0-1 終わり
カア カア カア カア
驚くほど静かな部屋に響くカラスの声。
窓の外は16時とは思えないほど暗い。
その部屋のなかに、俺やる気ないです感プンプンでソファーに突っ伏す少年が一人。
高校生だろうか、身長は180㎝程。
「あーうあーーー」
特に意図を感じない内容の言葉を発しながら寝返りを打つ。
前髪で隠れた右目があらわになる。
顔もなかなかイケメンだ。学校ではさぞかしモテていることだろう。
「まだ水曜かー」
そこは「明日も学校楽しみだぜっ!キラッ」とか、「早く明日になんないかなー」とかを言って欲しいでもないが、彼はそういう性格ではないことが伺える。
不意に少年がフラッと立ち上がる。
「塾だりー」
どうやら塾に行くらしい。
時計は16時半を指している。
上り坂に差し掛かりギアを下げる。
立ち漕ぎをしているせいか、背負った四角いリュックが左右に揺れている。
坂を上りきり、少し進んだあと、いつも通り交差点を左折する。
そのまま道なりに進むと塾に着く。
はずだったのだが、事故があったのか交差点を左折しようとハンドルを向けた先の歩道は大勢の人で溢れている。
「違う道で行くか」
左にきりかけたハンドルをまっすぐに戻す。
このまま直進して迂回していこうとギアをあげた。
その瞬間
キキィィィィーーー!!!!!
耳障りなブレーキ音が辺りに響く。
が、遅かったようだ。
ガシャン!!!!
少年の乗った自転車が大きく右に飛ばされ、遅れて悲鳴がきこえてくる。
自動車はもう止まっている。
青ざめた顔の運転手の女性と、たまたま近くにいた若い警察の男の覗き込む顔が、少年の意識が無くなる前の最後の記憶となった。






