-
今日もメルちゃんの観察。
この前の事件があってからまだ二日。
今は魔法の実技の授業をしているみたいね。
「いいですか?このように呪文を唱えるのです。『ファイアーボール』!」
先生が呪文と共に手を突き出すと、火の玉が現れて、的に向かって飛んでいく。
「ファイアーボールは中級魔法ですが、潜在能力の高い人などは強くなりすぎることがあるから、全力でやらないようにしてくださいね」
「「「はーい」」」
ふーん、面白いわね。
うっかり強くなりすぎるなんて。
強くなりすぎる?
そうだわ!これは面白いことが出来るわ!
私はさっそくケンタローとここを繋ぐ黒い穴を生み出した。
「おお、ケン…」
「めが…」
一瞬だった。
一瞬でケンタローは黒い穴から出てきて、その先の黒い穴へ消えて行った。
そうだわ、大爆発した勢いのままだったものね。
まあいいわ。
今回はタイミングが命。
3、2、1、
「今よ!」
-勇者メル視点-
魔法の授業は苦手だ。
というのも、手加減が苦手なのです。
武器はどうにか手加減できますが、魔法は力を絞るのが難しいのです。
ファイアーボールの威力を出したいなら、ファイアボルトでいいのですが、違う呪文名では魔法がうまく使えませんし、無詠唱では怪しまれます。
全力で威力を絞ってみましょう。
これも修行と思えばいいのですから。
「次!メル!」
「はい!」
私の番です。
手の平に魔力を集中しないようにして、呪文を唱えます。
「『ファイアーボール』!」
私の手の平からはいつもより小さめとはいえ、直径40cmほどの大きな火の玉が出ました。
そして、それは人の形をしていたのです。
どうして?!
―主人公ケンタロー視点―
スピードが速すぎて、女神に声をかける時間は無かった。
そして再び。目の前に黒い穴。
この向こうにいつもの彼女がいるのだろう。
今回は何で困っているのだろうか?
そう思って俺は黒い穴をくぐった。
グオオオオオオッ!
それは燃え盛る炎の中だった。
熱い!
熱い!
死んでしまう!
俺は燃えたまま飛び続け、その先に会った的を吹き飛ばすと、再び現れた黒い穴に入っていった。
いったいなんだったんだ?
-勇者メル視点-
「い、今のなに?」
人間のような火が出ました。
そしてそれは的を壊すと消えてしまって。
「まさか『火魔神』を顕現させるとは」
先生は口をパクパクとして放心状態になっています。
イフリート?あれが?
普通の人のように見えたけど。
なんとなくケンタロー王子様に似ていたけど、私は別にピンチじゃなかったから気のせいよね?
もしかして、募る思いが私の魔法の形を変えたとか?
「いやん恥ずかしい」
身もだえする私。
「メル、大丈夫か?どこかぶつけたか?」
そんな私を親友のリカが心配してくれます。
そうだ、リカに相談してみよう。
私とケンタロー王子様のことを。
-女神ジュライヌ視点-
動画はまたしても大反響を呼びましたわ。
『今回は助けるんじゃないの?』
『ジャストなタイミングで転移させるとか、もう神業、いや、最高神業レベル』
『火の玉ボーイだ』
『これ、女の子気づいてないよね?』
『相変わらず気の毒』
『気の毒なのが面白いというパターン』
『次は彼女のプライベートに突進させろ』
『お風呂とか』
『いいなそれ』
『動画消されるぞ』
『光アプリ使え』
『BDで消えるやつな』
『期待』
『期待』
ああっ!
ついにリクエストが!
しかし風呂場とかお下品ですわ。
そんな男神の戯言は却下ですの。
でも、
もしかして、それならもっと再生数上がるかしら?
メルちゃんを助け続けていた人が、いきなり風呂場に突入。
面白くなる予感しかしないわ。
でも、それだけじゃあ私の手柄じゃないのよね。
言われたことやるだけじゃあだめよ。
最高のシチュエーションを探して、最高の動画にするわよ!
―主人公ケンタロー視点―
今回は最悪だった。
いつもみたいに彼女を助けるためならともかく、ただ辛いだけとか。
せめて耐火のチートでももらっていれば。
ん?
チートもらってなくないか?
俺はいつものように飛びながらステータスを確認する。
名前:ケンタロー
種族:人間
レベル:1(経験値ストック有)
スキル:『魔族必殺』『下降回避』『打撃治癒』『芸事張扇』
状態:軽度の火傷(治癒中)
やっぱり増えてない!
それと、レベルの所に『経験値ストック有』ってある。
もしかして、神様のところに転移してからチート能力をもらわないと、代わりに経験値がもらえる?
ここからは逆襲だ。
そして俺は思った。
「でも、どう使うんだこの経験値?」
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次回は11月30日土曜日18時更新です。