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第87歩目 はじめての案内!女神アルテミス② ※修正済み


前回までのあらすじ


ドールの忠誠心は、自ら信仰する神に逆らうぐらいに高かった!


□□□□ ~不安と不満~ □□□□


ドールが気絶してしまったことで、ひょんなことからアルテミス様と二人っきりの観光が始まった。


不安だ。不安しかない。

この二人っきりって状況もそうだし、アテナがドールの面倒を見るってことも・・・。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。フェンリルは優秀な子だからね。看病ぐらいはできるよ」

「はぁ・・・」


いや、それもそうなんですが・・・。こっちはこっちで心配なんです。


そう考えた時に、やってしまった!、と思った。

アルテミス様は、いや、神様は読心ができることをすっかり忘れていた。

先程ドールが不遜を働いてあんな目に合ったばかりだというのに、この不始末。


恐る恐るアルテミス様の様子を窺うと・・・


「なんだい?あたしの顔になにかついているかい?」

「.....いえ、なんでもないです」


待ちきれないとばかりに目を輝かせ、ウキウキしている子供のような姿がそこにはあった。

どうやら読まれてはいないようだ。下界に降りると使えなくなるのだろうか。それとも・・・。


「ほら!さっさと行くよ!」

「行くって、どこにですか?観光案内をすればいいんですか?」

「観光?そんなことしないよ。行くのは酒場!遊びと言ったら酒に決まってるだろ!」


アルテミス様の遊びとは酒を飲むことらしい。

何も無さそうなつまらない空間である神界ならさもありなん。アテナもお風呂だったし。


しかし、そうなると一つの疑問が沸いてくる。


「確か神界には、完成されたお酒があるんですよね?そんなのがあるのに、下界のお酒を飲みたいんですか?」

「アユムっちはわかっていないね~。下界の酒は未完成だからこそいいんじゃないかい」


「どういうことですか?」

「確かに神酒は旨いよ。それこそ人間界の酒では敵わないほどにね。

 でも既に完成されてしまっている。つまりは味が定まっているのさ。

 いくら旨いものでも、毎日呑んでいたら飽きるだろ?そういうことさ」


なるほど。なんとも贅沢な悩みだ。

いや、神だからこそ、その贅沢さが反って悩みになるのかもしれない。


「そうなると、アテナがおいしいものを求める理由も・・・」

「同じ理由だろうね。案外苦痛なもんだよ?変わることのない食生活ってのもね」


「神様ってのも大変なんですね」

「まぁ、そうは言ってもおいしいんだけどね。それでも何か変化や刺激を求めたくなる。

 わかるだろ?アユムっちもそうだから、取っ替え引っ替えしているんだろうしさ」


「取っ替え引っ替え?なんのことですか?」

「女だよ、女。人間の女に飽きたから、ドワーフにちょっかいを出し、それにも飽きたから狐に触手を伸ばしたんだろ?」


「ちょっ!?なに言っているんですか!そんな訳ないですよ!」

「どうかね~?建前は否定しても、本心ではそう思っているんじゃないのかい?」

「絶対ないです!.....あ、あの。まさか、この様子もニケさんは見ていたりしますかね?」


俺は恐る恐るアルテミス様に尋ねた。


神界に居た時、アルテミス様からニケさんと一緒に俺の一部始終を見ていたと教わった。

つまり今のこのやり取りも、ニケさんに見られている可能性が高い。

変な誤解が生じる前に、取っ替え引っ替えの件は完全否定しておくべきだろう。


「当然見ているだろうね。今頃は嫉妬に狂っているんじゃないのかな?あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「ニ~~~~~ケさ~~~~~ん!俺は~~~~~貴女一筋ですからね~~~~~!」


大声で、空に向かって可能な限り叫んだ。

周りの人々は驚き、まるで俺のことを狂人でも見るかのように変な目で見てきている。


「そんなことをしなくても、ちゃんとニケちゃんには伝わっているよ。

 本当アユムっちは面白い反応を見せてくれるね。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「・・・」


本当に、俺をおもちゃにしてからかうのはやめてください!



□□□□ ~自覚がないpart.1~ □□□□


相変わらず、アルテミス様にいいおもちゃにされながらも酒場に向かう。その道中・・・


「どうしました?」

「なんか視線を感じるね」


アルテミス様は先程からしきりに周りをキョロキョロしている。

俺もそれに倣って周りを見渡すと、確かに視線を感じる。

と言うか、視線どころか、思いっきり道行く人々に見られている。特に女性からの視線を多く集めている。


「ジロジロ見られて、なんだか気分悪いね」

「仕方がないですよ。アテナもそうですし」

「やっぱりそうかい。この服は目立ち過ぎるもんね」

「.....え?」


唖然とした。

こうも自覚がないと最早呆れてしまう。


確かにアルテミス様の言う通り、アテナやアルテミス様の着ているワンピースは目立つ。

この世界では綺麗な白色がないのだ。バニラ色と言うのだろうか、白が若干くすんだ色になっている。


対して、アテナやアルテミス様が着ているワンピースは純白も純白。

太陽の陽射しに照らされるとまるで宝石かのように輝き、月の灯りに照らされるとまるで命の輝きかのように美しく映える。


そう、確かにワンピースは目立つ。

目立つのだが、それよりもなによりも・・・


「なに言っているんですか。視線を集めているのはワンピースではなくて、アルテミス様の美しさですよ」

「え?なにを言っているんだい?」


「自覚ないんですか?アルテミス様は飛び抜けてお美しいですよ?」

「あ、あたしが美しい?.....いやいや。そんな訳ないだろ?」


「.....え!?本当に自覚ないんですか!?また俺をからかっているとかではなくて?」

「こ、こんなガサツで乱暴な女だよ?美しい訳ないだろ?」


そっちの自覚はあるみたいだ。

と言うか、ガサツとか乱暴とか美しさに関係あるのだろうか。

内面から滲み出る美しさということを言いたいのなら、傲慢とも言える程の自信もまた美しさに直結するような気がする。


「ハッキリ断言します。アルテミス様は美人です。しかもかっこいい。どこぞの貴公子様みたいです」

「そ、そんなにあたしは美しくてかっこいいかい?」

「はい。少なくとも人間基準で言えば、傾国の美女かと」

「そ、そこまでかい!?.....な、なんだか照れるね///」


もじもじして照れているアルテミス様は若干気持ち悪いが、それでもかわいい。

と言うか、今まで自覚していなかったことに驚きを禁じ得ない。


「神界に鏡とかってないんですか?普通わかりますよね?」

「鏡はあるけど.....アフロディーテやアテナっちがいるからね」


なるほど。全てに合点がいった。

アフロディーテ様にはまだ会ったことはないけど、愛と美を司る女神様だ。相当美しいのは間違いないだろう。

そしてそれには及ばないとしても、アテナも絶世の美少女。

こんな美しさの権化とも言える存在が身近にいたら、どうしても自分を過小評価してしまうのは仕方がない。


「自信を持ってくださいと言うのは変な話ですが、美しいのは間違いないです」

「な、なんだい!?あたしを口説いているのかい?」

「口説く!?そういう訳ではないんですが.....美人すぎてドキドキしているってことをですね・・・」

「ドキドキね~・・・」

「どうしました?」


アルテミス様が神妙な顔をしている。とても似合わない。

こんなに神妙さが似合わない人、もとい神様はそうそういないだろう。


「もう一度聞くけど、.....あたしが美しいってのは嘘じゃないんだね?」

「嘘?そんな嘘を付いて、俺になんのメリットがあるんです?俺は事実をそのまま言っているだけです」


「そうかい。.....そ、その.....ありがとう」

「!?ど、どうしたんですか!?

 そんなのアルテミス様らしくないですよ!アルテミス様は傲慢なぐらいがちょうどいいんです!」


「傲慢で悪かったね!」

「ちょっ!?また!?」


なにがなんだかわからないまま混乱している俺を、アルテミス様はいつもの悪魔の如く不敵な笑顔をしつつ、そのか細い腕からは想像もできない程の力で・・・


───むにゅ!!


豊満な胸へと顔を押し込めてきた。

中毒性のあるきつくてすっぱい匂いと張りと弾力のある幸せな感触が俺を堕落させる。



この香りとおっぱい.....最高だぜ!アルテミス様ありがとうございます!



□□□□ ~自覚がないpart.2~ □□□□


「本当にアユムっちは気持ち悪いね」

「す、すいません」


調子に乗って、アルテミス様の匂いを嗅ぎまくったせいでぶん殴られた。痛い。

匂いを嗅ぐことぐらい減るもんじゃないし、容認してほしい。


「それで?ここでいいのかい?」

「はい。ドールのお気に入りの所なんです」


俺とアルテミス様は服屋の前にいる。

酒場に行く前に立ち寄ることにした。


アルテミス様の美しさが原因で視線を集めている訳なのだが、ワンピースが目立つのも事実だ。

目立つものを少しでも減らして注目から避けたいと思う俺の思惑と、興味の対象とされている視線にイライラしているアルテミス様の気分を少しでも落ち着けてもらう為の俺の苦心だ。


お鉢は間違いなく俺に回ってくる。

少しでもアルテミス様のご機嫌は取っておくべきだろう。


あと問題があるとしたら、女の子の買い物は時間がかかることだ。

アルテミス様も例に漏れないのだろうなと思っていたら・・・


「これと、これね」

「はやっ!?」


入店してわずか数十秒。

あっという間に選び終わってしまった。


アルテミス様が選んだのは、レディースのデニムのショートパンツとタンクトップだ。

多分動き易さを重視して選んだのだろう。


それはいい。それはいいのだが・・・


「んじゃ、早速着替えようかね。アユムっちも手伝っておくれ」

「はあああああ!?ちょっ!?え!?さすがにマズいのでは!?」


「なにがマズいのさ。それに、あたしはこれ(ワンピース)しか着たことがないんだから、手伝いは必要だろ?」

「だ、だったら店員さんに手伝ってもらえば・・・」


「いちいちそんなのを呼ぶのはめんどくさいだろ。アユムっちが手伝えばいいだけだよ」

「いや、でも・・・」

「グチグチ言ってないで、ほら行くよ。男らしくエスコートしな!」


アルテミス様はそう言うと、どこからそんな力が出ているの!?、と思わずツッコミたくなるほどの怪力を発揮し、問答無用で俺を引き摺るように試着室に連行していった。


・・・。


素晴らしい。

実に素晴らしい。


エロスの極致とも言える素晴らしい肢体が、今目の前に存在している。

試着室に入るやいなや、アルテミス様は素早い身のこなしで、なぜかすっぽんぽんになってしまった。


小麦色に焼けた褐色肌に、アテナ未満ナイトさん以上の豊満な胸。

狩猟の女神を冠するにふさわしい、くびれたウエストと引き締まったボディーライン。

そして一番特徴的なのが......




(諸事情により文章をカットしました)





試着室という決して広くはない場所での、ある意味神秘的な裸体と拡がるアルテミス様の香ばしい匂い。

俺はもう既に興奮しっぱなしだった。ニケさんに見られているという懸念すら吹っ飛ぶぐらいに・・・





(諸事情により文章をカットしました)





どうやらアルテミス様が選んだ服のサイズは少し小さかったようだ。

ブラやパンツのラインがくっきりと浮き出ている。

そしてショートパンツに絶妙に食い込む太ももの存在。


これで興奮しない男はいるだろうか、いや、いない!


この時の俺は既に頭のネジが何本も外れてしまっていた。ただただ欲望に身を任せていた。

こういう時、今まではアテナが救い出してくれていたのだが、今はいない。


俺が今まさにアルテミス様を押し倒そうと迫っていたら・・・


「気持ち悪い!気持ち悪い!!気持ち悪い!!!」

「はぁはぁ.....はぁはぁ.....はぁはぁ.....はぁはぁ.....」

「気持ち悪いって言ってんだろ!この変態!!近付いてくるんじゃないよ!!!」


───ドゴッ!


「☆▽◎◇♂!?」


俺の分身とも言える大事な部分に、アルテミス様の見事なストレート!

潰れたと思ってしまうほどの激痛に悶絶した。


「本当にアユムっちは気持ち悪いね!ここまで変態だとは思わなかったよ!」


アルテミス様は憤慨されているようだが、俺はそんなことに構っていられるほど余裕はなかった。



アルテミス様の香ばしい匂いが好きなだけで、決して変態ではない!



俺は悶絶しつつ、心の中でそう声高に叫んでいた。



□□□□ ~肴~ □□□□


結局、ちょうどいいサイズに選び直してもらって店を出た。

服はアルテミス様自身が着たので、俺の分身が再び潰されることはなかった。


と言うよりも、実はアルテミス様は自分で服を着れたらしい。

考えてみれば当たり前だ。アテナじゃないんだから。


それでも俺を試着室に連れ込んだのは、そこでからかうつもりだったらしい。

それが俺の意外な行動でからかうどころではなくなったのだとか・・・。


ざまぁ!と言ってやりたいところだが、俺も大事な所を失いかけたのでなんとも言えない。とほほ・・・


「変な歩き方してんじゃないよ。男らしくシャキッとしな」

「・・・」


俺が若干内股歩きになっているのが気になるらしい。

理由はちゃんとある。


「.....まだ痛いんです。思いっきりやられましたので・・・」

「気持ち悪いことするからだろ。自業自得だよ」

「.....す、すいません。じゃあ、ご案内しますね」


俺のせいだろうか?と少し理不尽に感じつつ、酒場に案内しようとしたら・・・


「あ~、ちょっと待ちな。肴を調達しに行こう」

「肴?つまみのことですよね?それなら酒場にありますよ」

「わかってないね~。自分で調達するからいいんじゃないかい」


俺にはよくわからないことだが、そういうことらしい。

こうして、肴を調達しにアルテミス様とともに王都の外に出ることになった。


・・・。


王都を出て、北にある森の中。

アルテミス様に従って、道ならぬ道を草木を分けてどんどん奥地へと進んでいく。


「肴ってなんですか?」

「木の実や薬草なんかだけど、メインは肉だね」

「肉.....どんな肉ですか?」

「アユムっちが普段食べているものと変わらないよ。牛や豚、兎に鹿、鳥に猪、それにカエルとかだね」


待て、待て、待て!

途中おかしいのがいっぱい出てきたから!兎や鹿!?それに猪にカエル!?

そんな肉食べていないから!.....いや、俺が敢えて知ろうとしなかっただけで、食べているかもしれないけどさ?


俺が困惑している間にも、


───ぴぃっ!?


「いっちょ上がり♪」


アルテミス様はせっせと狩りを行っている。


その弓の腕前はさすがで、狙われたが最後、様々な動物達は命をどんどん散らしていっている。

どこにいたのかわからないような牛や豚、兎に鹿、猪にカエルなど。


「ほら、どんどん回収していきな。荷物持ちは男の役割だろ」

「.....すいません。それにしてもさすがですね」

「なにがだい?」

「弓ですよ、弓。百発百中じゃないですか。しかも一撃必殺。カッコイイです」

「あたしは狩猟の女神であり、森の神でもあるからね。

 どこに逃げ隠れしようと、あたしからは逃げられないよ」


なんというかっこいいセリフ。似合いすぎる。

王都の婦女子連中が、キラキラした目でアルテミス様を見ていたのも頷ける。


俺がやったら.....ダメだ。考えないようにしよう。


「これで大体揃いましたね。戻りましょうか」

「なに言ってるんだい。まだ空の獲物がまだだろ?」

「.....え?さすがに飛んでいる鳥までは・・・」


俺の言葉が終わるのを待たずに、アルテミス様は弓を構え、空に向かって矢を放った。

そして驚きの光景とともに、しばらくすると・・・


───ストッ。


そんな軽やかな音とともに矢が地面に突き刺さった。

その矢には、しっかりと獲物らしき鳥が貫かれている。


「なにか言ったかい?」

「.....お、お見事」


空いた口が塞がらないとはこのことだ。

弓の腕前がすごいとかのレベルではない。


そもそもアルテミス様は狙いをつけて射った様子が微塵も感じられなかった。

ただ空に向かって射っただけで、そこに鳥が自ら吸い寄せられるように突き刺さった、といったほうが正しい。仮に名付けるなら、アルテミスゾーン!


弓の名人?神様?

そんな程度の低い言葉では言い表せないほどの腕前だ。


「.....か、神の力でも使っているんですか?明らかにおかしな光景でしたが・・・」

「まぁね。.....と言っても、大した力でもないけどね」

「.....か、確認したいんですが、それは人間にも使えるんですか?」

「当然だろ。神にできないことは無し。第一、あたしは戦闘系の神だからね」


おおぅ・・・。これは絶対に歯向かってはいけないタイプの神様だ。

まるで歯が立たない。背いた瞬間、その命を動物達と同じように刈り取られる未来しか見えない。


「.....アルテミス様はそんなにすごいのに、どうしてアテナはあんなにへっぽこなんですか?」

「アテナっちはまだ若いからね。

 それにアテナっちは頭で戦うタイプだから、力はからっきしなんだよ。

 だからこそ、ニケちゃんのようなバリバリの戦闘系女神が付き神に選ばれたんだしね」


───ストッ。

───ストッ。

───ストッ。


アルテミス様は、俺と話している間にもテキトー、まさにテキトーという言葉がふさわしい感じで矢を放ち、獲物を狩っていく。


.....いや、本当にすごい腕前だな。もはや空すらも見ていないとか・・・。


改めてアルテミス様の腕前に感心しつつ獲物を回収し、そろそろ切り上げるかどうかを尋ねた。

数にしては相当数狩っている。普通に考えれば、こんなには食べられないだろう。


「.....う~ん。そうだね~」

「まだなにかあるんですか?」

「確かに数は取れたけど、こうなんと言うか、メインを張るものがないんだよね~」


量より質、と言いたいのだろう。

気持ちはわかる.....しかし同時に、アルテミス様を満足させられるようなものが下界にあるとは思えない。


「ないものは仕方ありませんよ。帰りましょう」

「.....仕方がないね~」


心底残念、といった表情をされてしまうとなんとかしてあげたくなるが、こればかりはどうにもならない。

アルテミス様とともに帰路に着く。


・・・。


そんな帰路の途中、突如アルテミス様が猛禽類の如く視線を空に投げかけた。


「どうしました!?」

「.....少し黙ってな」


そして、その場にいる全てのものが身震いしてしまいそうになるほどの獰猛な笑み。

口裂け女もびっくりな程の口が裂けるような笑み。まるで殺人鬼のような笑み。


いろんな表現があるだろうが、俺が感じたのは一言に尽きる。


俺、死んだかも・・・。


これだけだ。

アルテミス様の意図はわからないが、それでもそう感じぜずにはいられない程の恐怖を感じた。


そして・・・


「な~んだ。いい獲物がいるじゃないかい!本日のメインはこいつにしよう!」


アルテミス様はそう不敵に微笑むと、珍しく狙いを定めるような体制に入った。

余程逃がしたくない獲物なのだろう。そして力をいっぱい溜めて、矢を解き放った。


矢が飛来していく時の音は尋常な音ではなかったと、後にA氏が語っていた。


A氏「とんでもない音でしたよ。まさに人が作りし、暴風音。あっ、作ったのは神様なんですけどねw」


・・・。


とにもかくにも、すさまじい轟音とともに矢は空の彼方へと飛んで行った。

矢を放ったアルテミス様ですら、肩で息をしているので相当な威力なのだろう。怖すぎる!


・・・。


「.....?矢が戻ってきませんね?」

「あ~、でもちゃんと当たってはいるようだよ。もう少し待ちな」


空を見上げても全くわからない。

素晴らしい快晴だということしかわからない。


それでも、アルテミス様にはちゃんと見えているらしい。

お言葉通り少し待つことにする。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


そして数分後・・・


「やっと来たね。回収よろしく♪」

「はぁ・・・」


空を見上げても何も見えな.....いや、なにかが落ちてきているのが確認できた。

それは少しずつ、少しずつ、でも確実にその容貌を現してきている。


そしてついに・・・


───ズドオオオオオン!


それは轟音と地響きとともに、ついにその姿を完全に現した。

そして俺はそれを見た瞬間、某ドラマの名ゼリフを思わず叫んでしまった。



なんじゃこりゃぁあ!!!



次回、外伝①!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日のひとこま


~口の軽い神様~


「そう言えば、アテナは若いって言っていましたよね?実際いくつなんですか?」

「そういうのは、例え相手が神様であっても聞いちゃいけないよ」

「そうでしたね。すいません。女性に歳を尋ねるのはマナー違反でした」

「そうそう。気をつけなね。まぁ、少なくとも万は越えてるけどね」


「.....え?」

「びっくりしたかい?あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「確かにびっくりはしましたけど.....言っちゃっていいんですか?」

「構いやしないだろ。神なんだから、万の一つや二つ、当たり前のように歳食ってるさ」


一つや二つの使い方、間違っていないか?まぁいいか。


「でも、万で若いって違和感あります」

「人間からしたらそうだろうね~。でもあたしとアテナっちは2万歳ぐらい離れているんだよ?」

「2万!?」

「以前アテナっちが言っていただろ?長女のデメテルがあまり構ってくれなかったって。

 そりゃそうさ。デメテルとアテナっちなんて、もはや姉妹といっていいのかどうかわからないぐらいの年の差だからね」


「す、すごいですね。規模が大きすぎて想像すらできません」

「単位を変えればいいんだよ。あたしとアテナっちは年の差2歳、デメテルとアテナっちは年の差20歳ってね」

「え、えっと.....20万年差ってことですよね?言っちゃっていいんですか?」

「いいんだよ、いいんだよ。隠しても意味ないだろ?そもそも隠せるようなことじゃないしね」


そうかもしれないけど.....少し口が軽すぎないか?


「アテナっちはね、6000年ぐらい前までは普通におねしょをしていたんだよ。

 翌朝、あたしにその罪をなすりつけようとしている姿なんて、それはまるで天使のようだったね」

「は、はぁ.....一緒に寝ていたんですか?」


「そうそう。ニケちゃんに怒られた時なんて、毎回のようにね。

 半べそ姿がよっぽど知られたくなかったのか、内緒にしてねー?なんて言われた時は萌え死しそうだったよ

 まぁ、神界じゃ死ねないんだけど。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「え、えっと?.....内緒にするって約束したんですよね?」


「隠せることじゃないからいいんだよ。それとね~・・・」


その後もアテナの秘密がどんどん暴露されていった。


俺は思う。

アルテミス様に秘密を話したが最後、全てが白日の下に晒されてしまうのだと・・・


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